換気設備 2025.03.28

病院の空調設備ガイドラインとは?換気の重要性と建築基準法やビル管理法による影響を解説

病院の空調設備ガイドラインとは?換気の重要性と建築基準法やビル管理法による影響を解説
川崎市の空調換気設備の取付工事業者 川崎市の空調換気設備の取付工事業者

 

病院は患者や医療スタッフの健康を支える場所であり、空気環境の質は医療の質にも直結します。

本記事では、病院空調設備に関するガイドラインや法律、換気システムの重要性、適切な管理方法まで詳しく解説します。

これから病院施設の設計・管理に関わる方にとって、役立つ情報を提供していきます。

この記事の流れ
  • ・病院空調が求められる理由と役割
  • ・空調設備に関する法律とガイドライン
  • ・換気システムや設定温度の基準
  • ・暑さ・寒さトラブルの原因と対策
  • ・最新の空調設備トレンド紹介

 

病院における空気環境の重要性

病院における空気環境の重要性

病院の空気環境は、患者の回復だけでなく、医療スタッフの健康や医療安全にも密接に関わっています。

ここでは、空調と換気が担う役割について掘り下げて解説します。

患者と医療スタッフを守るための役割

病院では、免疫力が低下している患者が多く滞在しています。

たとえば、手術後の患者や高齢者、乳幼児などは空気中のウイルスや細菌に対して非常に脆弱です。

このため、適切な空気管理により空気中の汚染物質や病原体の拡散を防ぎ、院内感染を防止することが求められます。

一方、医療スタッフにとっても、良好な空気環境はストレス軽減や集中力維持に繋がり、医療の質向上に寄与します。

感染症対策と空調・換気の関係性

感染症対策としては、空調と換気の役割が欠かせません。

たとえば新型コロナウイルスの流行時には、換気不足によるエアロゾル感染リスクが問題となりました。

外気を取り入れ汚れた空気を効率よく排出する換気設計が求められています。空調は単に温度調整するだけでなく、感染リスクを減らす「見えない盾」の役割を果たしているのです。

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病院空調設備に関連する法律と基準

病院空調設備に関連する法律と基準

病院の空調設計・管理には、法律や基準が関係してきます。

ここでは、どのようなルールに基づく必要があるのか、整理して紹介します。

建築基準法における換気基準

建築基準法では室内の二酸化炭素濃度が1000ppm以下に抑えられるよう、換気設備の設置が義務付けられています。

病院ではこれに加え、感染症防止の観点から、さらに厳格な換気回数が求められる場合もあります。

具体的には、1時間あたり6回以上の空気入れ替えが必要とされる区域も存在します。

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ビル管理法(建築物衛生法)の規定

ビル管理法においても、病院などの特定建築物は空気環境測定が義務付けられています。

たとえば、定期的に一酸化炭素や二酸化炭素濃度、温度・湿度の測定を行い、基準値を超えた場合は是正措置を講じなければなりません。

これは、建物全体として快適かつ衛生的な環境を維持するための取り組みです。

病院設備設計ガイドライン(空調設備編)

厚生労働省が発行する「病院設備設計ガイドライン」では、病室、手術室、ICUなど用途に応じた詳細な空調条件が定められています。

たとえば手術室では陽圧制御(外気流入防止)が推奨され、病室では居心地と安全性のバランスが求められます。

このガイドラインは、設計者・施工者だけでなく、運営者にとっても重要な参考資料です。

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病院に求められる換気システムとは

病院に求められる換気システムとは

換気システムは、単に「空気を入れ替える」だけでは不十分です。

ここでは、病院特有の換気要件と高機能な換気設備について詳しく解説していきます。

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必要換気回数とその考え方

病院では、部屋の用途によって求められる換気回数が異なります。

たとえば、一般病室では1時間あたり6回、手術室では15回以上の換気が目安とされています。

これにより、空気中の浮遊微粒子やウイルスの濃度を低減し、安全な空間を確保できます。

高機能換気システムの種類と特徴

現在、病院向けにはさまざまな高機能換気システムが存在します。

以下のようなシステムが導入されています。

システム名 特徴 コスト 導入難易度
全熱交換換気システム エネルギー損失を抑えながら換気
HEPAフィルター付換気 微細粒子やウイルス除去に有効
デマンドコントロール換気 人数に応じた換気制御が可能

たとえば、手術室ではHEPAフィルター搭載システムの採用が主流になりつつあります。

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病院の適切な空調設定と管理

病院の適切な空調設定と管理

病院では、快適性と衛生環境の両立が空調管理のカギとなります。

ここでは、推奨される温湿度設定や、エリアごとの管理ポイントについて解説していきます。

病院内で推奨される設定温度と湿度

病院全体として、室温は22~26℃、湿度は40~60%に保つことが望ましいとされています。

この範囲は、患者の快適性だけでなく、ウイルスや細菌の繁殖リスクを抑えるためにも重要です。

たとえば、湿度が40%を下回ると、インフルエンザウイルスが空気中で活性化しやすくなることが知られています。

また逆に、湿度が高すぎるとカビやダニの発生リスクが上昇するため、適切なバランスを取ることが必要です。

医療スタッフにとっても、適温・適湿の環境は作業効率や集中力に直結します。

そのため、単なる「患者のため」だけでなく、施設全体のパフォーマンス向上に直結する重要な管理項目です。

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エリア別(病室・手術室など)の温湿度管理

病院内では、エリアごとに求められる環境条件が異なります。

たとえば、以下のような基準が参考になります。

エリア 推奨温度 推奨湿度 特記事項
一般病室 24℃前後 50%前後 過度な乾燥を防ぐ
手術室 22℃前後 50~60% 高い清浄度・陽圧制御
ICU(集中治療室) 22~24℃ 22~24℃ 温湿度変動を最小限に

仮に、手術室で温度や湿度管理が適切に行われなかった場合、患者の体温管理に悪影響を及ぼすだけでなく、感染症リスクの上昇にも繋がります。

そのため、各エリアに適した細かな調整が求められます。

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病院内で暑さ・寒さを感じる原因

病院内で暑さ・寒さを感じる原因

適切な空調管理を行っていても、患者やスタッフが「暑い」「寒い」と感じることがあります。

以下からはその主な原因を解説します。

空調負荷と設備老朽化の影響

病院建物は年数が経過すると、空調設備の劣化が進みます。

たとえば、冷媒ガスの漏れや熱交換器の汚れが発生すると、冷暖房能力が低下し、設定温度に到達しづらくなります。

また、建物自体の断熱性能が古くなると、外気温の影響を受けやすくなり、冷暖房負荷が増大します。

これにより、結果的に空調効率が悪化し、暑さ寒さの感じ方にムラが生じるケースが増えます。

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気流設計の不備やメンテナンス不足

気流設計が適切でないと、空調の効果に偏りが出てしまいます。

たとえば、吹き出し口から直撃する冷風により一部だけ極端に寒くなることや、逆に空気が滞留して暑く感じることがあります。

さらに、定期的なフィルター清掃やダクト内部のメンテナンスを怠ると、空気の流れ自体が悪化し、室内環境に大きなムラが発生する原因となります。

つまり、ハード面(設備設計)とソフト面(運用・メンテナンス)の両方からのアプローチが必要なのです。

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病院の空調トラブルを防ぐためにできること

病院の空調トラブルを防ぐためにできること

空調設備の不具合は、事前に対策を講じることで不具合の前兆を知ることや故障を防ぐことができます。

ここでは、具体的な取り組み方法について紹介していきます。

定期点検とメンテナンスの重要性

空調設備のトラブル予防には、定期点検とメンテナンスが欠かせません。

たとえば、年2回のフィルター交換、配管やファンモーターのチェックなどを計画的に実施することで、重大な故障を未然に防ぐことができます。

一例として、地方の小規模病院では、設備点検を専門業者に委託し、年間保守契約を結ぶことで、トラブル発生率を大幅に減少させた実績があります。

プロの目による診断を定期的に受けることで、安心して病院運営を継続できる体制を築くことができます。

快適性向上に向けた改修・リニューアル提案

既存設備に限界が見え始めた場合には、改修やリニューアルを検討することも重要です。

たとえば、省エネ性能の高いインバーター式エアコンや、外気処理ユニット(エアハンドリングユニット)の新設など、効果的な更新提案が可能です。

初期投資は必要ですが、エネルギーコスト削減や患者・スタッフの満足度向上につながるため、結果的には病院経営にもプラスに働きます。

「どうせ交換するなら今より良いものを」という視点で、未来を見据えた設備選びを意識しましょう。

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病院空気環境整備の最新トレンド

病院空気環境整備の最新トレンド

近年、医療現場のニーズに応じて病院の空調システムは大きな進化を遂げています。

ここでは、省エネ化や感染症対策を重視した最新の動向についてご紹介します。

省エネ型高効率空調システムの導入

エネルギーコストの上昇や環境配慮への意識の高まりから、病院でも省エネ型空調システムへの切り替えが進んでいます。

たとえば、高効率なヒートポンプ式空調機や、負荷変動に応じて運転を最適化するインバーター制御が代表例です。

ある中規模病院では、空調システムを更新した結果、年間の電気代を約20%削減できたという事例もあります。

このように、省エネ性能向上はコスト削減だけでなく、病院の環境価値向上にも貢献します。

また、省エネだけを追求するのではなく、患者の快適性や医療サービスの質を維持できるかを併せて検討することが重要です。

エネルギー効率と室内環境のバランスを取った導入が求められています。

感染症対策を重視した換気設計の進化

新型コロナウイルスの流行をきっかけに、病院空調設計における「換気性能」の重要性は一層高まりました。

現在では、通常の換気量確保に加え、「外気導入量の増加」や「空気清浄機能付き換気装置」の導入が積極的に行われています。

一例として、陰圧制御(室内気圧を低く保ち、外部への感染拡散を防ぐ)を施した隔離病室が、新たなスタンダードとなりつつあります。

さらに、空調機器メーカーも医療施設向けに特化した抗菌・抗ウイルス仕様の製品を次々に開発・リリースしています。

病院設計においては、単に基準を満たすだけでなく、「いかにして感染リスクを最小化するか」という観点が不可欠になってきています。

この流れは今後も続き、ますます高度な空調・換気技術の導入が求められるでしょう。

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まとめ

病院における空調設備は、単なる快適性のためだけでなく、患者の回復促進や医療スタッフの安全確保、さらには院内感染防止にも大きな役割を果たしています。

建築基準法やビル管理法、病院設備設計ガイドラインといった規定を正しく理解し、用途に応じた換気・空調システムを適切に設計・管理することが必要不可欠です。

また、施設の老朽化に伴う課題にも目を向け、定期点検やメンテナンスを怠らないことが、長期的なトラブル防止とコスト削減に繋がります。

さらに、省エネ型空調機器や最新の感染症対策技術を取り入れることで、持続可能かつ安心できる医療環境づくりを実現することができます。

空気は目に見えない存在ですが、だからこそ慎重に、そして積極的に向き合うことが、これからの病院運営には求められているのです。

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