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「換気は大事」と聞くけれど、設計図や申請書に出てくる「法定換気量」や「30㎥/h」という数字の意味が、いまひとつピンとこない方は意外と多いのではないでしょうか。
とくに建築や設備の分野に足を踏み入れたばかりの方にとっては、「法定換気量と必要換気量の違い」「建築基準法と設計基準の関係」など、混乱するワードが次々に登場します。
この記事では、そうした初心者の疑問や不安を取り除くために、「法定換気量とは何か」「どんな計算式を使うのか」「なぜ基準が複数あるのか」といったポイントをやさしく整理して解説していきます。
法定換気量とは法律で最低限満たすべき「1人あたりの必要な空気の入れ替え量」のことです。
建築基準法では「居室には20㎥/h以上の換気が必要」とされていますが、令和の改正後は30㎥/hに見直された基準も登場しており現場では基準の使い分けが求められています。
建築基準法第28条および24条で換気に関する規定が設けられています。
その中で、最も基本となるのが「1人あたり1時間に必要な換気量=20立方メートル以上」というルールです。
この数字は、1950年台に制定された初期の基準に由来しており、当時の生活環境を基に設定された最低限の数値です。
その後、2003年のシックハウス対策の法改正(24条の2)で「機械換気設備の設置義務」も追加されました。
現在では、厚生労働省からの感染症対策による勧告や設備設計基準などにより、30㎥/hという基準も使われ始めています。
ただし、申請や法的な最低基準の判断では依然として20㎥/hが使われることもあるため、読み替えが必要です。
たとえば、用途変更やリフォームで確認申請が必要な場合、「設計では30㎥/hだけれど、法定上は20㎥/h以上でOK」となることもあります。
換気量は「人数」ベースで考える方法と、「部屋の容積(㎥)」から導く方法があります。後者がいわゆる「換気回数」という考え方です。
換気回数とは、「1時間あたりに部屋の空気が何回入れ替わるか」を表した数値で、次の式で求められます。
換気回数(回/h)= 換気量(㎥/h) ÷ 室内容積(㎥)
たとえば、部屋の体積が60㎥で、機械換気量が120㎥/hであれば、
120 ÷ 60 = 2回/h
となり、1時間に空気が2回入れ替わる計算になります。
設計では居室で0.5回/h〜1回/h程度が目安とされますが、医療施設や厨房などでは5〜15回/hなど、さらに高い基準が設けられることもあります。
使用目的に応じてこの「回数」と「人あたり換気量」を合わせて設計する必要があります。
一見すると似た言葉である「法定換気量」と「必要換気量」ですが、その意味と目的は大きく異なります。
混同すると設計ミスや確認申請の不備につながるため、それぞれの違いを明確にしておくことが重要です。
ここでは法律上の基準と設計上の目安の違い、そしてそれらが空気質やCO₂濃度にどう関係してくるのかを整理していきます。
必要換気量とは、法的な最低基準ではなく、実際の使用環境に応じて設計者が快適性・衛生環境を考慮して設定する換気量のことです。
つまり、法律で義務付けられている量ではなく、「これくらい換気すれば空気がきれいに保たれる」という、実用上の推奨値です。
たとえば、オフィスビルや学校では、CO₂濃度が1,000ppm以下を保つために、1人あたり30㎥/hの換気が必要とされています。
これは建築基準法上の20㎥/hより高く設定されていますが、より健康的で集中しやすい空間を維持するために導入される目安です。
つまり、法定換気量が「最低限」、必要換気量が「快適・推奨値」という関係にあります。
法定換気量は、「人間が健康を損なわない最低限の基準」として国が定めている数値です。
これに対し、設計基準(=必要換気量)は、「用途や利用者の性質に応じて、より良い空気環境をつくるための指針」です。
たとえば、建築基準法に基づく確認申請では20㎥/h以上であれば要件を満たしますが、実際の設計段階では「30㎥/hで設計しておかないと、空気がこもって不快になる」ということもあります。
このため、建築士や設備設計者は法定基準に加えて設計上の安全率を見込んだ換気量を確保するようにしており、それが「必要換気量」として図面や計算書に記載されます。
実務でよく見る「30㎥/h/人」という数値は、厚生労働省のガイドラインや文部科学省の基準を参考にして導入された例です。
必要換気量は、CO₂濃度との関係からも判断されることがよくあります。
人が呼吸をするだけでもCO₂が増え、換気が不十分だとすぐに1,000ppmを超えてしまうことがあります。
一般的にCO₂濃度を1000ppm以下に保つには、1人あたり30㎥/h程度の換気が必要とされています。
これは実測データと実験に基づいて導かれたもので、国際的にも目安とされている数値です。また、「換気回数」もここで重要になります。
たとえば、密閉度の高い会議室や学習塾では空気がなかなか入れ替わらないため、0.5回/hでは不十分で、1.5回/h以上が望ましいこともあります。
つまり、快適性や健康リスクを減らすためには、法定基準だけでなく「設計換気量+換気回数+CO₂濃度」のバランスで考える必要があるのです。
換気設計を行う際には、「どれだけの換気量が必要か」を具体的に数値で把握する必要があります。
そのためには、主に3つの計算方法が使われます。
人数ベース、室容積ベース、そして有効換気量の考慮を含む視点から、実務で役立つ換気量の求め方を紹介していきます。
最もシンプルで、かつよく使われる方法が、「人数 × 必要換気量(㎥/h/人)」という式による計算です。
たとえば、5人が常時在室する会議室を想定する場合、以下のように換気量を算出します。
換気量(㎥/h)= 30(㎥/h/人) × 5人 = 150㎥/h
このときの「30㎥/h/人」という数字は、厚生労働省や建築設備設計基準で目安とされる推奨値です。
もし建築基準法だけを基準にする場合は「20㎥/h/人」でも最低条件は満たすことになりますが、実際には30㎥/hで設計するケースが一般的です。
たとえば、塾やオフィスのように在室者が固定される空間では、この人数ベースでの計算が非常に有効です。
設計初期から「何人が、どの程度の時間、同じ空間にいるか」を把握しておくことが、的確な換気設計につながります。
次に紹介するのが、「室容積 × 換気回数(回/h)」という考え方です。
こちらは人数に関係なく、空間全体の空気が何回入れ替わるかを基準にしています。計算式は以下の通りです。
換気量(㎥/h)= 30(㎥/h/人) × 5人 = 150㎥/h
たとえば、天井高2.5m、面積20㎡の部屋で、0.5回/hの換気を目指す場合は、
室内容積:20㎡ × 2.5m = 50㎥
換気量:50㎥ × 0.5回/h = 25㎥/h
この方法は天井が高い空間や、大人数が短時間だけ出入りするような施設(体育館・待合室など)で特に有効です。
また、機械換気設備の性能をチェックする際にも、「設計換気回数」との整合性を確認する指標として使われます。
ここまでの計算は「理論上の換気量」であり、実際に空気が流れているかどうかは別問題です。
そこで重要なのが、有効換気量という考え方です。
有効換気量とは、空気が実際に人のいる空間を通過し、汚染空気を外に排出している「実質的な換気量」のことです。
たとえファンが回っていても、給気口と排気口の位置が近すぎて、空気が空間を循環せずショートサーキットしている場合、有効な換気ができていない可能性があります。
この評価では、以下の点を確認することがポイントです。
また、厚生労働省の定める「CO₂濃度測定による換気評価」では、室内の二酸化炭素濃度を測定し、時間経過で換気性能を判断する方法も導入されています。
換気は数式だけではなく、空間設計との組み合わせで“効く換気”を実現するという視点が大切です。
換気量を正しく計算しても、実際の空間で「期待どおりの換気性能」が発揮されるとは限りません。
空気は目に見えず、設計図上の数値だけでは人の動線や家具の配置、空調の流れまでを完全に読み切ることはできないからです。
実際の換気性能を確保するために設計段階で特に気をつけるべきポイントを解説します。
前述したように、理論上の換気量(㎥/h)と、実際に空気が循環している「有効換気量」には差がある場合があります。
これは、給気と排気の位置や空気の通り道が不適切だと、十分な換気が行われないためです。
たとえば、給気口と排気口が同じ壁面に設置されていると空気がその場でショートサーキットを起こしてしまい、部屋の奥まで新鮮な空気が届かないという事態が起こります。
そのため、実務では次のような工夫が求められます。
図面段階では成立していても、実際に什器や人の動きが加わることで流れが滞ることもあります。
完成後の換気テストやCO₂濃度測定による確認も重要な実務プロセスです。
同じ広さ・同じ容積の部屋でも、使用目的によって最適な換気設定は異なります。
たとえば、以下のような違いがあります。
使用空間 | 推奨換気量/換気回数 | 特記事項 |
---|---|---|
オフィス | 30㎥/h/人 もしくは 0.5〜1回/h | 在室時間が長く、CO₂濃度に注意 |
会議室 | 40〜50㎥/h/人 もしくは 1〜2回/h | 一時的に密になることが多い |
トイレ・厨房 | 5〜15回/h | 臭気・湿気対策が主目的 |
教室・学習塾 | 30㎥/h/人以上 | 集中力維持・感染症対策にも有効 |
たとえば学習塾では児童が長時間密集して学ぶため、「最低基準」である20㎥/hでは不足です。
用途ごとに推奨値を参照しながら、快適性と衛生環境を両立させる換気計画が求められます。
換気性能を左右するもう一つの大きな要素が、設備機器の選定と設置場所の工夫です。
ダクト式換気、壁付けファン、天井カセット型、熱交換換気など、多様な方式が存在しますが、最も重要なのは空気の流れを妨げずに「計画どおりの風量が確保できること」です。
たとえば、天井埋込型の熱交換換気設備は高効率ですが、風量不足のまま導入してしまうと、法定基準すら満たせなくなることもあります。
また、居室の中心ではなく端に設置された排気口では空気の「偏り」が生まれがちです。
換気扇メーカーや建材業者の換気設計ツールも活用しながら、設置位置・容量・風量のバランスを確認することが、信頼性ある換気環境づくりの要となります。
「20㎥/h」は人ベース、「0.5回/h」は空間ベースの換気量指標です。
たとえば、容積50㎥の部屋で0.5回/h換気を行えば、換気量は25㎥/h。
これは「1人で使うなら20㎥/h基準は満たしている」が、「2人で使うなら不足」とも解釈できます。
理論上は変わりますが、実務では「換気回数」で補正する考え方が一般的です。
たとえば、同じ床面積でも、天井が2.5mと3.5mでは室内容積が異なります。
換気回数(回/h)で設計する場合は、容積が大きくなる分、必要な換気量も増えることになります。
ただし、「人ベースの換気量(30㎥/h)」を基準とする場合は、天井高による補正はあまり考慮されません。
そのため、高天井空間では換気回数も合わせて検討するのが望ましいです。
トイレや厨房は「局所排気」の対象とされ、通常の居室よりも高い換気回数が求められます。
トイレは5〜10回/h、厨房では15回/h以上が推奨されるケースが一般的です(建築設備設計基準や各自治体の指導要領より)。
においや湿気、熱の発生量が多いため、常時換気と強制排気の併用が前提となる場合もあります。
なお、これらの用途は「居室」とは異なるため、建築基準法上の「20㎥/h/人」の基準とは別枠で評価されます。
換気設計をめぐるキーワードは数多く存在しますが、とりわけ混同されやすいのが「法定換気量」と「必要換気量」の違いです。
前述したように、法定換気量は建築基準法で定められた最低限の健康を守る基準であり、1人あたり20㎥/hなどの数値が明記されています。
一方、必要換気量はその空間の用途や快適性を考慮して設計者が設定する目安で、30㎥/h/人が推奨されることが多い基準です。
また、換気量の計算方法には人数ベース、容積ベース、さらに有効換気量があります。単に数字をあてはめるだけでなく空気の流れや通気経路、設置する換気設備の性能・位置にも注意が必要です。
実務上は「法定基準を満たすこと」はもちろんのこと、使用者の快適性や衛生環境を踏まえて余裕ある設計を行うことが求められます。
そのためには、建築基準法・建築設備設計基準・労働安全衛生法など、複数の基準を並行して読み解く力が欠かせません。
そのうえで、空気の流れを妨げないレイアウトや、信頼できる設備機器の選定へと進めば、数字と体感の両面からバランスの取れた換気設計が実現できます。
ReAirでは建築基準法に精通した換気・設備設計のプロとして、初期相談から確認申請のサポート、施工者との調整までワンストップで対応しています。
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