
学校環境衛生基準とは?換気基準や最適な換気環境について解説
2026.02.06
換気設備

都市計画法とは?34条11号・12号や開発許可などポイントを解説
2026.02.04
建築・建設

店舗を建築・建設したい方のためのガイドライン
2026.01.30
建築・建設
建築・建設 2025.12.24

オフィスビルや商業施設、学校、ホテルなどを管理していると「うちの建物はビル管法の対象なのか」「何をどこまで測ればいいのか」と迷うことが多いはずです。建築物衛生法は対象建物に対して具体的な環境基準と管理義務を定めており、知らずに運用すると行政指導や改善命令のリスクが出ます。
この記事では法律の目的から特定建築物の判定、基準内容、管理者の義務、実務の進め方までを、誤解のないよう順に解説します。
目次

建築物衛生法(ビル管法)は、多数の人が利用する建物で衛生的な環境を確保するための法律です。
空気・水・清掃・害虫防除などの管理事項を定め、利用者の健康被害を防ぐことが目的です。対象は「特定建築物」と呼ばれる一定規模・用途の建物で、所有者や管理権原者に維持管理義務を課しています。
※法令名:建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)/厚生労働省所管(現行法)
この法律が作られた背景は戦後にオフィスや商業施設などの大規模建築物が増え、換気不足や水質悪化、害虫発生などが社会問題化したことです。
そこで「一定規模以上の建物は、設備任せにせず計画的に維持管理しよう」という枠組みとして整備されました。現在も同じ考え方で、設備の性能だけでなく、運用・測定・記録まで含めた管理を求めています。

特定建築物かどうかは「用途」と「延べ面積」で決まります。
対象に当たると、建築物環境衛生管理基準に従った維持管理、定期測定、管理技術者の選任などが義務化されます。逆に対象外でも、努力義務として基準に沿う管理が推奨されている点は押さえておきましょう。
特定用途とは、法律で「多数の者が使用・利用する用途」として政令で列挙されているものです。代表例は以下です。
用途の線引きは政令・手引きで細かく示されています。用途が複合する建物は面積按分や区画で判定が分かれるため、早期に整理することが実務上のポイントです。
面積基準は用途ごとに異なります。よく使われる目安を表にまとめます(最終判断は政令・自治体の運用で確認してください)。
| 用途の例 | 特定建築物となる延べ面積の基準 | 実務上の読み方 |
|---|---|---|
| 事務所、店舗、百貨店、ホテル、興行場など多くの用途 | 3,000㎡以上 | 延べ面積が基準を超えた時点で対象 |
| 学校(特定用途に該当する学校等) | 8,000㎡以上 | 学校用途は利用者特性を踏まえ基準が高い |
| 共同住宅など | 用途により整理 | 該当用途に当てはめて判断 |
「延べ面積」は建築基準法の床面積の考え方に沿って算定します。吹抜け・屋外開放部・機械室などの扱いで面積が変わる場合があるため、判定が微妙な案件では計画初期に保健所へ相談しておくと、後の手戻りを防ぎやすくなります。
複合用途(例:低層が店舗・上層が事務所)の場合、特定用途に供する部分の面積が基準を超えるかどうかで判断します。たとえば建物全体が3,000㎡以上でも、特定用途部分が小さければ対象外になることがあります。逆に、特定用途部分だけで基準を満たすなら対象になります。
この境界は区画計画やテナント面積の確定タイミングで揺れやすく、計算の前提が変わると対象判定も変わります。用途構成が流動的な計画では、早めに面積根拠を固め、行政に確認するのが安全です。

建築物環境衛生管理基準は、特定建築物で維持すべき「衛生の最低ライン」を具体的に示した基準です。空気・水・排水・清掃・害虫防除など幅広く、設備性能だけでなく日常管理と定期測定がセットになっています。
空気環境は、空気調和設備や機械換気設備を設けている居室で、基準におおむね適合する状態を保つことが求められます。主な基準項目は次のとおりです。
| 項目 | 基準値の考え方(居室) |
|---|---|
| 浮遊粉じん | 0.15 mg/㎥ 以下 |
| 一酸化炭素 CO | 6 ppm 以下 |
| 二酸化炭素 CO₂ | 1,000 ppm 以下 |
| 温度 | 18〜28℃(外気との差も過大にしない) |
| 相対湿度 | 40〜70% |
| 気流 | 0.5 m/秒 以下 |
| ホルムアルデヒド | 0.1 mg/㎥ 以下 |
測定は各階の居室中央部で行い、浮遊粉じん・CO・CO₂・温湿度・気流は「2か月以内ごとに1回」が原則です。
外気導入がない家庭用エアコンは空気調和設備に該当しない、など設備の定義も細かいので、現場の設備構成を確認したうえで測定計画を立てます。
飲料水を貯水槽などで供給している場合、水道法の水質基準に適合する水を供給し、貯水槽清掃や水質検査を行う必要があります。
| 管理対象 | 主な基準・措置 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 給水栓の残留塩素 | 遊離残留塩素0.1mg/L以上を保持 | 7日以内ごと |
| 貯水槽の点検・清掃 | 汚染防止のための点検、清掃 | 清掃は1年以内ごと |
| 飲料水の水質検査 | 一般細菌・大腸菌・濁度など | 原則6か月ごと |
排水設備は、詰まりや漏出を防ぐための点検・清掃が必要で、排水設備の清掃を「6か月以内ごとに1回」行う扱いです。井水利用や雑用水利用がある場合は、別の検査項目や頻度が加わるので、建物の水源構成に応じて整理します。
清掃は「日常清掃」と「6か月以内ごとの大掃除」を計画的に行い、廃棄物処理も衛生的に管理します。ねずみ・昆虫などの防除は、発生源・侵入経路の調査を「6か月以内ごとに1回」行い、その結果に基づいて予防・駆除措置を取ることが求められます。
薬剤を使う場合は医薬品・医薬部外品として承認されたものに限るなど、安全性への配慮も基準に含まれています。

特定建築物の所有者や維持管理権原者は基準に沿った管理を継続し、その証拠として測定・清掃・点検の記録を残す義務があります。管理は「やっているつもり」では認められにくいため、記録と体制整備が実務の要になります。
空気環境、水質、排水、清掃、防除などの測定・点検を規定頻度で実施し、結果を帳簿として保存します。保存年限は手引きや自治体指導で運用が示されますが、少なくとも次回検査や立入に耐えられる形で継続保管するのが実務上の安全策です。
特定建築物では、一定資格を持つ「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」を選任し、管理計画の作成・指導監督を受ける必要があります。これは、空気・水・害虫など多分野の管理を統合し、基準に適合する運用を確実にするための仕組みです。
清掃や設備点検、防除などを外部委託すること自体は一般的ですが、委託しても法的責任は管理権原者側に残ります。
委託先の作業範囲、測定頻度、報告形式を契約時に明確化し、帳簿に反映できる体制を作ることが重要です。特に複合用途ビルやテナント入替が多い施設は、管理境界が曖昧になりやすいため、初期に専門家へ相談して整理しておくと手戻りを減らせます。

建築物衛生法の本文は枠組みを定め、具体の用途・面積・測定方法・頻度は施行令・施行規則・告示で細かく規定されています。実務では「どの条文が自分の建物に当たるか」を読み解く作業が必要です。
施行令は特定建築物の用途の範囲、面積基準、対象から外れる例外などを定めています。用途判定(特定用途かどうか)と面積判定(延べ面積が基準を超えるか)の根拠は、基本的に施行令で確認します。
施行規則や告示は、空気環境や水質の測定位置、測定器、測定回数、帳簿記載事項など、現場で必要になる詳細ルールを規定します。たとえば空気環境の測定は、居室中央の床上75〜150cmで行うなど、測定条件が具体的に決まっています。
迷いやすいのは「面積の算定」「用途の読み替え」「テナント境界」「設備の定義」です。たとえば外気導入のない空調が空気調和設備に当たらないなど、設備の定義を間違えると測定計画がズレます。判断が割れる場合は、保健所やビル管理士に事前確認するのが現実的です。

基準に適合していないこと自体が直ちに罰則になるわけではありませんが、衛生状態が悪く健康被害のおそれがある場合は行政が立入・改善命令・使用停止などの措置を取れます。命令違反時には過料などの罰則があり得るため、指導段階での是正が重要です。
行政(都道府県知事や保健所)は、特定建築物に立ち入り、帳簿や設備の状況を確認できます。問題があればまず指導が入り、改善が見られない場合に勧告・命令へ進む流れです。緊急性が高い場合は、一時的な設備使用停止や制限が命じられることもあります。
罰則の対象は、行政命令に従わない場合など、法律上の義務違反が中心です。詳細な金額や適用は自治体運用によるため、ここでは「対象になり得る行為」を整理します。
| 行為の類型 | 具体例 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 基準に反する衛生状態の放置 | 空気や水質の基準超過を是正しない | 管理権原者 |
| 行政の改善命令違反 | 改善命令・使用停止命令に従わない | 管理権原者 |
| 帳簿・報告の不備 | 測定記録を作らない、虚偽記載 | 管理権原者 |
罰則の有無だけでなく、命令が出ると施設運営そのものが止まるリスクがあるため、「指摘が出ない管理体制」を作ることが実務上の最大の防御になります。
日常管理で重要なのは、①測定・清掃・防除を計画どおり回す、②結果の帳簿化と保管を徹底する、③異常値が出たら調整・再測定まで実施する、の3点です。空調や給水は設備更新だけでなく運転調整で改善する場合も多いので、異常時の対応手順をマニュアル化しておくと運用ブレを抑えられます。

対象判定ができたら年間計画を作り、実測・点検・記録を回していくことが基本です。担当者が替わっても同じ品質で運用できるよう、スケジュールと役割分担を明確にすることがポイントになります。
まず、空気環境(2か月ごと)、飲料水(7日ごとの残留塩素チェック、6か月ごとの水質検査)、排水清掃(6か月ごと)、大掃除(6か月ごと)、害虫調査(6か月ごと)など、基準頻度をカレンダーに落とします。
次に、設備保守やテナント工事などのイベントと重ね、繁忙期を避けた実行可能な日程に調整します。測定は外部委託でもよいですが、帳簿作成の責任者を建物側で明確にしておくと抜け漏れが減ります。
複数テナントが入る建物では、清掃範囲や換気運用、防除作業の立入などでトラブルが起きやすいです。共用部と専有部の管理境界、作業時の周知方法、測定結果の共有範囲を運用ルールにしておくと、行政検査での説明もしやすくなります。特に用途変更やテナント入替で特定用途面積が変わる場合は、対象判定の見直しも含めて早期に整理しましょう。
原則として特定建築物の義務対象にはなりません。ただし、特定建築物以外でも多数が利用する建物は、建築物環境衛生管理基準に従った維持管理に努める「努力義務」があります。
運用上は、義務ではなくても同等の管理を行っておくと、クレームや健康トラブルの予防になります。
学校用途は、利用者の属性(児童・生徒など)や管理体制の特性を踏まえ、一般の事務所・店舗より大きい面積で対象化される整理になっています。具体の面積基準は政令で定められています。
ただし、学校でも研修施設など特定用途に当たるかどうかの判定が必要です。
特定用途に供する部分の面積が基準を超えるかで判断します。ビル全体が大きくても、特定用途部分が小さい場合は対象外になり得ます。
用途割合が変わる計画では、面積根拠を図面段階で明確にすることが重要です。
特定建築物に該当する建物は、建築物環境衛生管理技術者の選任が義務です。
対象外の建物では義務ではありませんが、同等の知識を持つ担当を置くことが望ましいとされています。
改修で用途や面積が変わり、特定用途部分が基準を超える場合は、新たに特定建築物としての管理義務が発生します。
また空調や給水設備を更新した場合、測定や清掃頻度に影響するため、改修後の管理計画を見直しておくと安全です。
建築物衛生法(ビル管法)は、多数の人が利用する一定規模の建物で、空気・水・清掃・害虫防除などの衛生環境を維持するための現行法です。事務所や店舗などは延べ面積3,000㎡以上、学校は8,000㎡以上など、用途別の面積基準で「特定建築物」かどうかが決まり、対象になれば建築物環境衛生管理基準に沿った維持管理と定期測定、管理技術者の選任、記録保存が必要になります。
まずは自施設の用途と延べ面積から対象判定を行い、空気環境・水質・清掃・防除の年間計画を作って運用に落とし込んでください。用途の読み替えや面積算定、テナント構成などで判断が分かれる案件では、計画初期に保健所やビル管理士へ相談しておくと、後の手戻りや行政指導リスクを抑えやすくなります。状況に合わせた管理体制づくりを進めたい場合は、早めに専門家へ相談して整理するのがおすすめです。

2026.02.06
換気設備

2026.02.04
建築・建設

2026.01.30
建築・建設