建築・建設 2026.01.07

テイクアウト専門店を開業方法とは?営業許可や保健所の要件について解説

テイクアウト専門店を開業方法とは?営業許可や保健所の要件について解説
この記事のまとめ
  • ・調理場の完全な区画と適切な手洗い設備の設置が営業許可取得の絶対条件となります。
  • ・販売品目により飲食店営業以外に菓子製造業などの許可が必要になる場合があります。
  • ・メニューを絞り込み、視認性と受け渡しやすさを重視した外観デザインを構築しましょう。
  • ・内装工事着手前に保健所へ図面を持ち込み、設備要件の適合判定を受けることが重要です。

 

飲食店を開業する際、初期投資を抑えやすく少人数で運営できるテイクアウト専門店は非常に魅力的な選択肢です。しかし、客席がない店舗であっても、食品を調理・販売する以上、保健所の厳しい審査をクリアし営業許可を取得しなければなりません。

テイクアウト専門店の開業では、店舗のコンセプト作りと並行して、法的な設備基準を正しく理解することが成功の鍵となります。本記事では、保健所が求める具体的な設備要件から、メニューによって異なる許可の分類、さらには集客力を高める外観デザインまで、実務に即して体系的に解説します。

開業にはコンセプト設計と法適合の両立が不可欠

開業にはコンセプト設計と法適合の両立が不可欠

テイクアウト専門店を開業するにはビジネスモデルの構築と並行して、食品衛生法に合致した施設作りを行う必要があります。イートインがない分、効率的な動線と法的な調理場の独立性をどう両立させるかが重要です。

提供するメニューを最小限に絞り込むことは厨房機器の購入コストを抑え、狭いスペースでの運営効率を最大化させるために不可欠です。メニューが多岐にわたると、それだけ必要な調理器具や保管設備が増え、限られた厨房面積を圧迫してしまいます。

例えば、唐揚げ専門店であればフライヤーと保温設備に特化でき、作業動線が単純化されます。これにより、一人でのオペレーションが可能になり、人件費の抑制にも繋がります。開業時は一つの商品で勝負できる構成にすることが、資金面と運営面の両方で有利に働きます。

視認性と受け渡しやすさを基準に物件を選定する

テイクアウト専門店にとって、物件選びの基準は通行人から中が見えるかと立ち止まりやすいかの2点に集約されます。客席がないため、お客様は店頭のわずかなスペースで注文と受け取りを行うことになります。歩道が極端に狭い場所や、段差が激しい物件は避けるのが賢明です。

また、看板を出すスペースが十分にあり、遠くからでも何を売っているかが認識できる視認性が重要です。路面店であっても、間口が極端に狭い場合はメニューボードの配置が困難になるため、受け渡しの窓口を広く取れるかどうかを内装図面作成前に確認しましょう。

物件契約からオープンまで最短1ヶ月のスケジュールで動く

小規模なテイクアウト専門店の場合、物件契約から内装工事、保健所の検査を経てオープンするまで、最短で1ヶ月程度のスケジュールで動くことが可能です。ただし、これは保健所への事前相談がスムーズに進んだ場合であり、設備の手直しが発生すれば工期は延びます。

一般的な流れとしては、物件内覧と並行してラフ図面を作成し、契約直後に保健所へ相談します。その後2週間程度で工事を終わらせ、完了直前に保健所の検査予約を入れるスケジュールが理想的です。特に中古物件を居抜きで借りる場合は、既存設備が現在の基準を満たしているかを確認する時間を必ず確保してください。

営業許可の核は調理場の区画と手洗い設備

保健所から営業許可を得るための最大のハードルは、調理場の独立性と清潔さの担保にあります。テイクアウト専門店では、お客様が直接調理場に立ち入らない構造であっても、外部環境からの遮断が厳密に求められます。

扉や仕切りで調理場を外部と完全に遮断する

食品衛生法に基づき、調理場は客だまりや外部通路と、壁や扉で明確に区画されていなければなりません。テイクアウト専門店のカウンター窓口も、調理中以外は閉鎖できる構造、あるいはカウンター越しに異物や虫が侵入しないカウンターの立ち上がりや垂れ壁が必要になるケースが多いです。

○改正食品衛生法

第54条 都道府県は、公衆衛生に与える影響が著しい営業(食鳥処理の事業を除く。)で
あつて、政令で定めるものの施設につき、厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で、
公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない。

引用元:食品衛生法施行規則|厚生労働省

自治体によっては、調理場に必ずスイングドアや完全な仕切り扉の設置を求められるため、オープンなカウンターを希望する場合でも、保健所との事前協議によって許容範囲を確認しておくことが重要です。

二槽以上のシンクとLサイズ以上の手洗い器を設置する

食器や器具を洗浄するためのシンクは、原則として二槽以上が必要です。さらに、調理従事者が手を洗うための専用の手洗い器を、器具洗浄用とは別に設置しなければなりません。手洗い器は、Lサイズ以上の大きさで、水栓がレバー式や自動センサー式などの非接触型であることが現在の一般的な基準となっています。

これらの水回り設備は、一度配管工事を終えてしまうと移動や増設が極めて困難です。中古の居抜き物件で小さな手洗い器しか付いていない場合は、検査に合格しないリスクがあるため、早い段階で水回りの改修費用を見積もっておく必要があります。

床や壁は清掃しやすく耐水性のある素材で仕上げる

調理場の内装材は、汚れが落ちやすく、水洗いや消毒に耐えられる素材で仕上げる必要があります。床はコンクリート打ち放しではなく、耐水性のある長尺シートやタイル仕上げが望ましいです。壁も同様に、不燃性があり、油汚れを拭き取りやすいキッチンパネルやタイルを採用するのが一般的です。

特にテイクアウト窓口付近は、外部からのホコリが入りやすいため、清掃頻度が高くなります。隅の部分に汚れが溜まらないよう巾木をR形状にするなど、衛生管理を容易にする工夫がなされているかが、検査官の印象にも影響します。

販売品目により飲食店営業以外の許可が必要

テイクアウト専門店であっても、販売するものの製造工程や保存状態によって、別の製造業などの許可が求められることがあります。

販売品目の例 必要な許可の名称 注意点
お弁当、唐揚げ、惣菜 飲食店営業許可 調理してすぐ提供する場合に適用される一般的な許可です。
パン、ケーキ、クッキー 菓子製造業許可 店内で製造し、袋詰めして販売する場合に必須となります。
アイスクリーム(自家製) アイスクリーム類製造業許可 原材料を配合して凍結させる工程がある場合に必要です。

パンやケーキの製造販売には菓子製造業許可を取得する

店内で生地から作り、パンや焼き菓子、生ケーキを販売する場合は菓子製造業許可が必要です。飲食店営業許可でもサンドイッチなどは作れますが、パンそのものを焼いて販売するような業態は、菓子製造業の範疇となります。

この許可を取得する場合、飲食店営業許可よりも区画の厳格さや原材料の保管場所について厳しくチェックされる自治体が多いです。パンを焼く場所とサンドイッチの具材を調理する場所を明確に分けるよう指導されることもあるため、事前にメニュー構成を確定させておく必要があります。

生肉や生魚を扱う場合は販売業ごとの許可を併設する

テイクアウト専門店で、調理品だけでなく生の精肉や刺身用の柵をパック詰めして販売する場合は、飲食店営業許可とは別に食肉販売業魚介類販売業の許可が必要になります。これは調理工程と未調理品の販売工程で、衛生基準の考え方が異なるためです。

特にローストビーフを調理して売るのと、生の塊肉をカットして売るのでは必要な許可が分かれます。これらを一つの店舗で行う場合、それぞれの許可基準を満たす設備を併設しなければならず、厨房面積の確保が課題となります。

複数許可が必要な場合は広めの調理スペースを確保する

飲食店営業と菓子製造業を両立させる二重許可を目指す場合、調理場内にそれぞれの作業区域を設ける必要があります。同一の作業台で同時並行して作業することは交差汚染のリスクから禁止されることが多いため、広めの作業スペースが必要です。

自治体によっては、シンクの数や冷蔵庫の隔離方法について、単独許可よりも厳しい上乗せ基準を設けていることがあります。運用に合う最適解を早期に見つけるためにも、複数の業種をまたぐ場合は、初期に専門家へ相談してゾーニングを確定させることが重要です。

外観は3秒で何屋か伝わる視覚デザインにする

外観は3秒で何屋か伝わる視覚デザインにする

テイクアウト専門店にとって、外観はメニュー表であり看板そのものです。客席がない分、お客様は外装だけでその店の価値を判断し、購入の意思決定を行います。

商品の魅力を伝える大型サインやタペストリーを掲げる

通行人は歩きながら店舗の横を通り過ぎる数秒の間にニーズに合うかを判断します。文字だけの小さな看板よりも、商品の写真や焼きたて、手作りといったフレーズが入った大型のタペストリーの方が直感的に伝わります。

10坪以下の店舗であれば、建物全体の色彩をロゴマークと統一させ、視認性を高める工夫が必要です。テイクアウトは衝動買いの要素が強いため、遠くからでも美味しそうと感じさせる色彩計画と、商品の実物が見えるショーケースの配置が集客の要となります。

カウンターの高さを1000mm前後に設定し買いやすさを生む

お客様が注文し、商品を受け取るカウンターの高さは、一般的な成人の肘の高さに近い1,000mm前後に設定するのが最適です。これより低いと腰をかがめることになり、高すぎると威圧感を与えてしまいます。

また、カウンターの奥行きにも注意が必要です。狭すぎるとお釣りや商品の受け渡しが不安定になり、広すぎるとお客様との距離が遠くなります。決済端末を置くスペースも考慮し、250mmから400mm程度の有効幅を確保するのが実務的な設計です。

暖色系の照明で食品の鮮度と温かみを演出する

食品を扱う店舗では、照明の色温度が商品の見栄えを大きく左右します。テイクアウト専門店では、電球色から温白色の暖色系照明をメインに使うことで、料理をより美味しそうに見せる効果があります。

逆に青白い昼光色の照明は、食品の赤みを消してしまい、不健康な印象を与えかねません。夜間の営業がある場合は、スポットライトで窓口やショーケースの商品を強調し、そこだけ温かな空間が浮かび上がるように演出すると、夜の帰宅客を自然に呼び込むことができます。

工事着手前に保健所へ図面の相談を

工事着手前に保健所へ図面の相談を

内装工事が始まってから保健所に許可が出せませんと言われるのは、開業における大きな損失です。全ての工程において行政との意思疎通を最優先しましょう。

ラフ図面の段階で設備要件の適合判定を受ける

不動産の契約前、あるいは内装業者への正式発注前の段階で、ラフ図面を保健所に持ち込みましょう。この場所にこのサイズのシンクを置くといった計画を伝え、その自治体の基準に適合しているかの図面チェックを受けます。

自治体や担当官によって、区画は完全に閉まらなければならないのか、あるいはカーテンでも良いのかなど、解釈に幅があるのが実情です。早い段階でそのローカルルールを把握しておくことが、無駄な工事費用の発生を防ぐ唯一の方法です。

施設検査当日は設備の動作確認を済ませて立ち会う

工事が完了し、保健所の職員が現地調査に来る施設検査の当日は、すべての設備が実際に動く状態で立ち会わなければなりません。蛇口から水が出るか、冷蔵庫の温度計が動作しているか、手洗い器に石鹸液が備え付けられているかなどがチェック項目です。

万が一、検査で不適合が出た場合、再検査を受けるまで営業許可証は交付されません。これは開店日の延期に直結するため、検査の数日前にはクリーニングを済ませ、当日のチェックリストを自主作成してシミュレーションを行っておくことが重要です。

食品衛生責任者は1店舗に1名必ず配置する

営業許可を取得する必須要件として、食品衛生責任者の資格を持つ人を、店舗ごとに1名配置しなければなりません。調理師や栄養士の免許を持っていれば自動的に資格者となれますが、持っていない場合は各都道府県の食品衛生協会が開催する講習会を受講する必要があります。

この講習会は予約が埋まりやすく、時期によっては1ヶ月待ちということもあります。許可申請時に受講済みであることが求められるため、物件探しを始めるのと同時期に講習の予約を確認し、オープンまでに確実に資格を確保しておきましょう。

よくある質問

Q. 客席がないテイクアウト専門店なら保健所の検査は緩くなりますか?

A. 調理場の衛生基準はイートイン店と同等の厳しさが求められます。
客席の有無にかかわらず、食品を調理する空間の基準は一律です。むしろ、テイクアウトは調理から喫食までの時間が長く、食中毒のリスクが高まるため、調理場の清掃性や手指消毒の徹底については、通常の飲食店以上に厳格な指導がなされるケースもあります。

Q. 自宅のキッチンをそのまま営業用として使用できますか?

A. 居住用キッチンとの完全な分離が営業許可の前提条件となります。
家庭用と営業用の調理場を兼用することは認められません。営業用の調理場は、生活空間から壁や扉で完全に区切られた専用の空間である必要があります。自宅を改修する場合は、専用の給排水や換気設備の増設工事が必要になるため、初期段階で専門家へ構造的な相談をすることをお勧めします。

Q. 営業許可の申請から実際に許可が下りるまでどのくらいかかりますか?

A. 申請から許可証の交付までは2〜3週間の期間を余裕を持って確保してください。
保健所へ書類を提出した後、数日〜1週間後に現地での施設検査が行われ、適合と判断されてから数日で許可証が交付されます。この許可証が手元に届くまでは無許可営業となるため、SNSでの開店告知やチラシ配布のスケジュールは、検査日の1週間後以降をターゲットにするのが実務的な判断です。

まとめ:理想の店舗を実現するための次のアクション

テイクアウト専門店の開業は、初期投資の低さというメリットがある一方で、限られた空間に保健所の厳しい基準を落とし込む難しさがあります。調理場の区画と手洗い設備の適正配置という核となる要件をまず押さえ、メニューに合わせた正しい許可の種類を選択してください。

理想のオープンを迎えるためのアクションは、まず保健所の窓口へ図面を持って相談に行くことから始まります。判断の分岐点が多い法規整理や狭小スペースの最適レイアウトについては、初期段階で専門家へ相談することで、行政協議の円滑化や追加コストの抑制が可能になります。正しいステップを踏んで、魅力的なテイクアウト専門店を実現させましょう。

参考文献

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