建築・建設 2026.08.14

防炎表示義務とは?対象物品・罰則をわかりやすく解説

防炎表示義務とは?対象物品・罰則をわかりやすく解説

店舗やオフィスの内装工事でカーテンやカーペットを選ぶとき、「防炎」の表示があるかどうかを気にしたことはあるでしょうか。

実はすべての建物に防炎表示義務があるわけではなく、対象になるかどうかは建物の高さや用途によって法律で細かく決められています。知らずに防炎表示のないカーテンやじゅうたんを使ってしまうと、消防検査で是正指導を受けたり、最悪の場合は罰則の対象になることもあります。

この記事では、防炎表示義務の対象となる建物・物品の具体的な範囲、紛らわしい「防火施工管理ラベル」との違い、自社の店舗が対象かどうかの確認方法、費用相場、よくある勘違いまで、内装工事の実務目線で解説します。

飲食店・物販店・クリニック・オフィスなど、テナントを構える事業者の方はぜひ参考にしてください。

防炎表示・防炎物品とは?消防法上の基本を整理

防炎表示義務は、消防法第8条の3を根拠とする規制です。カーテンやじゅうたんなど燃えやすい繊維製品が火災の際に燃え広がる速度を抑えるため、一定の建物(防炎防火対象物)では、防炎性能を持つ「防炎物品」の使用が義務付けられています。

防炎物品とは、着火しても燃え広がりにくい性能試験に合格した製品や、後から防炎加工を施した製品のことで、外観だけでは性能の有無がわからないため、総務省消防庁長官の登録を受けた「登録表示者」が発行する防炎ラベルの貼付が義務付けられています

防炎対象物品は消防法施行令第4条の3で「カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等」と定義され、じゅうたん等の具体的な種類(織りカーペット、タフテッドカーペット、人工芝、合成樹脂製床シートなど)は消防法施行規則第4条の3で細かく列挙されています。このほか展示用の合板、どん帳、舞台幕、舞台の大道具用合板、工事用シートも対象です。

自社の店舗が防炎表示義務の対象か不安な方は

内装工事の計画段階から、防炎表示が必要な範囲を含めて確認いたします。什器・カーテン類の選定でお困りの際はお気軽にご相談ください。

紛らわしい「防火施工管理ラベル」との違い

内装工事の現場では、防炎ラベルとよく似た「防火施工管理ラベル」も見かけますが、この2つは根拠法令も貼付義務も全く別物です。

防炎ラベルは消防法に基づき、カーテンやじゅうたんなど「物品」の防炎性能を製造・加工業者が保証するラベルで、防炎防火対象物では貼付が法律上の義務です。一方、防火施工管理ラベルは建築基準法の内装制限に基づき、壁紙や天井材などの「仕上げ材」が不燃・準不燃・難燃のどの区分の施工方法で仕上げられたかを、壁装施工管理者が保証するラベルです。

防火施工管理ラベルは平成12年(2000年)の建築基準法改正で法的な貼付義務がなくなっており、現在は民間工事での貼付は基本的に任意という点は見落とされがちです。「壁に貼ってあるラベル=防炎ラベルと同じもの」と誤解しているケースも多いため、内装業者との打ち合わせでは、この2つのラベルを区別して確認することが重要です。

用途別・建物別に見る防炎表示義務の該当可否

防炎表示義務の対象になるかどうかは、建物の高さ・地下街かどうか・用途区分(消防法施行令別表第1)の3つの軸で判断します。用途別に整理すると以下のようになります。

用途・建物 該当可否・内容 備考
高層建築物(高さ31m超) 該当(用途を問わない) 共同住宅でもカーテンを使う部分は対象になる
地下街 該当(用途を問わない) 美容室や事務所であっても対象
飲食店・料理店(3項ロ・イ) 該当 高さ・床面積に関わらず用途区分のみで対象
物品販売店舗・展示場(4項) 該当 百貨店、マーケット等を含む
旅館・ホテル・宿泊所(5項イ) 該当 簡易宿所も含め対象になりやすい
病院・診療所・福祉施設(6項) 該当 クリニックも診療所として原則対象
複合ビル内の飲食店テナント(16項) 該当(飲食店部分のみ) 同じビルの事務所部分は非対象のことがある
単独の低層オフィス(高さ31m以下) 原則非該当 増床・移転で高層ビルに入る際は要確認

複合ビルへの入居・移転を検討中の方は

同じビルでも用途区分によって防炎表示義務の有無が変わります。移転先の物件選びの段階からご相談いただけます。

自社物件は対象か?確認方法とチェックリスト

自社のテナントが防炎表示義務の対象かどうかは、以下の順番で確認すると判断しやすくなります。

  • 建物の高さを確認:地盤面から31mを超えるかどうかを設計図書や管理会社への確認で把握する。超える場合は用途を問わず対象。
  • 地下街・地階かどうかを確認:地下道と接続した地階の店舗は用途を問わず対象になりやすい。
  • 用途区分を確認:消防法施行令別表第1のどの項に該当するか(飲食店・物販店・旅館・病院等)を管理会社や設計図書、消防署への確認で特定する。
  • 複合ビルの場合は自社部分の用途のみで判断:同じビル内でも事務所部分と飲食店部分では扱いが異なることがある。
  • 使用予定の物品に防炎ラベルが付いているか確認:カーテン・じゅうたん・展示用什器などを発注する前に、購入先が防炎表示者登録済みかを確認する。
  • ラベルの洗濯表示を確認:水洗い・ドライクリーニングいずれに対応した防炎性能かを把握し、クリーニングによる再加工の要否を判断する。
  • 判断に迷う場合は所轄消防署か日本防炎協会に事前相談:用途区分の解釈は建物ごとに異なるため、工事着手前の相談が是正指導を避ける一番確実な方法。

防炎加工・防炎ラベル取得にかかる費用相場

防炎対応のコストは、大きく「防炎製品を新規購入する場合」と「既存の生地に後から防炎加工を施す場合」で変わります。後加工の防炎処理は生地の総面積に応じた単価計算になるのが一般的で、加工料金に加えて洗浄とセットで依頼すると割高になる料金体系の業者もあります。

また防炎ラベル自体にも費用がかかり、参考として大阪の室内装飾事業協同組合が示す例では、施工用ラベルが1枚90円(税別)、ピース用が1枚40円(税別)、カーテン用が1枚32円(税別)、防火壁装施工管理ラベルが1枚35円(税別)とされています。

タイルカーペットの場合はパーテーションで間仕切られた区画ごとに1枚のラベル貼付が必要で、区画数が多いオフィスほどラベル代がかさむ点は見落とされやすいポイントです。さらに内装業者が自社でラベルを発行するには「防炎表示者登録」を日本防炎協会に申請する必要があり、審査手数料は22,000円、審査には約1か月かかるとされています。

金額の大小だけで発注先を決めると、防炎表示者登録をしていない業者からラベルなしの製品を購入してしまい、消防検査直前に全量交換が必要になるリスクがあるため、「価格が安いかどうか」よりも「正規のラベルを発行できる業者かどうか」を優先して確認すべき実務判断となります。

よくある勘違い・FAQ

Q. 市販のカーテンに自分で防炎スプレーをかければ防炎物品として認められる?

認められません。防炎物品として法律上有効なのは、消防庁長官の登録を受けた「登録表示者」が防炎ラベルを発行した製品のみです。自分で市販の防炎スプレーを吹き付けても、法律上の防炎表示は得られず、消防検査では防炎物品として扱われません。

Q. 防炎ラベルは工事完了後に剥がしてしまってよい?

工事完了検査・消防検査が済んでいれば、テナント工事の範囲内であれば基本的に剥がしても問題ないとされています。ただし共用部分やビルオーナーが管理する範囲については、剥がしてよいか事前に確認したほうが安全です。

Q. 小さな戸建てのカフェなら高さが低いので防炎表示は不要?

不要とは限りません。高層建築物(31m超)や地下街は「高さ・立地」による該当ですが、飲食店は消防法施行令別表第1(3項)の用途区分そのもので対象になるため、低層の戸建て店舗であっても飲食店として営業する以上、カーテンやじゅうたんには防炎表示が必要です。

Q. 居抜きで引き継いだ什器のカーテンにラベルが付いていない場合はどうする?

造作譲渡契約で内装や什器をそのまま引き継いだ場合でも、防炎ラベルが付いていなければ防炎物品として認められません。消防検査で是正指導の対象になり得るため、開業前に既存のカーテン・じゅうたん類のラベルの有無を必ず確認し、ない場合は防炎表示のある製品への入れ替えを検討する必要があります。

Q. 防炎表示と建築基準法の内装制限は同じルール?

異なります。防炎表示は消防法に基づき、カーテンやじゅうたんなど「置き家具・物品」の燃えにくさを規制するルールです。一方の内装制限は建築基準法に基づき、壁や天井など「建物本体の仕上げ材」の燃えにくさを規制するルールで、根拠法令も検査のタイミングも別々です。両方の基準を満たして初めて、内装全体として火災予防上の要件をクリアできます。

実務で使われる防炎対象物品・材料と具体的な数値

防炎対象物品は消防法施行令第4条の3および消防法施行規則第4条の3で具体的に列挙されています。カーテン、布製のブラインド、暗幕のほか、じゅうたん等として織りカーペット、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、人工芝、合成樹脂製床シート、ござなどが含まれます。このほか、展示用の合板(展示用パネル、掲示板、バックボード、仕切り用パネル)、どん帳、舞台において使用する幕、舞台の大道具用合板、工事用シートも対象物品です。

店舗の内装では、天井から下げる布製ののれんや装飾幕(下げ丈がおおむね1メートル以上のもの)、試着室の目隠し布、面積2平方メートルを超えるエレベーターの床・壁の保護敷物なども対象になる点は意外と知られていません。

防炎表示の様式は物品の種類によって3系統に分かれており、①布製ブラインド・展示用合板・どん帳・工事用シート等、②じゅうたん等、③その他(水洗い・ドライクリーニングの耐洗濯性能で細分化)で、それぞれ異なるラベルデザインが使われます。

特に③のグループはクリーニング方法によって基準適合の可否が分かれるため、購入時にどの洗濯方法に対応したラベルかを確認しないと、洗濯後に防炎性能が失われ再加工が必要になることがあります。

設計・申請・現場で実際に確認されるポイント

防炎表示は、建物の使用開始届出や工事整備計画の届出に伴う所轄消防署の立入検査で重点的に確認される項目のひとつです。

現場では、カーテンやじゅうたんの現物をめくってラベルの有無・試験番号を目視で確認されるほか、複合用途ビルでは飲食店やクリニックなど防炎防火対象物に該当するテナント部分だけを重点的にチェックされる運用が一般的です。

弊社(ReAir)では、飲食店や物販店の内装工事において什器やカーテン類を選定する際、仕入れ先が防炎表示者登録を受けているかを確認したうえで発注し、消防検査の前に防炎ラベルの有無を現場で一覧チェックする工程を設けています

内装業者側が防炎表示者登録をしていない場合、自社でラベルを発行できず、外部の登録業者に別途依頼する必要が生じ、工期や費用に影響することもあるため、発注段階での確認が重要です。

消防検査前の防炎ラベル確認も含めてお任せください

什器選定から施工、消防署への届出対応まで、内装工事の実務を一貫してサポートします。

まとめ

防炎表示義務は、建物の高さ(31m超)・地下街かどうか・用途区分の3つの軸で該当可否が決まり、飲食店や物販店、病院、旅館などは高さに関係なく用途そのもので対象になります。

防炎ラベルは建築基準法の防火施工管理ラベルとは根拠法令も貼付義務も異なるため混同しないこと、居抜きで什器を引き継ぐ場合はラベルの有無を必ず確認することが、開業直前のトラブルを避けるポイントです。

自社物件が対象になるか判断に迷う場合は、内装工事の計画段階で施工会社や所轄消防署に相談することをおすすめします。

参考文献

内装工事の計画段階からご相談ください

防炎表示義務の該当確認から什器選定、消防検査対応まで、ReAirがワンストップでサポートします。

※用途区分の解釈は建物・地域により異なる場合があるため、最終判断は所轄消防署にもご確認ください。

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