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「内装工事が完成して引き渡しを受けたのに、数か月後にクロスの浮きや床鳴りが出てきた」「契約書に契約不適合責任という条項はあるが、実際どこまで施工会社に修補を求められるのか分からない」——
内装工事の発注担当者からは、こうした相談が少なくありません。
2020年4月の民法改正により、従来「瑕疵」と呼ばれていた考え方は「契約の内容に適合しているか」という基準を中心とした契約不適合責任へと整理されました。
この記事では、内装工事における契約不適合責任の定義から旧制度との違い、責任期間の考え方、発注者が引き渡し時・不具合発見時に確認すべき手順、費用負担、実務で確認される施工仕様まで解説します。
目次
契約不適合責任とは、請負人(施工会社)が引き渡した内装工事の目的物が、種類・品質・数量などについて契約内容に適合しない場合に、注文者(発注者)が請負人に対して一定の権利を行使できる制度です。
2020年4月1日に施行された改正民法では、従来「瑕疵」と呼ばれていた考え方が、「契約の内容に適合しているか」という基準を中心に整理されました。
内装工事に当てはめると、図面・仕様書と異なる仕上げ材が使われている、床や壁の施工状態が契約上求められた品質を満たしていない、契約で定めた防音・断熱性能が確保されていないといった場合には、契約不適合に該当する可能性があります。
注文者が取り得る主な手段には、次のものがあります。
なお、2020年の民法改正以前の請負契約でも、仕事の目的物に瑕疵があった場合には、旧民法634条に基づく瑕疵の修補請求や損害賠償請求、一定の場合には旧635条に基づく契約解除が認められていました。
そのため、改正によって初めて修補を求められるようになったわけではありません。
改正後は、「瑕疵」という概念から「契約内容に適合しているか」という考え方へ整理され、報酬減額請求を含め、契約不適合が生じた場合の権利関係が体系的に整理された点が重要です。
さらに請負契約特有の規定として、注文者が提供した材料や指図によって契約不適合が生じた場合には、原則として注文者はその不適合を理由に請負人へ責任を追及できません。
ただし、請負人がその材料や指図が不適当であることを知りながら注文者に告げなかった場合は、この限りではありません(民法636条)。
内装工事では、施主支給材や既存の下地・躯体の状態、発注者から指定された施工方法などが不具合の原因となるケースもあるため、実務上重要な規定です。
2020年4月の改正民法施行以前、請負契約では仕事の目的物に「瑕疵」がある場合について、旧民法634条・635条などに請負人の担保責任が定められていました。
旧民法634条では、注文者は請負人に対して瑕疵の修補を求めることができ、修補に代えて、または修補とともに損害賠償を請求することも認められていました。また、旧民法635条では一定の要件のもとで契約解除についても規定されていました。
そのため、「旧制度では損害賠償と解除しかできなかった」「請負の瑕疵担保責任は隠れた瑕疵だけが対象だった」と整理するのは正確ではありません。
改正後は、「瑕疵」という言葉ではなく、引き渡された目的物が種類・品質などについて契約の内容に適合しているかを基準として判断する仕組みに整理されています。
契約書だけでなく、設計図、仕様書、見積書、打ち合わせ記録などから、どのような品質・性能・仕上がりが契約内容となっていたのかが重要になります。
また、売買契約と請負契約について、契約不適合を知った後の通知期間には共通点があります。
売買契約については民法566条、請負契約については民法637条により、種類・品質に関する契約不適合について、原則として「不適合を知った時から1年以内」に相手方へ通知する必要があります。
したがって、「売買は引渡しから1年、請負は知った時から1年」という違いがあるわけではありません。
ただし、実際の建設工事では、請負契約書や請負契約約款によって、民法とは別に「引渡しから1年」「引渡しから2年」といった契約不適合責任期間が設定されていることがあります。
そのため、内装工事で不具合が生じた場合には、
・民法上の通知期間
・契約書や約款に定められた契約不適合責任期間
・民法上の消滅時効
を分けて確認することが重要です。
なお、請負人が引渡し時に契約不適合を知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合には、民法637条の1年間の通知制限は適用されません。
契約書の条項にご不安がある方は
請負契約書の契約不適合責任の期間・対象範囲など、内装工事に関する契約内容について施工会社の立場から確認いたします。法的な判断が必要な場合には、弁護士などの専門家への相談もご検討ください。
内装工事の契約不適合責任について、「内装工事なら一律○年間」と法律で決まっているわけではありません。
民法637条では、種類・品質に関する契約不適合について、原則として注文者が不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知することが定められています。
一方、実際の建設工事では、当事者間の契約書や請負契約約款で、これとは別の契約不適合責任期間を設定することがあります。
例えば、国土交通省の「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」では、引き渡された工事目的物について、原則として引渡しから2年以内を契約不適合責任期間としています。
ただし、建築設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽等については別の取扱いが定められています。
| 工事・対象 | 期間の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 一般的な工事目的物 | 民法では不適合を知った時から1年以内の通知が原則。契約書・約款で別途責任期間を定める場合がある | まず契約書・約款の期間規定を確認する |
| クロス・塗装・床材など室内仕上げ | 国交省標準約款では、引渡し時に通常発見できる不適合はその時点で追完請求することを原則とし、通常の注意では発見できなかったものは引渡しから1年 | 傷・汚れ・仕上がり不良など、引渡し時に確認できる事項は検査記録を残す |
| 造作家具・カウンター・建具等 | 契約書・約款による。国交省標準約款では家具等について室内仕上げ等と同様の特則がある | 施工不良と使用による摩耗・破損を区別する必要がある |
| 空調・給排水・電気設備 | 施工会社との請負契約上の責任に加え、機器本体についてメーカー保証が利用できる場合がある | 施工起因か製品起因かによって対応方法・窓口が異なる |
重要なのは、契約書に「契約不適合責任期間:引渡しから1年」などの規定がある場合、単純に民法637条の「知った時から1年」だけを見ればよいとは限らないことです。
事業者間の契約では、民法と異なる責任期間を契約で定めることが可能なため、まず契約書・約款の条文を確認する必要があります。
不具合の重大性だけを理由として契約上の責任期間が当然に延長されるわけではありません。ただし、請負人の故意・重過失、消費者契約、特別な法律が適用されるケースなどでは、契約書の規定とは異なる扱いとなる可能性があります。
契約不適合があり、修補による履行の追完が行われる場合、その修補費用は原則として請負人側が負担します。
ただし、不適合の原因や契約内容、修補方法、修補に要する費用などによって扱いが異なる場合があります。
例えば、注文者の使用方法や通常の経年劣化が原因であれば、施工会社の契約不適合責任とはならない可能性があります。
また、施主支給材や注文者からの指図が原因となった場合には、民法636条に基づき、原則として請負人の責任が制限されます。
ただし、請負人がその材料や指図の不適当さを知りながら注文者に告げなかった場合には、責任を負う可能性があります。
不具合の原因について争いがある場合には、建築士などによる調査や、法的な紛争となった場合には弁護士への相談が必要になるケースもあります。
単に名称が変わっただけではありません。
2020年の民法改正以前の請負契約でも、仕事の目的物に瑕疵があった場合には、注文者は旧民法634条に基づいて瑕疵の修補や損害賠償を請求でき、一定の場合には契約解除についても規定されていました。
改正後は、「瑕疵」という概念ではなく、種類・品質などが契約の内容に適合しているかを基準として責任を判断する仕組みに整理されています。
また、履行の追完、報酬の減額、損害賠償、解除という形で注文者が取り得る手段が体系的に整理されています。
一概にはいえず、契約条項の内容を確認する必要があります。
民法637条は、種類・品質に関する契約不適合について、原則として「注文者が不適合を知った時から1年以内」に請負人へ通知することを求めています。
一方、実際の建設工事では、契約書や請負契約約款に「契約不適合責任期間は引渡しから1年」などと、民法とは別の責任期間が定められていることがあります。
事業者間の契約では、このような特約が有効となる場合があるため、「1年以内に通知さえしておけば、その後は必ず請求できる」とは限りません。
契約書に記載された「1年」が、通知期限なのか、請求期限なのか、請負人が責任を負う期間なのかを条文全体から確認する必要があります。
また、これとは別に民法上の消滅時効が問題になる場合もあります。
最終的に争いになれば裁判所の判断となりますが、実務では、施工時・引渡し時の写真や検査記録、不具合が発生した時期、使用状況、メーカーの施工仕様などを総合的に確認します。
例えば、引渡し直後に発生した床鳴りであれば施工状況を確認する必要性が高い一方、長期間使用した後の変色などでは経年変化も考慮する必要があります。
民法の契約不適合責任に関する規定には任意規定が含まれているため、事業者間の契約では、責任範囲や期間について民法と異なる内容を定めることがあります。
ただし、請負人が契約不適合を認識しながら告げなかった場合や、故意・重過失、公序良俗その他の事情によっては、免責・責任制限条項の効力が制限される可能性があります。
また、発注者が消費者に当たる場合には、消費者契約法10条などにより、一方的に消費者の利益を害する条項が無効となる可能性があります。
契約不適合責任については、発注者が原則として請求する相手は、自社と直接請負契約を締結した請負人です。
元請けと契約している場合には、下請け業者が実際に施工した部分であっても、まず元請けとの契約関係に基づいて対応を求めるのが基本です。
その後、元請けと下請けとの間で責任分担が問題となる場合があります。
契約不適合の有無を判断する際には、単に「仕上がりが悪い」という感覚だけでなく、契約図書、メーカーの施工要領、使用材料の仕様、認定工法などを確認しながら、施工方法が適切だったかを検証します。
例えばビニールクロスを石膏ボード下地に施工する場合には、ボードの継ぎ目やビス頭などを適切にパテ処理し、必要に応じてテープやシーラー等を用いて平滑な下地を形成します。
必要な処理方法やパテの回数などは、使用する材料・下地・施工仕様によって異なるため、「必ず○回」と一律に判断するのではなく、メーカー施工要領や仕様書との整合性を確認することが重要です。
床についても、根太間隔、下地合板の厚さ、釘・ビスの種類や留付け方法などは、床材や工法、メーカーの施工仕様によって異なります。
製品によっては根太間隔303mm以下などを指定するものもありますが、303mmがすべての床工事に共通する基準ではありません。
また、軽量鉄骨(LGS)下地に石膏ボードを施工する場合、ボードを固定するねじの間隔については工法ごとに仕様が定められています。
一般的な施工例では周辺部200mm程度、中間部300mm程度とする仕様がありますが、耐火構造・準耐火構造・遮音構造などの認定工法では、それぞれの認定仕様に従う必要があります。
したがって、「LGSのビスピッチは303mm」と一律に判断することはできません。
木材についても、適切な含水率は材料の種類やJAS区分、施工仕様によって異なります。人工乾燥材には含水率15%以下、20%以下など複数の区分があるため、「木造下地は一律20%以下」とするのではなく、使用材料の規格や設計図書で定められた含水率を確認します。
こうした具体的な施工仕様やメーカー基準と、実際の施工状況を照合することが、契約不適合の原因が施工起因なのか、材料・環境・使用条件に起因するのかを判断する重要な材料になります。
竣工検査(施主立会いの引渡し検査)は、引渡し時点の工事状態や、不具合をいつ認識したのかを確認するうえで重要です。
検査で指摘した事項は是正対応の記録として残し、是正完了の確認を書面や写真で記録しておくことで、後日「いつの時点で何が指摘され、どのように是正されたか」を確認しやすくなります。
なお、民法637条における1年間の通知期間は、竣工検査日そのものではなく、原則として注文者が契約不適合を知った時から進行します。
一方で、契約書に「引渡しから○年間」とする責任期間が定められている場合には、契約上の引渡日が重要になります。
弊社(ReAir)でも、内装工事の引き渡し時には、工事内容や契約条件に応じて竣工時の確認を行い、指摘事項や是正内容を記録しながら対応しています。
また、下請け業者が関与する工事では、建設業法に基づく下請契約の内容や、元請けによる施工管理・検査体制も重要です。
内装工事の契約不適合責任は、2020年4月に施行された改正民法によって、従来の「瑕疵」を中心とした規定から、「契約の内容に適合しているか」を基準とする制度へ整理されました。
改正前の請負契約でも、瑕疵の修補や損害賠償、一定の場合の解除は認められていましたが、改正後は履行の追完、報酬の減額、損害賠償、解除という形で権利関係が体系的に整理されています。
また、内装工事の契約不適合責任を考える際には、期間について特に注意が必要です。
民法637条では、種類・品質に関する契約不適合について、原則として「不適合を知った時から1年以内」に請負人へ通知する必要があります。
一方、実際の工事契約では「引渡しから1年」「引渡しから2年」など、民法とは別の契約不適合責任期間が契約書や約款に定められていることがあります。
そのため、
①契約書・約款で責任期間と対象範囲を確認する
②引渡し時に竣工検査を行い、写真や書面で記録を残す
③不具合を発見したら速やかに施工会社へ書面で通知する
という流れが重要です。
特に「民法では知った時から1年だから大丈夫」と判断するのではなく、契約上の責任期間、民法上の通知期間、消滅時効をそれぞれ分けて確認する必要があります。
契約内容や引渡し後の不具合への対応について不明点がある場合は、まず施工会社に契約内容と施工状況を確認し、法的な判断が必要な場合には弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
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