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ふとした瞬間に、オフィスが持つ「雰囲気」というものに気づくことがありますよね。
その空気感は訪れる人に会社の第一印象を植え付け、そこで働く社員のモチベーションや働きやすさにまで影響を与えているものです。
今やオフィスデザインは、企業のビジョンやブランドを体現し、社員の生産性を最大化するための重要な経営戦略の一つとして捉えられています。
しかし、いざ「デザインしたオフィスを作ろう」と考えたとき、何から手をつけて良いのか迷ってしまう方も少なくないでしょう。特に、「コンセプト」と聞くと、抽象的で難しく感じてしまうかもしれません。
この記事では、そんな方々のために、オフィスデザインのコンセプトをどのように決めていけば良いのか、そしてそのコンセプトを活かして、いかに自社のブランドを強く感じさせる内装を設計していくかについて、初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説していきます。
目次

オフィスコンセプトとは、一言で言えば「オフィスがどのような目的を持ち、そこで働く人々にどのような価値を提供するのか」を明確にした、オフィスの核となる考え方のことです。
このコンセプトが曖昧なままデザインを進めてしまうと、最終的にちぐはぐな印象のオフィスになったり、社員の働きやすさに繋がらなかったりする可能性が高まります。
例えば、カフェのようなリラックスした空間を目指すのか、それとも集中力を高めるための機能的な空間を目指すのかによって、デザインの方向性は大きく変わってくるものです。
参考サイト:オフィスデザインとは?オフィス作りの進め方やデザインや設計に期待できる効果を解説
オフィスデザインを考える上で最も重要で、そして最も楽しい作業の一つが自社の企業理念や事業目標をいかに空間全体に落とし込むかという点です。
企業理念とは、会社が社会に対してどのような価値を提供したいのか、どんな存在でありたいのかを示す羅針盤のようなものですよね。
そして事業目標は、その理念を達成するために具体的に何を成し遂げるのかを示しています。
これらをオフィスのデザインに反映させることで、ただの働く場所ではなく、社員一人ひとりが会社の存在意義を日々実感し、目標に向かって一丸となれるような「生きた空間」を創り出すことができます。
たとえば、IT系のスタートアップ企業であれば、「イノベーションとスピード」を企業理念に掲げていることが多いかもしれません。
この場合、オフィスデザインは固定観念にとらわれない自由な発想を促すようなカラフルな色使いや、部署間の垣根を越えたコミュニケーションを促進するオープンな共有スペース、そして急な会議にも対応できるフレキシブルなミーティングスペースなどを設けることが考えられるでしょう。
社員が自然と交流し、新しいアイデアが生まれるような仕掛けを空間全体に散りばめるのです。
これに対して、伝統を重んじる法律事務所であれば、「信頼と品格」が企業理念の中心にあるはずです。
そうしたオフィスでは、落ち着いた色合いの素材や重厚感のある木製家具、個々の集中力を高めるためのプライベート性の高い執務スペースが求められるかもしれません。
このように、企業理念や事業目標をデザインの出発点にすることで、オフィスは単なる作業場を超え、社員の行動や思考にポジティブな影響を与える強力なツールへと変化します。

オフィスは来訪者にとって企業の顔となる大切な場所であり、社員にとっては日々の働く環境そのものです。
だからこそ、自社のブランドイメージを内装設計に深く織り込むことは企業価値を高め、社員のエンゲージメントを強化する上で欠かせない要素となります。
ブランドとは、ただロゴや色を決めることだけではありません。それは、企業の持つ独自の価値観や文化、そして顧客に与えたい印象のすべてを指します。
このブランドをオフィス全体で表現することで、一貫性のあるメッセージを伝え、記憶に残る体験を提供できるようになるでしょう。
参考サイト:オフィス内装の作りを紹介!デザインと空間設計について解説
ブランドをオフィスデザインに落とし込むためには、まず「自社のブランドとは何か」を明確に「言語化」する作業が不可欠です。
つまり、漠然としたイメージを具体的な言葉やキーワードに変換するステップのことです。
たとえば、自社のブランドが「信頼性」を重視しているのか、「革新性」を追求しているのか、「親しみやすさ」を大切にしているのか。
これらのブランドを構成する要素を言葉にすることで、具体的なデザイン要素へと翻訳しやすくなるのです。
この言語化されたブランドイメージをもとに次に考えるべきは、それをどのように視覚的なデザイン要素として表現するかということです。
たとえば、「信頼性」を重視するブランドであれば、落ち着いた木目や石材などの自然素材、モノトーンを基調としたシックな色使い、そして整然としたレイアウトが考えられます。
一方、「革新性」がブランドの中心にあるのなら、メタル素材やガラスを多用し、鮮やかなアクセントカラーを取り入れたり、可動式の家具でフレキシブルな空間を演出したりすることも有効でしょう。
このようにブランドイメージを具体的なデザイン要素に翻訳することで、オフィス全体に一貫したメッセージが生まれます。
個人的には、この「言語化」のプロセスこそが、デザイナーと依頼主が一体となって理想のオフィスを作り上げるための、最もワクワクする出発点だと感じています。
ブランドをオフィスで表現する際、視覚的に最も効果的な要素の一つが「コーポレートカラー」と「素材」の選択です。
コーポレートカラーは、企業の顔となる色であり、視覚的なアイデンティティを瞬時に伝える力を持っています。
たとえば、青系の色を基調とすれば「信頼感」や「誠実さ」を、緑系であれば「成長」や「環境への配慮」を赤系であれば「情熱」や「革新」といったメッセージを伝えることができるでしょう。
このコーポレートカラーを壁面の一部、家具のファブリック、アクセントウォールなど、戦略的な場所に配置することでオフィス全体にブランドの個性をさりげなく、しかし確実に浸透させることができます。
加えて、内装に使用する「素材」も、ブランドイメージを伝える上で非常に重要な役割を担います。
たとえば、木材を多く使えば「温かみ」や「自然との調和」を、コンクリートやスチールを露出させれば「モダンさ」や「無骨な機能美」を表現できます。
あるいは、再生素材や環境配慮型素材を選ぶことで、企業のサステナビリティへの取り組みをメッセージとして発信することも可能です。
これらを組み合わせることで、単に美しいだけでなく、触れるたび、見るたびにブランドの価値を感じさせる空間が生まれるのです。
私は、この色と素材の組み合わせ方一つで、オフィスの表情がガラリと変わる様子を見るのが大好きで、まさにデザインの醍醐味だと感じています。
オフィスにおける「サイン計画」は、単に来訪者を目的地へ誘導するだけの役割に留まりません。
それは、企業のブランドイメージを視覚的に伝え、記憶に残すための重要なツールでもあるのです。
入口のロゴサインから、フロア案内、各部屋の表示、さらには非常口のサインに至るまで、すべてのサインを統一されたデザインやトーンで設計することで、オフィス全体に一貫したブランドの世界観を構築できます。
たとえば、洗練されたモダンなブランドを目指す企業であれば、ロゴタイプに合わせてフォントを選び、ステンレスやアクリルといったシャープな素材でサインを作成することが考えられます。
一方で、手作りの温かみやクリエイティブさを重視するブランドなら、木材や手書き風のフォント、あるいは遊び心のあるイラストをサインに取り入れることで、親しみやすい印象を与えることができるでしょう。
来訪者がオフィス内を移動するたびに、ブランドの個性を感じ、その世界観に引き込まれるような体験をデザインすることが大切です。
これは、来訪者の満足度を高めるだけでなく、社員にとっても日々の業務の中で自社ブランドへの愛着や誇りを再確認する機会となるはずです。

オフィスは社員が働く場であると同時に、顧客やパートナー企業、あるいは求職者といった様々な来訪者を迎え入れる「企業の顔」でもあります。
そのため、来訪者がオフィスに足を踏み入れた瞬間から好印象を抱き、快適に過ごせるような設計はブランドイメージ向上やビジネスチャンスの創出に直結します。
初めて訪れる人にとっての「分かりやすさ」と「心地よさ」を追求することが、信頼を築く第一歩となるでしょう。
来訪者がオフィスに到着して最初に目にするのがエントランスであり、対応を受けるのがレセプションです。
この「ファーストビュー」と「ファーストコンタクト」は、企業の第一印象を決定づける極めて重要な要素となります。
エントランスは、企業の顔としてブランドイメージを象徴的に表現する場であると同時に、セキュリティを確保しつつスムーズな入館を促す機能性も求められます。
例えば、会社のロゴを大胆に配置したり、ブランドカラーをアクセントにしたりすることで、視覚的に強い印象を与えることができます。
レセプションにおいては、来訪者が迷うことなく受付にたどり着けるような分かりやすい導線設計が必須です。
また、受付担当者が来訪者を温かく迎え入れ、効率的に案内できるような機能的な空間であることも重要でしょう。
来訪者が椅子に座って待つ場合、雑誌や会社のパンフレットを置くなど、ちょっとした配慮が待機中のストレスを軽減し、企業のホスピタリティを感じさせる要因になります。
私は、以前訪れたIT企業のレセプションで、受付の横にデジタルアートが流れていて、待ち時間も退屈しなかった経験があります。
このように、視覚的な楽しさや居心地の良さを追求することで、来訪者の期待感を高め、その後の商談にも良い影響を与えることができるはずです。
エントランスで好印象を抱いたとしても、その後のオフィス内の移動で迷子になったり、不要な場所が見えてしまったりすると、せっかくの第一印象が台無しになってしまいます。
来訪動線は、彼らがスムーズかつ迷うことなく目的の場所(会議室や応接室など)へたどり着けるように、シンプルで分かりやすい設計を心がけることが大切です。
サイン表示を適切に行うことはもちろん、床の色や照明の明るさを変えることで、視覚的に経路を誘導する工夫も有効な手段です。
一方で、来訪者の動線と同時に考慮すべきなのが、執務エリアで働く社員の「プライバシー」や「集中力」の確保です。
来訪者が自由にオフィス内を歩き回り、社員の業務風景が丸見えになってしまうのは、セキュリティ面でも、社員の働きやすさの点でも好ましくありません。
そのため、来訪者用の動線は執務エリアとは明確に区別し、必要に応じて間仕切りや視線を遮るデザイン(例えば、すりガラスや高さのあるパーテーションなど)を取り入れることが重要です。
お客様に「配慮されている」と感じていただく一方で、社員には「安心して集中できる」環境を提供すること。この両立こそが、オフィスデザインの腕の見せ所だと私は常々感じています。

オフィスデザインにおけるゾーニングとは、オフィスの空間を用途に応じて適切に区分けすることであり、動線設計はその区分けされた空間内での人や物の流れを最適化することです。
これらは社員の働きやすさや生産性、さらにはコミュニケーションの質に直結するため、コンセプト決定後の具体的な設計フェーズで最も時間をかけるべき重要なポイントと言えるでしょう。
近年、働き方改革の流れの中で注目を集めているのが「ABW(Activity Based Working)」という考え方です。
これは、「仕事の内容(Activity)に合わせて働く場所(Working)を選ぶ」というワークスタイルを指します。
例えば集中して書類を作成したい時は個室ブースで、チームで活発に意見交換したい時はオープンなミーティングスペースで、リラックスしてアイデアを練りたい時はカフェのような空間で、といった具合に、その時の業務内容に最適な場所を社員自身が選択できる環境を提供するのです。
ABWを導入するメリットは多岐にわたります。社員は自分の業務に合わせた最適な環境で働けるため、集中力や創造性の向上、ひいては生産性の向上に繋がると言われています。
また、異なる部署や役職の社員が偶発的に交流する機会が増えるため、コミュニケーションの活性化や新たなアイデアの創出も期待できます。
ただし、ABWは単にフリーアドレス(自由な席)にするだけではありません。
様々な種類のワークスペースを用意し、それぞれが明確な目的と機能を持つように設計することが成功の鍵となります。
この柔軟な働き方は、社員の自律性を高め、より主体的な働き方を促す現代的なオフィス環境の象徴と言えるでしょう。
ゾーニングを進める上で、ABWの考え方を参考にしながら、オフィス内にどのような「席種」をどれくらいの割合で配置し、それぞれの「ゾーン」をどのように配分するかが重要になります。
席種には個人が集中して作業する「集中ブース」、チームで議論する「ミーティングスペース」、リラックスして休憩できる「リフレッシュスペース」、電話やWeb会議用の「フォンブース」など、多種多様なものがあります。
これらを社員の働き方や業務内容に合わせて構成していきます。
ゾーン配分においては、例えば、エントランスに近い場所に会議室や応接室といった来客ゾーンを配置し、セキュリティを考慮して執務ゾーンは奥に配置するといった基本的な考え方があります。
さらに、静かに集中したいゾーンと活発にコミュニケーションを取るゾーンを物理的に離す、あるいは音響対策を施すといった配慮も欠かせません。
この席種構成とゾーン配分はオフィスのコンセプトや企業の文化、社員数、業務内容によって最適な「型」が異なります。
例えば、Web会議が多い企業であればフォンブースの数を多めに、クリエイティブな作業が多い部署には広いディスカッションスペースを確保するなど、具体的な業務シーンを想像しながら設計を進めることが求められます。
私が担当したあるお客様は意外にも「仮眠スペース」の需要が高く、それが社員の満足度向上に大きく貢献したという話を聞いたことがあります。
オフィス内の動線設計は、社員がストレスなく移動し、業務に集中できる環境を作るために非常に重要です。
動線には主に多くの人が頻繁に利用する「主動線」と、特定の目的で利用される「従動線」の二種類があります。
主動線は例えば執務スペースから会議室や休憩スペース、トイレなどへ向かう主要な通路を指し、従動線は個々のデスク周りやキャビネットへのアクセス通路などを指します。
これらの動線を設計する際には、適切な「寸法目安」を把握しておくことが不可欠です。
一般的に、主動線は複数の人がすれ違うことを想定し、最低でも1.2m以上の幅を確保することが推奨されています。
これは、人がスムーズにすれ違えるだけでなく、車椅子利用者が通行する際の基準にもなり得ます。
一方、従動線は一人が快適に通行できる程度の幅(例えば0.9m程度)を基準に設定されることが多いでしょう。
しかし、これはあくまで目安であり、実際のオフィスにおいては、社員数、家具の配置、さらには消防法などの法規制も考慮に入れる必要があります。
通路が狭すぎると人同士がぶつかりやすくなったり、心理的な圧迫感を感じたりして、結果として社員のストレス増加や集中力低下に繋がってしまう可能性もあるため、慎重な設計が求められます。
オフィスデザインを考える際、多くの人が社員の働きやすさや来訪者への印象に目が行きがちですが、実は「搬入・ストック・清掃」といった、普段あまり表に出ない「裏方」の動線設計も非常に重要です。
これら「後工程」とも言える業務の流れをスムーズに設計することは、オフィス全体の運用効率を高め、長期的なコスト削減にも貢献します。
例えば、新しい什器や備品が届いた際に、スムーズに搬入経路を確保できれば、他の業務への影響を最小限に抑えることができるでしょう。
具体的には、搬入経路を計画する際には、エレベーターや廊下の幅、ドアのサイズなどを確認し、大型の荷物でも支障なく運び込めるかを事前に検討しておく必要があります。
また、書類や備品などを効率的に保管するための「ストックスペース」は、適切な場所に十分な広さを確保することが重要です。
頻繁に使用するものは執務エリアの近くに、そうでないものは少し離れた場所に配置するなど、使用頻度に応じたゾーニングを考慮するべきでしょう。
さらに、清掃スタッフが効率的に作業できるような動線や、清掃用具を収納するスペースの確保も忘れてはなりません。
こうした見落としがちな裏方の設計までしっかりと計画することで、日々のオフィス運用が格段に快適になり、社員がより本業に集中できる環境が整うと言えるのです。
| 席種(ゾーン) | 目的・機能 | 面積配分の目安(執務スペース全体に対して) | 
|---|---|---|
| 集中ワークゾーン | 個人作業、集中業務 | 30%〜40% | 
| コラボレーションゾーン | チーム作業、ディスカッション | 20%〜30% | 
| リフレッシュゾーン | 休憩、リラックス、カジュアルな会話 | 15%〜20% | 
| フォンブース・会議室 | Web会議、電話、機密性の高い打ち合わせ | 10%〜15% | 
| その他(通路など) | 動線、予備スペース | 5%〜10% | 

オフィスデザインはコンセプトやゾーニングといった大きな枠組みだけでなく、照明、家具、装飾といった一つ一つの内装要素の選択と配置によって、その質が大きく左右されます。
これらの要素は、単に空間を構成する部品ではなく、社員の心理や行動、ひいては企業のブランドイメージに直接的な影響を与える重要なツールですえるのです。
オフィスにおける照明は、単に空間を明るくするだけのものではありません。
それは、そこで行われる作業の種類に応じて最適な「照度」を確保し、社員の集中力や快適性を高めるための重要な設計要素です。
例えば、PC作業が中心の執務エリアでは、画面への映り込みや影ができにくい均一な明るさが求められます。
一方、会議室では、プレゼンテーション時に手元の資料が見やすい明るさと、ディスカッション時にリラックスできるような調光機能が求められることもあるでしょう。
このような「作業別照度」の考え方を踏まえることで、社員の目への負担を軽減し、長時間集中できる環境を創り出すことが可能になります。
一般的なオフィスでは、執務エリアで500~750ルクス程度、会議室で300~500ルクス程度が推奨されることが多いです。
しかし、この数値はあくまで目安であり、窓からの自然光の量や、空間の用途、社員の年齢層なども考慮に入れて、きめ細やかな照明計画を立てることが大切です。
参考サイト:建築における採光基準とは?採光義務や計算方法を解説
| 作業内容 | 推奨照度(ルクス) | 推奨照明器具の例 | 
|---|---|---|
| PC作業・一般事務 | 500〜750 | グレアレスダウンライト、ベースライト、タスクライト | 
| 会議・打ち合わせ | 300〜500 | ダウンライト、ペンダントライト(調光機能付き) | 
| リフレッシュスペース | 100〜300 | 間接照明、スタンドライト、暖色系の照明 | 
| エントランス・通路 | 200〜300 | ダウンライト、ライン照明、スポットライト | 
| 集中作業(図面作成など) | 750〜1000 | タスクライト(手元灯)+全体照明 | 
オフィス家具の選定はデザイン性と機能性、そして何よりも社員の使い心地に直結するため慎重に行いましょう。
見た目の美しさだけでなく、その「耐久性」や「清掃性」といった実用的な側面を考慮することが、長期的な視点でのコストパフォーマンスを左右します。
例えば、毎日何時間も座る椅子は、長時間座っても疲れにくいエルゴノミクス(人間工学)に基づいたデザインであるか、素材は通気性が良く、汚れにくいかといった点が重要になります。
また、会議室のテーブルや休憩スペースのソファなどは、利用頻度が高く、食べ物や飲み物がこぼれる可能性も考慮し、傷や汚れに強い素材を選ぶべきでしょう。
表面が滑らかで拭き取りやすい素材や、撥水加工が施されたファブリックなどは、日常の清掃を楽にし、オフィスを清潔に保つ助けとなります。
| 素材の種類 | 耐久性 | 清掃性 | 適した用途 | 
|---|---|---|---|
| メラミン化粧板 | ◎(高) | ◎(拭き取りやすい) | デスク天板、会議テーブル | 
| 突板(突き板) | 〇(中~高) | 〇(中) | 高級デスク、会議テーブル | 
| 本革 | 〇(中~高) | 〇(専用クリーナー要) | 役員室椅子、応接ソファ | 
| 合成皮革 | 〇(中) | ◎(拭き取りやすい) | 一般ソファ、休憩スペース椅子 | 
| 布(ファブリック) | △(中) | △(染み込みやすい) | イス座面、パーティション | 
| ステンレス | ◎(高) | 〇(指紋が目立つ) | 受付カウンター、装飾 | 
| ガラス | △(衝撃に弱い) | ◎(拭き取りやすい) | パーティション、テーブル天板 | 
オフィスにおける観葉植物などグリーンやアートの配置は、単なる装飾ではなく、それ以上の効果をもたらします。
これらは、無機質になりがちなオフィス空間に心地よさや活気を与え、社員の心理的な負担を軽減し、最終的には快適性や集中力、ひいては生産性の向上に寄与すると言われています。
例えば、緑視率(視界に入る緑の割合)が高い空間では、ストレスが軽減され、集中力が増すという研究結果もあります(参考:林野庁「木材利用の推進について」など)。
観葉植物は、目にも優しく、空間に自然なアクセントを加えるだけでなく、空気の浄化作用も期待できます。
オフィスの各所に大小様々なグリーンを配置したり、壁面緑化を取り入れたりすることで、リフレッシュ効果を高めることができるでしょう。
また、アート作品は、社員の創造性を刺激し、オフィスに文化的な深みを与えます。エントランスやミーティングスペースに地域のアーティストの作品を飾ることで、企業が持つメッセージを視覚的に伝えることも可能です。
これらの要素は、単に「おしゃれ」というだけでなく、そこで働く人々の心に寄り添い、より豊かなオフィス体験を提供する重要なデザイン要素だと私は考えています。
参考サイト:オフィスにグリーンを取り入れる方法と効果とは?フェイクグリーンと本物やウォールグリーンまで解説

オフィスデザインのコンセプトが固まり、具体的な設計の方向性が見えてきたら、いよいよ「オフィス移転」という実務的なプロセスに入っていきます。
この段階では単に新しいオフィスに移るだけでなく、コンセプトに基づいたデザインを実現し、社員がスムーズに新しい環境に移行できるよう計画的かつ慎重に進めることが求められます。
特に、初めての移転となると、何から手をつけて良いか戸惑ってしまうかもしれません。
オフィス移転を成功させるためには、まず現在のオフィスの状況を徹底的に「現状調査」し、新しいオフィスに求める「必要な要件」を具体的に洗い出すことが不可欠です。
この段取りを疎かにすると、移転後に「こんなはずじゃなかった」という後悔に繋がりかねません。
現状調査では、現在のオフィスにおける不満点や課題(例:手狭である、動線が悪い、会議室が足りない、セキュリティが不十分など)を洗い出すことから始めます。
社員アンケートやヒアリングを実施し、現場のリアルな声を拾い上げることで、真のニーズが見えてくるでしょう。
これは単に「広い方がいい」といった漠然とした希望ではなく、「執務スペースは一人あたり〇平米以上確保したい」「Web会議用の個室ブースを〇室設置したい」「来客用の会議室は〇名収容できるものを〇室欲しい」といった具体的な数値や機能を盛り込むことが大切です。
また、将来的な事業拡大を見据えた「拡張性」や、社員数の増加に対応できる「柔軟性」も重要な要件となるでしょう。
これらの要件を明確にすることで、物件選びから内装設計、そして家具の選定に至るまで、すべての意思決定の軸がぶれずに済みます。
個人的な経験では、この最初の洗い出しが、移転プロジェクト全体の成功の7割を決めると言っても過言ではありません。
オフィス移転プロジェクトは、物件探しから契約、内装工事、引っ越し、そして業務開始まで多岐にわたる工程が複雑に絡み合うため、綿密な「スケジュール管理」が成功の鍵を握ります。
特に、移転を成功させる上で重要なのが「クリティカルパスの管理」です。
クリティカルパスとは、プロジェクト全体の完了時期を決定づける、最も時間のかかる一連の作業経路を指します。
例えば、新しいオフィスの契約や内装工事の設計・施工、通信インフラの整備などは、後続の作業に大きく影響するため、クリティカルパス上の重要なタスクとなることが多いでしょう。
具体的なスケジュール作成においては、まず移転希望日から逆算して、各工程にかかる期間を見積もります。
そして、最も時間がかかりそうな工程を特定し、そこを重点的に管理していくことが求められます。
例えば、内装工事の期間は、デザインの複雑さや工事範囲によって大きく変動するため、ここがクリティカルパスになることが多いです。
この期間が遅れると、その後の引っ越しや業務開始日にも影響が及んでしまうため、進捗状況を常に把握し、必要に応じて迅速な対応が求められます。
移転プロジェクトは多くの部署や外部業者との連携が必要となるため、プロジェクトマネージャーが全体を俯瞰し、遅延が発生しそうな箇所を早期に発見・対応することが非常に大切になります。
| 工程フェーズ | 主な作業内容 | 担当者(例) | 開始時期(例:移転前月数) | 完了時期(例:移転前月数) | 備考 | 
|---|---|---|---|---|---|
| 企画・準備 | 移転目的の明確化、予算策定、プロジェクトチーム組成 | 経営層、企画部門 | 6ヶ月前 | 5ヶ月前 | 新しい働き方やコンセプトの検討 | 
| 物件選定 | 現状調査、要件定義、物件選定、内見、賃貸借契約 | 企画部門、総務 | 5ヶ月前 | 3ヶ月前 | 不動産会社との連携、条件交渉 | 
| 設計・施工 | 内装デザイン、見積もり、業者選定、工事発注 | 総務、デザイン会社 | 3ヶ月前 | 1ヶ月前 | 消防法・建築基準法遵守の確認 | 
| インフラ整備 | ネットワーク、電話、電源工事、サーバー移設 | IT部門、総務 | 2ヶ月前 | 2週間前 | 各種回線の手配、通信事業者との連携 | 
| 家具・備品手配 | 家具・OA機器選定、発注、納品調整 | 総務、企画部門 | 2ヶ月前 | 1週間前 | 既存家具の処分・買取検討 | 
| 引っ越し | 引っ越し業者選定、梱包、荷物搬出入 | IT部門、総務 | 1週間前 | 移転当日 | 新旧オフィスの原状回復手配 | 
| 運用開始 | 業務開始、社員への案内、アフターフォロー | 各部門 | 移転後 | 移転後1ヶ月 | 移転後のアンケート実施、課題抽出 | 

オフィスデザインのコンセプトは、企業の業種や規模、目指す文化によって多種多様です。
しかし、いくつかの「型」に分類して考えることで、自社に最適なコンセプトを見つけやすくなるでしょう。
ここでは、代表的な企業のタイプごとに、どのような「表現軸」や「重心」を置くべきか、そのヒントを紹介していきます。
スタートアップ企業がオフィスデザインを考える際、重視すべきは「柔軟性」「コラボレーション」「スピード感」を表現することです。
創業間もない企業では、組織体制や事業内容が流動的であるため、固定化された空間よりも、変化に対応できるフレキシブルなデザインが求められます。
例えば、移動しやすいキャスター付きの家具や、ホワイトボードとして使える壁面、フリーアドレスを導入しやすいオープンなレイアウトなどが有効です。
また、限られたリソースの中で最大限の成果を出すため、社員間の活発なコミュニケーションや偶発的な出会いから生まれるイノベーションを促す空間づくりも重要です。
カフェのような共有スペースや、気軽に立ち話ができるスペースを多く設けることで、社員が自然と交流し、アイデアが生まれる場をデザインします。
弁護士事務所、会計事務所、コンサルティングファームなど、プロフェッショナルサービスを提供する企業にとって、オフィスデザインは「信頼性」「専門性」「品格」を伝える上で非常に重要な役割を果たします。
これらの企業では、顧客との重要な対話が行われることが多いため、来訪者が安心して相談できるような落ち着いた雰囲気と知的労働に集中できる環境の確保が求められます。
具体的には、重厚感のある木材や石材、モノトーンを基調とした落ち着いた色使い、そして洗練された家具を選ぶことで、プロフェッショナルとしての安定感と信頼感を表現できます。
また、顧客のプライバシーを保護するための個室の応接スペースや、機密性の高い情報を扱うためのセキュリティ対策もデザインに織り込む必要があります。
製造業や建設業など、比較的規模の大きな産業系企業の本社オフィスでは、その「企業の安定性」「技術力」「伝統」、そして「社員の一体感」をデザインで表現することが重要です。
これらの企業は多くの社員を抱え、長年にわたる事業活動を通じて築き上げてきた歴史と文化を持っています。
オフィスデザインは、そうした企業の「顔」として、社会へのメッセージを伝える場となります。
デザインの重心としては、まず企業の歴史や製品、技術力をアピールできるような展示スペースやギャラリーを設けることが考えられます。
エントランスに製品の模型を置いたり、企業の沿革をグラフィックで表現したりすることで、来訪者に企業の魅力をダイレクトに伝えることができるでしょう。
また社員の所属部署が多岐にわたるため、部署間の連携をスムーズにするための動線設計や大規模な会議に対応できる多目的スペースの設置も重要です。
企業文化を象徴するアート作品の導入や、社員の休憩を促す広々としたリフレッシュスペースを設けることで、社員のエンゲージメントを高め、一体感を醸成する効果も期待できます。
| 業種タイプ | キーメッセージ(コンセプトの核) | デザインの方向性(例) | 
|---|---|---|
| スタートアップ | イノベーション、成長、自由、コラボレーション | オープン、フレキシブル、カラフル、カジュアル | 
| プロフェッショナルサービス | 信頼、専門性、品格、顧客重視 | 落ち着いた色調、上質素材、プライベート感、機能的 | 
| 産業系(製造・建設) | 安定、技術、歴史、社会貢献 | 重厚感、耐久性、企業理念の象徴、統一感 | 
| IT・テック | 先進性、創造性、効率、多様性 | デジタル、モダン、変化対応、コラボレーション促進 | 
| クリエイティブ系 | 創造、インスピレーション、個性、遊び心 | 自由な発想、アート性、居心地の良さ、非日常感 | 
「オフィスコンセプト」と聞くと、つい難しく考えてしまいがちですが、実は「誰のために、どんな場所で、どうなってほしいか」という三つの視点に沿って考えると、驚くほどシンプルに一文で定義できるものです。
例えば、「社員が最高のパフォーマンスを発揮できる、創造性と交流が生まれる場」のように、具体的なターゲット(社員)、場所の特性(創造性・交流が生まれる)、そして期待する効果(最高のパフォーマンス発揮)を盛り込むことで、軸のブレないコンセプトが生まれます。
「ABW(Activity Based Working)は魅力的だけど、自社に合うのだろうか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
ABWは確かに生産性や創造性を高める可能性を秘めていますが、すべての企業に万能なわけではありません。導入の向き不向きを見極めるには、まず「社員の働き方や業務内容」を深く理解することが重要です。
自社のブランドをオフィスデザインに落とし込む際、特に有効なのが「色」と「素材」への翻訳です。
この手順は、まず自社のブランドが持つ「キーワード」を明確にすることから始まります。
例えば、「信頼」「先進」「温もり」「スピード」といったブランドイメージを構成する言葉をいくつかピックアップします。
次に、それらのキーワードが持つ「感情や連想されるイメージ」に合う色や素材を考えていきます。。
来訪者がオフィスに到着して最初に経験するレセプションは、企業の「第一印象」を決定づける非常に重要な場所です。
ここで好印象を与えるためには、「視覚的な魅力」「機能性」「ホスピタリティ」の3つの要素をバランスよく設計することが鍵となります。
視覚的な魅力としては、エントランスに企業のロゴを際立たせることや、ブランドカラーを効果的に使用したデザインが挙げられます。
また、間接照明を効果的に使うことで、洗練された落ち着いた雰囲気を演出することも可能です。
この記事ではオフィスデザインにおけるコンセプトの決め方から、自社のブランドを内装に落とし込む具体的な手法、そして来訪者に好印象を与えるための設計ポイントまで、幅広く解説してきました。
単なる快適な空間を作るだけでなく、企業理念を体現し、社員の生産性を高め、来訪者に強い印象を与えるオフィスは、まさに「戦略的な資産」であると言えるでしょう。
特に、ブランドを明確にし、それを色や素材、サイン計画といった具体的なデザイン要素に翻訳していくプロセスは、オフィスの個性を際立たせる上で非常に重要です。
また、ABWのような新しい働き方に対応したゾーニングや、照明・家具といった内装要素の細部にまで気を配ることで、社員が生き生きと働ける環境を創出できます。
オフィス移転という大きなプロジェクトを成功させるためには、現状の課題を正確に把握し、綿密なスケジュールを立て、専門家と連携しながら進めることが不可欠です。

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