内装デザイン 2026.09.04

オフィス内装の遮音対策とは?遮音等級と設計を解説

オフィス内装の遮音対策とは?遮音等級と設計を解説

「会議室の話し声が隣の執務スペースに漏れる」「Web会議ブースの声が周囲の集中力を妨げている」——オフィスや店舗の内装が完成したあとに、こうした音の悩みが表面化するケースは少なくありません。防音・遮音は完成後からの対策が難しく、間仕切り壁の構造を決める設計段階での配慮が欠かせない分野です。この記事では、オフィス内装における遮音対策の基本的な考え方、遮音性能を表す「遮音等級(D値)」の見方、建築基準法で遮音構造が義務付けられているケースとそうでないケースの違い、用途別に必要な遮音等級の目安、既存テナントの遮音性能を確認する手順、費用の変動要因までを、内装工事を専門に手がける施工会社の実務目線で解説します。

オフィス内装における遮音対策・遮音等級とは

遮音とは、壁や床、建具などの部材によって音の透過を防ぎ、室間で音が伝わる量を減らすことを指します。遮音性能を表す代表的な指標が「D値(遮音等級)」と「L値(床衝撃音レベル)」です。D値は壁や間仕切りが音をどれだけ遮断できるかをJIS規格に基づいて評価した数値で、数値が大きいほど遮音性能が高く、D-55はD-50より1ランク性能が優れていることを示します。一方L値は、上階での歩行音や物の落下音が下階にどれだけ伝わるかを示す指標(JIS A 1419)で、こちらは数値が小さいほど性能が良いという、D値とは逆の関係になっている点に注意が必要です。

オフィスの会議室を例にすると、一般的な打ち合わせスペースはD-40前後、人事評価や商談など内容が漏れては困る会議室はD-50以上が目安とされています。ただし、これはあくまで「壁単体の遮断性能」の話であり、実際の室内の静けさは、壁だけでなくドアの隙間、天井裏を伝わる音(フランキング音)、換気ダクトの開口部など複数の経路を合わせて検討しなければ確保できません。

紛らわしい関連制度との違い(法定の遮音義務と任意の遮音等級)

遮音対策を検討する際、最初に整理すべきなのが「法律で遮音性能が義務付けられているケース」と「発注者が快適性のために任意で性能を決めるケース」の違いです。この2つを混同すると、必要以上のコストをかけたり、逆に必要な対策を怠ったりする原因になります。

建築基準法30条・施行令22条の3では、長屋・共同住宅の各戸を隔てる「界壁」、およびホテル・病院・寄宿舎の主たる用途に供する居室相互間の間仕切壁について、政令で定める技術的基準(音の振動数ごとの透過損失の基準値)に適合する遮音構造とすることが法律上義務付けられています。国土交通大臣が定めた仕様(告示仕様)による方法か、大臣認定を受けた構造のいずれかで施工する必要があり、これは建築確認の審査対象にもなります。

一方、一般的なオフィスビルのテナント間仕切りや店舗の客席と厨房の間仕切りなど、多くの内装工事の対象部分には、こうした遮音性能に関する法的な数値基準は存在しません。つまり「オフィスの会議室の遮音等級をD-50にするかD-45にするか」は、あくまで発注者の用途・予算に応じた任意の設計判断であり、建築確認で審査される項目ではないのが原則です。この違いを理解しておくと、「法律で決まっているから」ではなく「自社の使い方に必要だから」という視点で適切な仕様を選びやすくなります。

遮音性能の選び方に迷ったら

用途に対してどの程度の遮音等級が必要か、現地を確認したうえでご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。

用途別に見る遮音義務・推奨遮音等級の比較表

法定義務の有無と、実務上の推奨等級を用途別に整理しました。自社のテナント・施設がどの区分に該当するかの目安として活用してください。

用途・部位 遮音義務・推奨等級の目安 備考
共同住宅・長屋の界壁 建築基準法30条・令22条の3により法定義務あり 告示仕様または大臣認定構造での施工が必須
ホテル・病院・寄宿舎の居室間仕切壁 令22条の3の基準に適合する遮音構造が法定義務 建築確認の審査対象になる
オフィスの一般会議室 法定義務なし。D-40前後が目安 発注者の任意判断。快適性・予算による
役員室・人事評価等の機密会議室 法定義務なし。D-50以上が目安 壁だけでなくドア・天井裏の対策も併せて必要
クリニックの診察室・カウンセリングルーム 法定の遮音等級義務なし。D-45〜D-50程度が目安 個人情報保護法上の安全管理措置として会話漏洩防止への配慮が求められる

自社テナントの遮音性能を確認する方法・チェックリスト

これから内装工事を発注する場合も、既存の間仕切りに不満がある場合も、まず現状を正しく把握することが対策の第一歩です。

  • ①法定義務の対象か確認する:共同住宅・ホテル・病院・寄宿舎の居室間仕切りに該当するかを確認する。該当する場合は令22条の3の基準を満たす構造が必須。
  • ②既存壁の構成を図面で確認する:石膏ボードの枚数・厚み、内部の断熱材(グラスウール等)の有無、壁の総厚みを設計図書または現地調査で確認する。
  • ③音漏れの経路を特定する:壁本体だけでなく、ドアの下端の隙間、天井裏の連通、換気・空調ダクトの貫通部など、音が回り込む経路を洗い出す。
  • ④用途に対して必要な等級を整理する:比較表を参考に、会議の内容(一般的な打ち合わせか、機密性が高いか)に応じて必要なD値の目安を設定する。
  • ⑤既存テナントであれば管理規約も確認する:オフィスビルの場合、貸主側の共通仕様や工事区分表に界壁の遮音仕様が定められていることがあるため、B工事・C工事の範囲と合わせて確認する。

弊社(ReAir)では、遮音対策のご相談をいただいた際、まず現地で既存壁の構成と音の回り込み経路を確認したうえで、用途に見合った遮音等級と対策範囲(壁だけで足りるか、ドアや天井裏も含めるべきか)をご提案する流れで対応しています。

遮音工事にかかる費用の考え方

遮音対策の費用は、対象となる壁の面積や既存の壁構成、求める遮音等級によって大きく変わるため、一律の相場を示すことは適切ではありません。費用に影響する主な要因を整理します。

  • 壁の重ね貼り枚数:石膏ボードを二重貼りにするか、単層のままシートを追加するかで材料費・工事期間が変わる
  • 遮音シートの性能:遮音シート単体の施工費用は1平米あたりおよそ2,000円〜5,000円程度が目安とされ、性能が高いものほど単価が上がる傾向がある
  • 断熱材(グラスウール等)の充填:壁内部への充填は、単体では遮音材にならないが、遮音材と組み合わせることで効果が高まる
  • ドア・建具の交換有無:壁の遮音性能を上げても、既存の建具のままでは効果が頭打ちになるため、防音ドアへの交換や下端のアンダーカット解消も費用に含める必要がある

「壁の遮音等級を上げる工事だけ発注すれば静かになる」と考えて壁工事の見積りだけで安さを比較すると、実際に使い始めてから「ドア周りから音が漏れる」といった不満が残ることがあります。壁・建具・天井裏の対策をセットで検討したうえで費用を比較することが、結果的に手戻りの少ない選択につながります。

見積り前に現地確認をご希望の方へ

壁だけでなく、ドア・天井裏まで含めたトータルの遮音対策についてご相談いただけます。

よくある勘違い・FAQ

Q. オフィスの会議室にも遮音等級の法的な基準がありますか?

一般的なオフィスの会議室やテナント間仕切りには、共同住宅やホテル・病院のような法定の遮音等級基準はありません。D-40やD-50といった数値は、あくまで発注者が用途に応じて任意に設定する目安です。

Q. 壁を厚くすれば遮音性能は必ず上がりますか?

壁の面密度(重さ)を上げることは遮音性能の向上につながりますが、ドアの隙間や天井裏を伝わる音(フランキング音)、換気ダクトの開口部など、壁以外の経路から音が回り込んでいる場合は、壁だけを厚くしても効果が頭打ちになります。音の経路全体を確認することが重要です。

Q. グラスウールを壁の中に入れれば防音になりますか?

グラスウールは多孔質で軽い材料のため、単体では遮音材としての効果は限定的です。主に吸音材としての効果があり、石膏ボードなど遮音性能の高い材料と組み合わせることで、遮音効果を高める役割を果たします。

Q. 引っ越し前のテナントに遮音対策の実績があれば安心ですか?

前のテナントの用途と自社の用途で求められる静けさのレベルが異なれば、既存の壁構成では不足することがあります。特に機密性の高い会議やカウンセリングを行う場合は、既存の壁構成を図面や現地調査で確認したうえで、必要な等級との差を確認することをおすすめします。

実務で使われる具体的な工法・材料

オフィス内装の遮音対策で実際に使われる代表的な工法と材料を紹介します。基本となるのは、軽量鉄骨(LGS)フレームを組み、その両面に石膏ボードを張る乾式の間仕切り工法です。遮音性能を高める場合、片面を石膏ボード二重貼りにする、フレームの内部にグラスウールなどの断熱・吸音材を充填する、ボードの間に遮音シートを挟み込む、といった組み合わせで性能を積み上げていきます。

壁だけでなく、ドア下端の隙間(アンダーカット)を解消するドアボトム(戸当たりに密着するシール部材)の設置、天井裏で間仕切り壁が届いていない箇所を塞ぐ処理、換気・空調ダクトが間仕切りを貫通する部分への消音ボックスの設置なども、実際の現場では重要な対策として組み込まれます。これらは壁単体の遮音等級には現れない部分ですが、体感する静けさに大きく影響する要素です。

設計・現場で実際に確認されるポイント

遮音対策は、図面上の壁仕様だけでなく、施工段階・引渡し前の現場確認が重要です。設計段階では、壁が天井裏(スラブ)まで届いているか、それとも吊り天井の上で止まっているか(音が天井裏を伝って回り込む原因になる)を確認します。施工段階では、石膏ボードの継ぎ目やコンセントボックスの裏など、遮音性能が途切れやすい箇所の処理状況を確認します。引渡し前には、実際にドアを閉めた状態で声を出して音の聞こえ方を確認するなど、数値だけに頼らない体感チェックも有効です。共同住宅やホテル・病院の界壁工事では、告示仕様通りの構造になっているかが建築確認の検査対象になるため、使用した建材の仕様書や施工写真を記録として残しておくことも実務上重要です。

まとめ

オフィス内装の遮音対策は、「法律で義務付けられているケース」と「発注者が任意で性能を選ぶケース」を切り分けて考えることが出発点になります。共同住宅・ホテル・病院の居室間仕切りは建築基準法30条・令22条の3により遮音構造が法定義務ですが、一般的なオフィスの会議室やテナント間仕切りには法的な基準がなく、D-40〜D-50といった目安をもとに用途に応じて設計する必要があります。壁の構成だけでなく、ドアの隙間や天井裏、ダクト貫通部までを含めたトータルでの対策が、体感する静けさを左右します。これから内装工事を発注する際は、会議室の使い方(一般的な打ち合わせか、機密性の高い内容か)を明確にしたうえで、必要な遮音等級を施工会社とすり合わせておくことをおすすめします。

参考文献

遮音・防音対策の内装工事をご検討の方へ

会議室・診察室・役員室など、用途に合わせた遮音仕様のご提案から施工までワンストップで対応いたします。

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