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店舗やオフィスでエアコンを稼働させている際、なんとなく空気が入れ替わっているように感じている方は少なくありません。
しかし現場で「エアコンを回しているのになぜか息苦しい」「室内の匂いが消えない」といった問題に直面し、初めて換気が不十分であることに気づくケースが多々あります。実は、一般的な業務用エアコンのほとんどは、室内の空気を吸い込んで温度を変えて戻すだけの内部循環を行っているに過ぎません。
換気不足は、二酸化炭素濃度の過度な上昇による集中力の低下や、ウイルス・カビの滞留といった実務上の不利益、さらにはビル管理法などの法令違反を招くリスクを孕んでいます。この記事では業務用エアコンの構造から換気設備との機能の違い、そして空調効率を落とさずに基準をクリアするための具体的な設備導入までをプロの視点で網羅的に解説します。
業務用エアコンは室内の空気を循環させて温度を調整する「空調」に特化しており、外気を取り入れる「換気」の機能は備わっていません。健康被害や法的リスクを防ぐには、換気設備(換気扇や全熱交換器)を適切に併用する必要があります。全熱交換器などを導入し、空調効率を損なわずに新鮮な空気を取り入れることが、電気代削減と快適な空間維持を両立する鍵となります。
目次
業務用エアコンが換気を行えない理由はその物理的な構造にあります。
エアコンの目的は「熱の移動」であって「空気の輸送」ではないからです。室内機と室外機の間で行われているのは冷媒ガスによる熱のやり取りだけであり、空気そのものは壁を越えて行き来していません。
室内機と室外機は2本の銅管(冷媒管)で繋がっていますが、その中を通っているのは空気ではなく冷媒(ガスや液体)です。この冷媒が熱を運ぶ役割を担っています。たとえば冷房時には室内機が部屋の空気から熱を奪い、その熱を冷媒に乗せて室外機まで運び外へと放出します。
このとき、室内と室外の空気は物理的に遮断されており、混ざり合うことはありません。したがって、エアコンをいくら運転しても、外の新鮮な空気を入れることは構造上不可能です。
エアコン室内機のファンは部屋の中にある空気を吸い込み、内部の熱交換器を通過させて温度を変え、再び部屋に戻します。これが内部循環です。この過程で吸込口のフィルターは埃を除去しますが、二酸化炭素(CO2)やウイルス、化学物質などの汚染物質を屋外に排出する能力はありません。
つまり換気を別途行わなければ、汚れた空気は常に室内を回り続けることになり、在室者の健康や集中力に悪影響を及ぼすリスクが高まります。
室外機のファンから吹き出される温かい風を見て、室内の空気が排出されていると誤解されることがありますがその正体は100%「屋外の空気」です。室外機は、屋外の空気をファンで吸い込み、熱交換器に当てることで、室内から運んできた熱を外へ捨てたり、逆に外から熱を拾ったりしています。
室内と繋がっているのはあくまで冷媒管だけであり、空気がダクトのように繋がっているわけではないことを念頭に置く必要があります。

実務においては空調設備(エアコン)と換気設備(換気扇等)を、異なる目的を持った独立したシステムとして切り分けて考える必要があります。
空調は「体感の質(温度・湿度)」を作り、換気は「空気の安全性(質)」を担保するものです。この両者が適切に噛み合って初めて、理想的な室内環境が構築されます。
空調設備の主な機能は温度、湿度、気流の調整です。これに対し、換気設備の目的は新鮮な酸素の供給と室内の汚染物質(二酸化炭素、ウイルス、臭気)の排出です。以下の表で、それぞれの役割の違いを整理します。
| 項目 | 空調設備(エアコン) | 換気設備(換気扇等) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 温度・湿度の調整 | 空気の入れ替え、汚染物質排出 |
| 空気の流れ | 内部循環(室内のみ) | 室内外の空気の入れ替え |
| 改善される項目 | 暑さ・寒さ、多湿・乾燥 | CO2濃度、ウイルス、臭気 |
法令遵守の観点から、店舗やオフィスでは一定の換気量を確保しなければなりません。
建築基準法では居室のCO2濃度を1,000ppm以下に保つために、在室者一人あたり毎時30立方メートル(30㎥/h)の換気量を基準としています。面積だけでなく、想定される最大収容人数に基づいて設計しなければ、保健所の検査や消防検査などで是正を求められる可能性があるため、注意が必要です。
設備が不十分な場合、窓を開けて換気する方法が取られますが、これは空調効率を著しく低下させます。
冬場であれば氷点下の外気が直接入り込むため、エアコンが設定温度を維持しようとフルパワーで稼働し続けるからです。窓を常時開放して換気を行う場合、密閉時と比較して空調の消費電力が大幅に跳ね上がるため、ランニングコストの面で極めて非効率的です。
近年、一部のメーカーから給気換気機能を搭載した業務用エアコンが発売されています。これ一台で全て解決できると期待されますが、「賄える換気量」に限界がある点に注意が必要です。換気機能付きエアコンはあくまで補助的なものか、小規模な空間向けであると認識しておくべきです。
家庭用の換気機能付きエアコンは有名ですが、業務用空間では必要とされる換気量が桁違いに多くなります。家庭用レベルの給気量では、不特定多数が集まる店舗やオフィスの法的基準(一人30㎥/h)をカバーすることは到底不可能です。
カタログスペックの換気量を想定人数で割ってみることで、その実力不足が明らかになるケースが少なくありません。
たとえば20人が在室するオフィスでは、600㎥/hの換気量が必要です。多くの換気機能付きエアコンの換気風量はこれに遠く及ばないことが多く、メインの換気手段としては力不足です。「換気機能付きだから安心」と思い込んで設計してしまうと、完成後に基準値を大幅に超えてしまうトラブルを招きます。
計画条件によって最適な機種選定が大きく変わるため、初期段階で空調・換気の設計実績が豊富なプロに相談することで、完成後の手戻りを防げます。
既存のエアコンにおいて、外気を取り入れるためのダクトを接続する「給気キット」を後付けできる場合があります。
これは換気扇がない小部屋などで有効ですが、外気をそのまま(温度未処理のまま)吸い込むため、吹出口付近での結露や冷暖房能力不足を引き起こすリスクがあります。あくまで簡易的な改善策であることを理解しておく必要があります。

現代の店舗・オフィス運営における最適解は全熱交換器(代表例:ダイキン「ベンティエール」、三菱電機「ロスナイ」)の導入です。
この設備は、排出する空気の熱を回収して、新しく取り入れる空気に移し替える仕組みを持っています。エアコンの負荷を抑えつつ、窓を閉めたままクリーンな環境を実現できます。
全熱交換器は排気(汚れた空気)と給気(新鮮な空気)をすれ違わせ、「温度」と「湿度」だけを交換します。
一般的な換気扇(外気直接取り入れ)と比較して、全熱交換器は冷暖房負荷を約70〜80%削減できると言われており、エネルギー価格が高騰する現在、投資回収の面でも極めて優れた設備です。
全熱交換器はエアコン室内機と同等のサイズがあるため、導入には天井裏のスペース確保が最大の課題となります。
また、太いダクトを2系統(給気・排気)通す必要があるため、梁の位置や他の配管との干渉を事前に綿密に調査しなければなりません。工期やコストに直結するため、早めの実測調査が強く推奨されます。
最新の換気システムではCO2センサーを設置し、その数値に連動して換気量を自動制御することが可能です。
人が密集した時だけフル稼働させ、少ない時間帯は風量を抑えることで、常に快適さを保ちながら電気代の無駄を極限まで排除できます。これはビル管理法などの基準をクリアしつつ、SDGsへの取り組みとしても非常に有効です。
業務用施設では、換気が「推奨」されているだけでなく、法定換気量という法律で義務化されているケースもあります。
ここでは、主な法的基準とその確認方法について説明します。
厚生労働省が定める「事務所衛生基準規則」では、一人あたり毎時30㎥以上の換気が必要とされています(第5条)。
この基準は、室内で発生するCO₂や湿気、汚染物質を一定レベル以下に保つためのものであり、すべての事業所に適用されます。
飲食店や美容室などでは、各自治体の条例や消防法に基づき、調理設備や客室ごとの換気量基準が定められていることがあります。
とくに調理場では排気ファンやフードの設置が義務付けられていることが多く、換気設備なしでは営業許可が下りないケースも存在します。
換気に関する規定を満たすためには、以下のポイントを確認することが重要です。
このような点を押さえたうえで、行政に提出する図面や換気計算書の作成も視野に入れておく必要があります。
業務用エアコンと換気設備の導入・改善を検討する際にはコストや機能だけでなく、施設の特性や運用目的に合った選択が求められます。
ここでは、導入時に押さえておきたい3つの視点から解説します。
換気方式は「自然換気」「機械換気(第1種〜第3種)」などがあります。
開放的なカフェのような空間では自然換気との併用が現実的ですが、完全密閉されたオフィスビルや診療所では機械換気の導入が必要不可欠です。
また、面積が広く来客数が多い施設では、「全熱交換換気」や「CO₂センサー連動型換気」など負荷に応じた調整が可能なシステムが適しています。
以下のように、導入機器によって初期費用・運用コスト・維持管理の手間は大きく異なります。
| 設備種別 | 初期コスト | 電気代 | メンテナンス頻度 | 設置難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 一般換気扇 | 低め | 低め | 半年〜年1回 | 容易 |
| 全熱交換器 | 中〜高 | 中程度 | 年1回以上 | 中〜高 |
| 換気一体型エアコン | 高額 | やや高い | 年1〜2回 | 高い |
これらを事前に整理し、専門業者や建築士との相談を経て進めることで、失敗のない設備導入が可能になります。
Q. エアコンから外の匂いがしてくることがありますが、これは換気されているからですか?
A. 結論として、換気されているわけではありません。
理由として、配管の隙間や建物が「負圧」になり、隙間から外気を無理やり吸い込んでいる「漏気」の可能性が高いです。実務上の補足として、この状態は空調効率を下げ、カビの原因にもなるため、適切な給排気バランスの調整が必要です。
Q. 換気機能を重視してエアコンを選ぶのと、全熱交換器を別で入れるのはどちらが良いですか?
A. 中長期的には「全熱交換器の別設置」が圧倒的に推奨されます。
理由として、換気機能付きエアコンは熱回収効率が専用機ほど高くなく、エアコンが故障した際に換気も止まってしまうリスクがあるからです。全熱交換器であれば、将来的にエアコンを買い替える際も換気システムはそのまま使えるため、資産維持の観点からも有利です。
Q. 24時間換気システムがあれば、エアコンを稼働させなくても大丈夫ですか?
A. 衛生面では重要ですが、温度管理の面では不十分です。
理由として、24時間換気は最低限の空気質を保つための最小風量であり、冷暖房機能は持っていません。真冬や真夏にエアコンを止めて換気だけを行うと、外気温がダイレクトに室内に入り、次にエアコンをつけた際の起動電力(電気代)が跳ね上がります。併用するのが最も経済的です。
業務用エアコンは「空気の温度を整える機械」であって「空気を入れ替える機械」ではないという事実を正しく認識することが、健全な管理の第一歩です。空調と換気を切り分けて考え、全熱交換器のような高機能設備を適切に組み合わせることで、初めて「快適性」「省エネ」「法令遵守」の三立が可能になります。
現状のオフィスや店舗で換気能力の不足に不安がある場合は、専門家による風量測定や診断を依頼することをお勧めします。店舗やオフィスの環境改善において「換気」は重要なテーマです。現在の設備に不安がある方、これから導入を検討している方は、当社ReAirへお気軽にご相談ください。

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