建築・建設 2026.02.25

防火ダンパーとは?設置の基準・義務と点検基準について解説

防火ダンパーとは?設置の基準・義務と点検基準について解説
この記事のまとめ

防火ダンパーは、火災時にダクトを通じた炎の延焼を防ぐ重要な設備です。建築基準法や消防法により、防火区画や延焼ラインを貫通する箇所への設置が義務付けられています。適切な温度ヒューズの選定、定期的な作動点検、そして点検を可能にする点検口の設置が、法適合と安全維持の鍵となります。作動後はヒューズ交換やレバー操作による正しい復帰手順が必要です。

 

ビルや店舗の空調・換気設計において、防火ダンパー(FD)は火災の被害を最小限に食い止める「最後の砦」として機能します。しかし実務の現場では、どの位置に設置すべきか、あるいは点検口の配置をどうすべきかといった判断に迷うケースが少なくありません。

設置基準を誤ると建物の安全性を損なうだけでなく、完了検査や消防点検での指摘事項となり、多額の改修費用が発生するリスクもあります。

防火ダンパーの役割はダクト内を伝わる炎を物理的に遮断し、他の部屋への延焼を遅らせることにあります。その仕組みはシンプルですが、法的な設置義務や点検基準は多岐にわたります。この記事では建築基準法と消防法の両側面から防火ダンパーの設置ルールを整理し、現場で役立つ具体的な管理方法について、専門家の視点で詳しく解説します。

防火区画と延焼ラインを貫通する際の設置義務

防火区画と延焼ラインを貫通する際の設置義務

防火ダンパーの設置義務は主に火災の拡大を防ぐための「区画」という考え方に基づいています。建物内に設けられた炎を閉じ込めるための壁や床を、換気ダクトが突き抜ける場合、その穴が火の通り道にならないよう遮断しなければなりません。

このルールは人命救助や避難時間を稼ぐために、日本の建築法規において極めて厳格に運用されています。

建築基準法が定める防火区画貫通部の遮断性能

建築基準法施行令第112条に基づき、防火区画(火災の拡大を防ぐために耐火構造の壁等で仕切られた範囲)をダクトが貫通する場合、その貫通部付近に防火ダンパーを設置しなければなりません。

このダンパーには火災による加熱開始から鉄製であれば1.5ミリメートル以上の厚みを持つなど、一定の遮断性能が求められます。火災が発生した際、ダクト内の温度上昇を検知して瞬時に閉鎖することで、隣接する区画への延焼を防ぐ役割を担います。

実務上の注意点として、ダンパーは可能な限り「区画を形成する壁や床」の直近に設置する必要があります。壁から離れた位置に設置してしまうと、壁とダンパーの間のダクトが火災で消失した場合、区画に穴が開いた状態と同じになってしまうためです。設計段階で貫通位置とダンパーの設置スペースをセットで検討することが、法適合性を確保する基本となります。

消防法による特定防火対象物への付加的基準

消防法では特に不特定多数が利用する「特定防火対象物(飲食店、百貨店、ホテルなど)」において、火災予防の観点から詳細な基準が設けられています。

消防法施行令や各自治体の火災予防条例に基づき、厨房の排気ダクトが防火区画を貫通する場合や延焼のおそれがある外壁面に面する場合には、防火ダンパーの設置が厳しくチェックされます。

建築基準法が「建物の構造」を守るためのものであるのに対し、消防法は「火災の発生と拡大を未然に防ぐ」ことに重点を置いています。そのため、消火活動に支障をきたさないような配置や、定期的な報告義務が付随します。

自治体によっては国の基準より厳しい上乗せ条例がある場合もあるため、計画段階で所轄の消防署へ確認を行うことが、現場でのトラブルを避けるために重要です。

延焼のおそれのある外壁貫通部の延焼防止策

隣地境界線や道路中心線から一定の距離(1階であれば3メートル、2階以上であれば5メートル以内)にある外壁部分は「延焼のおそれのある部分」と定義されます。この範囲にある換気口やエアコンのダクト貫通部には、外部からの火を室内に入れない、あるいは室内からの火を外部に出さないための対策が必要です。

この箇所には防火ダンパー機能付きのベントキャップ(外壁用のガラリ)を設置するのが一般的です。ただし、内部の防火区画貫通部に求められるダンパーとは認定基準が異なる場合があります。外壁貫通部と内部区画貫通部のどちらの理由で設置が必要なのかを明確にし、それぞれに適した型式認定品を選定しなければなりません。

判断を誤るとやり直しのコストが発生するため、図面上で延焼ラインを正確に引くことから始める必要があります。

火災の熱を検知して閉鎖するヒューズ

火災の熱を検知して閉鎖するヒューズ

防火ダンパーの最も一般的な作動方式は、温度ヒューズによる物理的な閉鎖です。火災が発生しダクト内を流れる熱気がある一定の温度に達すると、ダンパー内部のヒューズ(可溶片)が溶け落ちます。

これにより、バネの力や羽根自体の自重によってシャッターが閉まり、空気の流れを遮断する仕組みです。

厨房排気と一般換気で異なるヒューズ設定温度

防火ダンパーの温度ヒューズには、用途に合わせて異なる設定温度が存在します。一般空調や事務室の換気ダクトには、通常72℃のヒューズが使用されます。これは、人間が生活する環境において、火災と判断できる最低限の温度ラインです。一方で、コンロなどの熱源を扱う厨房の排気ダクトに72℃を設置してしまうと、調理の熱で誤作動を起こしてしまいます。

用途別の一般的な温度ヒューズ設定

設置箇所 標準設定温度 備考
一般換気・事務室 72℃ 最も一般的な仕様
厨房排気ダクト 120℃ 調理熱による誤作動防止のため
ボイラー室・乾燥室 150℃〜180℃ 周囲温度が常に高い特殊環境

誤った温度設定は消防検査での指摘事項になるだけでなく、運用後の大きなストレスとなります。現場の熱環境を正確に把握し、適切なヒューズを選択することが、実務者に求められる重要な判断です。

煙感知器と連動して閉鎖するモーター駆動方式

熱だけでなく煙の段階で延焼を食い止めたい箇所には「防火防煙ダンパー(SFD)」が使用されます。これは温度ヒューズによる作動に加え、建物の防災盤(煙感知器)からの電気信号を受けてモーターで羽根を閉鎖する機能を備えています。

避難経路となる廊下や階段室に面する区画など、より高い安全性が求められる場所に設置されます。モーター駆動方式は、一度作動しても電気的に復帰させることが可能な機種が多いのが特徴です。

ただし、温度ヒューズも内蔵されているため、火災の熱でヒューズが切れた場合は、モーターの信号があっても部品交換が必要になります。電気工事とダクト工事が複雑に絡むため、不具合が生じた際の切り分けには専門的な知識が必要となります。

こうした複合的な設備判断が必要な章の終わりとして、複雑な現場条件に合わせた最適解を得るためには、初期に設備専門家へ相談することがコスト抑制と安全確保に繋がります。

100φ以下の小口径ダクトにおける設置要否の判定

「100φ(直径10センチ)以下の小さなダクトなら防火ダンパーは不要」という話を現場で聞くことがありますが、これは半分正解で半分は誤解を含んでいます。建築基準法上の防火区画を貫通する場合、原則としてダクトの太さに関わらず防火ダンパーが必要です。

ただし、特定の条件下(鉄筋コンクリート造の壁を貫通し、かつ一定の措置を講じる場合など)で省略が認められるケースがありますが判定は非常にシビアです。

また、消防法においては小口径であっても延焼防止の観点から設置を求められることが多々あります。安易に「細いから大丈夫」と判断せず、その壁が「何の区画なのか」を特定することが重要です。

判断に迷う場合は設置しておくのが最も安全な選択肢となります。設置コストよりも、後から壁を壊してダンパーを追加するコストの方が圧倒的に高くなるためです。

メンテナンスと消防検査をクリアするための設置位置

メンテナンスと消防検査をクリアするための設置位置

防火ダンパーを設置しただけでは、法適合とは言えません。防火ダンパーは「有事の際に確実に動くこと」が求められるため、定期的な点検が法律で義務付けられています。この点検が物理的に不可能な場所に設置してしまうと、消防検査で改善命令を受けることになります。

点検口の有効サイズとダンパーからの許容距離

防火ダンパーが天井裏に設置される場合、必ずセットで点検口を設けなければなりません。点検口のサイズは一般的に450mm×450mm以上が望ましく、作業員が手を入れてヒューズの交換や羽根の清掃ができるスペースが必要です。

点検口からダンパー本体までの距離は、腕が届く範囲である「450mm以内」に配置するのが実務上のセオリーです。

設計ミスで多いのが、点検口はあるものの、ダクトや他の配管が邪魔でダンパーに触れられないケースです。これは点検口がないのと同等とみなされます。施工前に天井裏の混雑具合を想定し、実際にメンテナンスができるルートが確保されているかを確認することが、運用開始後のトラブルを防ぐポイントです。

シャッター閉鎖を確認するための検査窓の役割

多くの防火ダンパーには外側から羽根の状態を確認できる「検査窓(透明な樹脂等の覗き窓)」が備わっています。点検時には、この窓を拭いて中を見ることにより、羽根が全開しているか、あるいは隙間なく閉じる状態にあるかを確認します。

検査窓が壁やダクトの陰に隠れて見えない位置にあると、点検の精度が著しく低下します。特に厨房排気ダクトでは、油煙によって検査窓が汚れやすいため、点検時に窓越しに状況が確認できることが重要です。

窓が見えない位置にある場合、わざわざダクトを外して中を確認しなければならず、点検費用が跳ね上がる原因となります。設置の向き(上下左右)を適切に選定し、窓が作業者側を向くように配置することが現場管理の基本です。

経年劣化による作動不良を防ぐ清掃と注油の基準

防火ダンパーの故障で最も多いのが、羽根の軸部分の錆びや汚れによる「固着」です。いざ火災が起きても、羽根が途中で引っかかってしまえば延焼を防げません。定期点検では、一度わざとヒューズを外して手動で羽根を落とし、スムーズに閉まるかを確認します。

その際、必要に応じて軸受け部分への注油や、付着した埃・油の清掃を行います。特に湿気の多い場所や調理場近くでは劣化が早まるため、通常のビルよりも高い頻度での清掃が推奨されます。

定期報告制度(建築基準法第12条)に基づく防火設備の点検では、一級・二級建築士や防火設備検査員による確認が求められます。日頃から清掃がしやすい環境を整えておくことが、検査をスムーズにパスし、建物の寿命を延ばすことに繋がります。

誤作動時の復帰手順と温度ヒューズ交換

誤作動時の復帰手順と温度ヒューズ交換

調理の熱や近隣でのボヤによる熱で防火ダンパーが作動してしまった場合、建物の換気がストップし、居室の空気がこもるなどの実害が出ます。早急な復旧が必要ですが、正しい手順を踏まないと安全装置としての機能を失ったまま運用することになり、非常に危険です。

溶断した温度ヒューズの特定と注意点

防火ダンパーが閉まった原因が「熱」である場合、内部の温度ヒューズは溶けて切れています。この状態では、羽根を無理やり手で戻しても固定されず、すぐにまた閉まってしまいます。復旧には、溶けたヒューズを新しいものと交換しなければなりません。

ヒューズはメーカーや型番、設定温度によって形状が異なるため、必ず現物を確認して適合品を調達する必要があります。予備のヒューズを防災センターなどに常備しておくのが理想ですが、ない場合はメーカーに発注することになります。

ヒューズには「公称作動温度」が刻印されているため、前述した「72℃」や「120℃」などの数値を間違えないように注意してください。誤って高い温度のものを付けると有事の際に作動が遅れ、法律違反となるだけでなく大惨事を招く恐れがあります。

手動復帰レバーの操作と羽根の開放確認

ヒューズを交換した後、または電気式ダンパーをリセットする際は、外部についている「復帰レバー」を操作して羽根を開状態に戻します。カチッという手応えがあるまでレバーを回し、羽根がロックされたことを確認します。中途半端な状態で戻すと、振動などで再び閉まってしまう「半止まり」の状態になりやすく、換気風量の低下を招きます。

復帰後は、必ず検査窓から「羽根が完全に平行(全開)になっているか」を目視してください。また、レバーの動きが重い場合は、無理に回さず内部の錆びや異物を疑う必要があります。建物の運用ルールとして、復帰作業を行ったらその日時と内容を管理日誌に記録しておくことが、管理責任を果たす上で重要です。

長期閉鎖によるダクト内の汚れとカビの対策

防火ダンパーが閉まったことに気づかず数日間放置してしまうと、ダクト内の空気が停滞し、結露によるカビや細菌の繁殖を招くことがあります。特に空調が効いている建物では、温度差によってダクト内部が湿りやすく、不衛生な状態になりがちです。復旧時には、ダクト内に異常な臭いや汚れがないかを確認してください。

もし長期間閉鎖されていた場合は、復旧後にしばらく空運転を行い、空気を入れ替えるとともに、必要であればダクトクリーニングを検討する必要があります。防火ダンパーの作動は「異常事態」のサインです。

単に羽根を戻すだけでなく、なぜ作動したのか(誤作動か、周辺の過熱か)を調査し、再発防止策を講じることが管理者の務めです。こうした運用判断が必要な箇所こそ、現場の状況に合わせて最適解が変わるため、専門的な知見を持つパートナーと連携することが運用を円滑にします。

よくある質問

100φのダクトなら防火ダンパーは不要ですか?

原則として、防火区画を貫通する場合はダクトの太さに関わらず防火ダンパーが必要です。建築基準法では、鉄筋コンクリート造の壁を100φ以下の鋼製ダクトが貫通し、かつ隙間をモルタル等で埋めるといった特定の緩和条件を満たせば省略できる場合があります。しかし、消防法や自治体の条例では「すべての貫通部に必要」とされることが多く、実務上は100φであっても設置するのが一般的です。省略できるかどうかの判断は非常に専門的であるため、安易な自己判断は避け、設計図面や所轄消防への確認が必要です。

防火ダンパーと防煙ダンパーの違いは何ですか?

防火ダンパー(FD)は「熱」に反応して炎を遮断するためのもので、温度ヒューズで作動します。対して防煙ダンパー(SD)は「煙」に反応して煙の拡散を防ぐためのもので、煙感知器と連動して電気的に作動します。避難階段の入り口など、煙による視界不良を防がなければならない場所には、両方の機能を備えた「防火防煙ダンパー(SFD)」が設置されます。記号や役割が似ていますが、法的に求められる箇所が異なるため、混同しないよう注意が必要です。

外壁のベントキャップについているダンパーで代用できますか?

外壁用のベントキャップに内蔵されているダンパーは、あくまで「延焼のおそれのある部分(外壁面)」の対策として認められるものです。建物内部の「防火区画(部屋と部屋を仕切る壁)」を貫通する場所に、ベントキャップ用のダンパーを使用することはできません。区画貫通部には、建築基準法で定められた認定を取得している専用の防火ダンパーを、壁の直近に正しく設置する必要があります。設置場所によって必要な型式が異なることを理解しておきましょう。

まとめ

防火ダンパーは、普段は目立たない設備ですが、火災時には炎の通り道を遮断して建物と人命を守る決定的な役割を果たします。建築基準法や消防法に基づく設置義務を正しく理解し、防火区画や延焼ラインといった急所を確実にカバーすることが安全な建物づくりの第一歩です。

また、設置して満足するのではなく、適切な温度ヒューズの選定や、点検口の確保、定期的な作動確認といった「維持管理」がセットで初めて機能します。

特に厨房排気のような過酷な環境や複雑なビル管理においては、初期の設計ミスが運用後の大きな負担や法的不備に繋がりかねません。設置の要否やメンテナンス方法に少しでも不安がある場合は、専門的な知識を持つ設備設計者や管理会社に相談することをお勧めします。

専門家による早期のアドバイスは無駄なコストを抑えるだけでなく、いざという時の確かな安心に繋がります。適切な管理を通じて、安全な室内環境を維持していきましょう。

参考文献

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