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飲食店の厨房で働いた方なら誰もが一度は感じたことがある、「とにかく暑い」「空気がこもる」「ニオイが抜けない」といった環境の問題。
とくに夏場の厨房は空調の効きにくさと熱気のこもりによって、従業員の集中力低下や熱中症などの体調不良を招きやすくなります。
実際、厨房の環境悪化は従業員の離職や調理機器の故障にもつながるため、軽視できない経営リスクとなり得ます。
この記事では厨房の空調に特化した設備の違いや設置箇所による効果の差、そして湿気・熱気・ニオイの改善方法について、わかりやすく解説していきます。
目次
厨房の空調がうまく機能しないと暑さ・湿気・ニオイなどさまざまな不快要素が重なり、作業効率や安全性が低下します。
ここでは、厨房空間に特有の問題を3つの切り口から整理します。
厨房が異常に暑くなるのは、機器からの発熱・排熱、空気の滞留そして外気の影響が重なるためです。
たとえばガスコンロ・フライヤー・オーブンなどの熱源は想像以上に熱を発し、さらに天井や壁面にこもりやすい性質を持ちます。
換気がうまくいかないと、調理機器から出た熱が排出されず、室温はどんどん上昇してしまいます。
一方で、給気が不足していると排気効率も悪化し、負のスパイラルに陥ることも珍しくありません。
単に「エアコンの能力が高ければ良い」というのではないのが厨房の厄介なところです。
厨房で空調や換気設備がうまく機能しない場合、いくつかの共通要因が見られます。
代表的なのは空調機の設置場所が熱源に近すぎる、あるいは逆に遠すぎて気流が届かないケース。
また、換気扇やフードが油汚れで目詰まりしていると、そもそも空気が流れにくくなります。そして、意外と見落とされがちなのが「給気口」の存在です。
排気ばかりに目が向きがちですが、空気の“入り口”がなければどれだけ強力な排気装置をつけても空気は流れません。
給排気のバランス設計こそが、厨房空調の肝といえるでしょう。
高温多湿な厨房環境は、作業者の熱中症リスクを大きく高めます。
厚生労働省のガイドラインでも、作業環境がWBGT(暑さ指数)28度を超えると注意が必要とされており、厨房はこの基準を超えることも少なくありません。
でも、作業環境がWBGT(暑さ指数)28度を超えると注意が必要とされており、厨房はこの基準を超えることも少なくありません。
また、温度や湿度が高すぎると、冷蔵庫や製氷機などの冷却機器が故障しやすくなります。
電気代の増加だけでなく食材ロスや営業停止リスクにもつながるため、厨房環境の改善は経済的合理性の面からも重要といえます。
厨房空調の効果を最大化するためには、単に機器の性能を上げるだけでは足りません。
重要なのは、厨房内の熱の動きと換気動線を正しく捉えたうえで、空調機器を「どこに・どのように」設置するかという視点です。
厨房用エアコンは、飲食店舗の過酷な環境でも安定稼働するように設計された専用機です。
たとえば、吸込み口や熱交換器が油煙に強い特殊塗装仕様になっていたり、防錆性能やドレン排水処理が強化されていたりと標準の業務用エアコンとは一線を画しています。
一方、通常の天井カセット形エアコンを厨房で使おうとすると、油の付着や熱風による負荷で寿命が極端に短くなることもあります。
省エネやメンテナンス性を考慮しても、厨房専用タイプの導入は理にかなっているといえるでしょう。
厨房において「空気の流れを読む」ことは、空調設計の大前提です。
たとえば、コンロやフライヤーから立ち上る熱は、当然上方へと流れます。
そのため、天井付近に熱が滞留しやすく、エアコンの吹出口がこの範囲をカバーできなければ冷気がまったく届きません。
また、厨房のレイアウトによっては、調理ラインと通路、洗浄スペースなどで温度のムラが生じがちです。
冷気の吹き出し方向や風量、さらには従業員の作業動線まで考慮しながら、効率よく涼しさを感じられる場所に設置することが重要です。
厨房の空調・換気設計で最も重要なポイントのひとつが「排気と給気のバランス」です。
大風量の排気ファンを設置しても、給気口がなければ排気はうまく機能しません。
むしろ負圧状態が強まり、隣接スペースからの臭気の逆流やドアの開閉障害などを引き起こすことさえあります。
理想的には、外気を清浄化したうえで給気口から導入し、排気フードとのバランスを取る設計が求められます。
また、冷暖房空調と換気を独立させるのではなく、一体で設計・運用することでより高い効果が得られます。
厨房内の空調を整えるためには、機器の選定が肝心です。
厨房環境に適した空調機器は耐熱・耐油仕様や設置自由度に優れたものが中心で、それぞれに明確な特徴と適用シーンがあります。
厨房用天吊形エアコンは天井から吊り下げる形で設置されることから、床スペースを確保しながら効果的な冷気供給が可能です。
多くの機種では、吸込口やフィルターが油煙に強く、熱に耐える設計となっており、メンテナンスのしやすさも特徴のひとつです。
また、吹出口の向きを調整することで、熱がこもりやすい調理台上部や洗い場など、特定のエリアを狙って冷却できるのも魅力です。
店舗のレイアウトに合わせて、1台で複数の作業エリアをカバーするような設計も可能になります。
厨房の全体空調とは別に個別の作業エリアを冷却する手段として、スポットエアコンや送風ファンを活用するケースもあります。
スポットエアコンは調理担当者の背後や熱源のすぐ近くなど、局所的な冷却を目的として設置されます。
冷風の直撃で体感温度を下げられる一方で、排熱があるため排気設計との連動が必要です。
一方、送風ファンはコストが安く、簡易的に風を循環させるだけでも熱の滞留防止に効果的です。
冷却効果は小さいものの、複数設置することで厨房全体の空気感を変える補助的な役割を果たします。
以下に、代表的な厨房空調機器の特徴を比較一覧でまとめます。
種類 | 特徴 | 適用シーン | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|---|
天吊形エアコン | 厨房専用設計、油・熱に強い | 中~大規模厨房 | 全体を効率よく冷却、耐久性高い | 費用が高め、設置スペース必要 |
スポットエアコン | 局所冷却、排熱あり | 調理ライン、洗浄場など熱源近く | 体感温度の即効性が高い | 排気処理が必要、騒音に注意 |
送風ファン | 空気循環による温度ムラの緩和 | 小規模店舗、仮設厨房など | 低コスト、設置自由度が高い | 冷却力は弱い、局所冷却には不向き |
このように、それぞれの空調設備には得手不得手があり、厨房規模・作業エリア・人員動線などを踏まえて最適な組み合わせを考える必要があります。
厨房内の環境づくりにおいては、冷却だけでなく、湿気やニオイ、熱気をどう制御するかが大きな課題です。
空調機器だけに頼らず、換気・排気との連動設計が欠かせません。
厨房では大量の蒸気や煙、臭気が発生します。
これらを外に排出するために、強力な換気扇や有圧扇(ゆうあつせん)を設置することが一般的です。
有圧扇は、プロペラ式の換気扇に比べて風圧が高く、油や煙を伴う空気を効率的に排出する力があります。
選定時には、厨房の広さや熱源の数、調理の種類に応じて、必要な排気風量(㎥/h)を計算し、適切なスペックを持つものを選ぶ必要があります。
機器単体の性能だけでなく、ダクト径や配置によっても換気効率は大きく変わります。
ニオイや湿気が厨房内や客席側に残る原因の多くは、空気の流れがうまく設計されていないことにあります。
排気だけを強化しても、給気が不十分だと空気が流れず、ニオイが室内に滞留することになります。
そのため、換気設備は「排気」と「給気」のバランス設計が基本です。
たとえば、外気を導入するための吸気口や給気ファンを適切に設けることで、空気が循環し、臭気の拡散を防ぐ効果が得られます。
厨房の出入り口やパントリーとの境界部分にも空気の流れを考慮することで、バックヤードや客席へのニオイ流出を防げます。
熱源の上部に設置される調理用フード(換気フード)は、油煙や水蒸気を吸い上げる重要な設備です。
これを排気ファンと連動させることで、熱の拡散を抑え、作業者の体感温度を大きく下げることができます。
また、最近では「熱回収型排気フード」や「低風量型フード」など省エネ型の設備も登場しており、空調負荷を抑えながら厨房環境の快適性を高めることが可能です。
省エネだけでなく、厨房内の暑さ対策や空気質の改善にも寄与します。
こうした換気・排気・空調の連動設計は、厨房設計の段階から検討することで、結果として施工コストの抑制や運用時の省エネにもつながります。
厨房用エアコンは、設置するだけでは十分な性能を発揮できません。
空間の特性や熱源の多さに応じて、機器選定・設計・施工すべてのフェーズでの精度が求められます。
厨房は、ガスコンロ・オーブン・食洗機などの熱源が多く、通常のオフィス空間とは比較にならないほどの熱負荷がかかります。
そのため、エアコンの冷房能力は、一般的な計算式(1坪あたり2.2kWなど)では足りず、調理機器の熱出力を加味した設計が必須です。
たとえば、飲食店でよく使用される業務用ガスレンジは1台あたり10kW以上の熱を発する場合もあります。
このような熱量を考慮して、「冷房能力の強化」「熱源近傍へのエアフロー確保」が設計段階から求められるのです。
厨房内の空調機器は、油煙・粉塵・湿気が入り混じる過酷な環境で稼働します。
フィルターや熱交換器の汚れはすぐに性能低下につながり、機器寿命を大きく縮めます。
そのため、空調機器の設置位置は「清掃しやすい高さ」「点検口へのアクセスの確保」「フィルターの取り外しやすさ」など、実際の清掃・メンテナンス作業を想定して設計する必要があります。
特に天吊型エアコンでは、機器の側面や背面に手が届くか、脚立を使って清掃できるかといった動線も重要です。
設計時に「年1〜2回の定期メンテナンス」を前提にしておくと、長期的なトラブル予防に役立ちます。
厨房エアコンの設計・施工では、現場でよくあるミスにも注意が必要です。
たとえば、
といった事例は珍しくありません。これらはすべて、現場調査不足や厨房レイアウトとの連携不足から起こる問題です。
加えて、冷媒配管や電源容量の過不足もよくある落とし穴です。厨房は他の設備も電力を多く使うため、空調だけに過剰な負荷がかかるとブレーカーが落ちる原因にもなります。事前の負荷計算と設備選定が極めて重要です。
厨房用エアコンは、耐油・耐湿・高温環境対応など、厨房独特の厳しい環境に適応する設計がされています。
フィルター構造や熱交換器の素材、内部気流の設計などが根本的に異なり、一般住宅用エアコンでは対応しきれない油煙や湿気の中でも安定して動作します。
また、一般的な空調では考慮しない高熱負荷や煙成分の処理なども前提にあるため、冷房能力も強化された仕様が多いです。
つまり、見た目は似ていても、構造と性能が全く異なる専用機器なのです。
可能性は高いです。厨房内で空調が効かない原因は、冷房能力の不足よりもエアフロー設計のミスや吸排気バランスの悪さにあるケースが多く見られます。
特に多いのは熱源の正面や真上に吹き出し口がなく、冷気が調理者に届かないという事例です。
また、排気扇の吸い込みに冷風が持っていかれる「ショートサーキット現象」も、よくある原因です。配置を見直すだけでも体感温度が2〜3℃下がることは珍しくありません。
使い方によっては有効です。スポットエアコンは限られたエリアに強力な冷風を届ける仕組みで、設置工事を伴わない機種も多く、小規模厨房や補助的な冷却手段として重宝します。
ただし、油煙が多い厨房ではフィルターの詰まりや吸気口の汚れが早く発生するため、「こまめな掃除と定期メンテナンスが前提」と考えておく必要があります。
また、冷房能力に限界があるため、厨房全体の温度管理には向きません。
主な原因は「吸排気バランスの不整合」です。
排気量に対して給気が不足している場合、負圧状態になり空気の流れが淀み、結果的に換気が機能しません。
また、フードのサイズや設置高さ、吸込み面積が適切でないケースもあります。
これらは素人目にはわかりづらいため、換気設計に詳しい空調業者による現地調査が不可欠です。単に換気扇を増やすだけでは改善しない点に注意しましょう。
厨房の空調環境は単に「冷やす」「換気する」だけでは快適になりません。
熱源が密集する厨房では、熱や湿気の流れを読み取り、それに対して適切な空調設備の選定と配置を行うことが鍵となります。
特に、厨房用エアコンの選定では、一般的な業務用空調との違いや厨房特有の負荷に対応できるスペックを見極める視点が求められます。
さらに、湿気・ニオイ・熱気といった課題は、排気ファンや有圧扇、スポットエアコンといった補助機器の活用によって大きく改善できます。
ただし、これらの機器も設置場所や吸排気バランスの影響を受けるため、現場に応じた空気の「流れ」を設計することが重要です。
厨房の快適性は、従業員のパフォーマンスや安全性、さらには機器の寿命や経営効率にも直結します。だからこそ、目先の機器導入だけでなく、厨房全体の空調設計を見直す機会を設けることが、長期的なコスト削減と働きやすさの両立につながります。
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