内装デザイン 2025.10.17

オフィス移転の段取りや行政への手続きや広報活動についての流れを解説

オフィス移転の段取りや行政への手続きや広報活動についての流れを解説

オフィス移転の担当者に任命されたとき、目の前に広がる複雑なタスクの多さに思わず立ちすくんでしまう人も多いのではないでしょうか。

移転は単にデスクやPCを運び込む作業ではなく、会社の未来を形作る一大プロジェクトです。しかし、そのプロセスは多岐にわたり準備期間も長いため、何から手をつけていいのか、どこに落とし穴があるのかが見えにくいのが実際のところです。

この記事はそんな不安を抱える方に向けて、オフィス移転の全体像をしっかり把握し、計画的にプロジェクトを進められるように作成しました。特にオフィス移転を成功に導くための具体的な段取り、適切なスケジュール感、そして初期段階で絶対にやるべきことを解説していきます。

オフィス移転の段取りとスケジュール

オフィス移転の段取りとスケジュール

オフィス移転を成功させる鍵は、12ヶ月前から着手する綿密な計画と、「企画・準備」「物件選定・契約」「設計・工事・引越し」「各種手続き」の4つのフェーズを段階的に進めることです。特に移転目的の明確化スケジュール策定が初期の最重要タスクとなります。

なぜオフィス移転は長期的なスケジュールになるなのか

なぜオフィス移転には半年ではなく1年以上の長期スケジュールが必要なのでしょうか。

その最大の理由はプロジェクトの途中で発生する可能性のある「手戻り(やり直し)」のリスクを最小限に抑えるため、そして、最も時間がかかる「物件選定」「内装設計」「旧オフィスの解約」という三つの大きな関門を余裕をもってクリアするためです。

例えば、物件を選定し内装業者との打ち合わせに入ってから「やっぱりコンセプトが違った」となると、設計を一からやり直さなければなりません。このやり直しは数カ月の遅れにつながり、その結果として、旧オフィスの解約期限が迫り、賃料の二重払いが発生する事態も実際に起こりがちです。

多くの専門企業が移転完了までに12ヶ月から15ヶ月を推奨しているのは、こうしたプロジェクト特有の不確実性を吸収する時間を確保するためだと理解しておきましょう。特に従業員が多い企業や、内装にこだわりたい場合は、時間がかかることを前提に計画を立てることが、ストレスのない移転を実現する最善の方法です。

移転プロジェクトの4つのフェーズ

オフィス移転プロジェクトは、大きく分けて四つの段階を経て進行します。まず、移転の目的や予算を決める「企画・準備期(12ヶ月前~)」からスタートし、次に新しく入居するビルを決める「物件選定・契約期(9ヶ月前~)」に進みます。

物件が決まったら、内装業者と具体的なオフィス空間を作り上げる「設計・工事期(6ヶ月前~)」があり、最後に実際に引っ越しを行い、社内外への手続きを完了させる「移転・手続き期(3ヶ月前~)」を迎えます。

この四つのフェーズは、それぞれが前のフェーズの結果を受けて成り立つ連動性の高い構造をしています。特に初期の「企画・準備期」でどれだけしっかりと準備し、移転の目的を明確にしておくかが、後のすべての工程の効率と成果を決定づけると言っても過言ではありません。

スケジュール遅延を避けるためのマイルストーン

長期プロジェクトであるオフィス移転では、全体のスケジュールを把握するだけでなく絶対に遅らせてはいけないマイルストーン(節目を明確にしておくことが極めて重要です。最も重要なマイルストーンは旧オフィスの解約通知期限であり、これが一般的に6ヶ月前と定められていることが多いです。

この期限を逃すと、新オフィスへの入居後も旧オフィスの家賃を払い続けなければならないため、最優先で確認すべきタスクだと心に留めておいてください。

その他にも、「新オフィスの物件契約完了日」「内装業者の選定完了と設計開始日」「引越し業者との契約締結日」なども重要なマイルストーンです。これらの節目をリスト化し、期日から逆算して各タスクの担当者と期限を割り当てることで、全体の進行状況を一目で把握できるようになり、遅延の兆候を早期に発見できるでしょう。

計画通りに進める努力よりも、計画から遅れそうになったときにどうリカバリーするかを考えることの方が、実は担当者にとってずっと大切です。

参考記事:原状回復とは?店舗やオフィスでの対応範囲やガイドラインについて解説

移転計画初期は「何をやる」か

移転計画初期は「何をやる」か

オフィス移転プロジェクトを上手く進行させるには、企画段階でのオフィス移転の目的設定プロジェクトチーム組成にかかっています。初期段階で「なぜ移転するのか」を明確にし、全社的なコンセンサスを得た上で部門横断的なプロジェクト体制を構築することが最も重要です。

オフィス移転の目的を明確化

オフィス移転を成功させるために最も重要なステップは、移転の目的を明確化することです。ただ「手狭になったから」「家賃が高いから」という理由だけでは、物件選びや内装設計がブレてしまい、結局「移転したけど何も変わらなかった」ということになりかねません。

移転はあくまで経営課題を解決するための手段であると捉えるべきでしょう。たとえば、「若手人材の採用競争力を高めるため、ブランドイメージに合う立地に移る」「部署間のコミュニケーションを促進するため、オープンスペースを広くとったレイアウトにする」など、具体的なゴールを設定すると良いでしょう。

このように経営課題の解決に焦点を当てた目的設定を行うことで、その後の物件選定の評価基準、内装デザインのコンセプト、ひいては予算配分の優先順位といった、全ての意思決定の土台が確立されるのです。

担当者一人の考えで進めるのではなく、経営層や主要部門の責任者を巻き込んで、この「核となる目的」を共有し、文書化しておくことが不可欠だと言えます。

参考記事:オフィス内装の作りを紹介!デザインと空間設計について解説 

プロジェクトチームの組成と部門別タスクチェックリスト

移転作業は、総務部門の方だけで完結するものではありません。人事、情報システム、広報、経理など、多くの部門が関わる部門横断的なプロジェクトです。

そのため、移転の初期段階で各部門の代表者からなる「移転プロジェクトチーム」を組成し、役割と責任範囲を明確にすることが重要になります。たとえば、情報システム部門の担当者は「ITインフラの要件定義」と「機器の移設計画」に責任を持ち、人事部門の担当者は「従業員への影響調査」と「新オフィスの利用ルール策定」を担当するといった具合です。

このチーム体制を確立することで、タスクの抜け漏れを防ぎ、部門間の連携不足による遅延リスクを回避できます。実際には、自分の通常業務と兼任になるケースが多いため、タスクを細分化し、それぞれの担当と期限を明確にしたチェックリストを共有することが、スムーズな進行の鍵を握ります。

移転初期の部門別タスクチェックリスト

部門横断的なプロジェクトを円滑に進めるため、移転初期段階で各部門が必ず着手すべき具体的なタスクを一覧にしました。

部門 主なタスク(移転初期:12ヶ月前~) 目的・備考
経営層・企画 移転の最終目的・コンセプトの決定 移転を戦略的な投資と位置づける
移転プロジェクトチームの発足と承認 責任体制と意思決定権限の明確化
予算の承認と予備費の設定 プロジェクト全体の財務基盤を確立
総務・施設管理 旧オフィスの賃貸契約書確認(解約通知期限) 最大のリスク(賃料二重払い)を回避
プロジェクトスケジュールの策定 全タスクの洗い出しとマイルストーン設定
オフィス仲介業者・内装業者(PM)の選定開始 専門家による物件・設計のサポート体制構築
新オフィスの面積・レイアウト要件定義 従業員数や働き方を考慮した広さの決定
人事 従業員への影響調査(通勤、福利厚生) 従業員の不安解消とエンゲージメント維持
従業員向け新オフィスのコンセプト共有 移転への期待感を醸成
増員計画に基づいた新オフィスの必要面積算定 将来的な成長を見越した物件選定に反映
情報システム ITインフラの要件定義(ネット回線速度、電話) 業務継続性・生産性確保のため
新オフィスでのIT機器配置計画の検討開始 ネットワーク配線工事に連携
広報 移転に伴う社内外広報計画の立案 顧客・取引先・メディアへの適切な情報伝達

移転費用の構成要素と予備費

移転計画を立てる際、費用が「物件契約費」だけではないという点に注意が必要です。

オフィス移転にかかる費用は、物件関連費、内装工事費、IT・通信インフラ費、備品・設備費、引越し費用の大きく5つの要素で構成されており、特に内装工事費と原状回復費用が全体の費用の大半を占める傾向があります。

これらの費用を見積もる際、業者からの提示額を鵜呑みにせず、なぜその費用が必要なのかを専門業者に質問し納得した上で予算を組むことが大切です。

また、どんなに綿密に計画を立てても予期せぬ出費はつきものです。たとえば、内装工事中に建物の古い配管が見つかったり、希望のオフィス家具の納期が遅れて急遽代替品を割高で購入したり、といったことは珍しくありません。

このようなリスクに備えるために、総予算の10%~20%を目安として予備費を確保しておくことが、担当者の心理的な余裕とプロジェクトの完遂につながります。

オフィス移転費用の主な内訳と構成比率

オフィス移転費用の主な構成要素と、それぞれの費用が総費用に占める一般的な割合は以下のとおりです。

費用の内訳 構成比率の目安 具体的な項目
物件関連費用 30%〜40% 敷金・保証金、仲介手数料、前家賃、礼金
内装工事・設計費用 30%〜50% 内装設計費用、間仕切り・床・天井工事費用、原状回復工事費用(旧オフィス)
IT・通信インフラ費用 5%〜10% サーバー移設、ネットワーク配線工事、電話・PBX工事、セキュリティシステム導入費用
備品・設備費用 10%〜20% 新規オフィス家具購入費、OA機器購入費、什器・備品購入費
引越し・その他費用 5%〜10% 引越し業者費用、各種保険費用、行政手続き費用、予備費
合計 100% ※構成比率は物件規模や内装デザインのグレードにより大きく変動します。

戦略的な物件選定と内装デザイン

戦略的な物件選定と内装デザイン

物件選定では、ただ立地や賃料を見るだけでなく「移転目的との整合性」「従業員にとっての利便性」「将来の成長性」を総合的に判断することが重要です。また、内装デザインは企業の理念を体現し、働き方を最適化する戦略的な投資として捉えるべきです。

移転目的と予算に合った新物件選び

新物件を選ぶ際、単に「家賃が安い」「広い」という理由だけで決めるのは危険です。前述した「移転目的」を達成できるかどうかという視点が、最も重要な評価基準となります。

たとえば、「人材採用力を高める」という目的であれば、アクセスの良さやビルのグレードといった定性的指標が重視されますし、「コスト最適化」が目的なら、賃料や共益費といった定量的指標が優先されます。

物件選定をロジカルに進めるためには、これらの評価基準を事前に設定し、候補物件ごとに点数化して比較する手法が有効です。また、物件の広さについても、将来的な増員計画や、社員の働き方(フリーアドレス導入など)を加味した必要面積の算定を正しく行うことが、無駄な賃料を払わないための一手となるでしょう。

仲介業者の意見を聞きつつも、最終的な判断は自社の戦略に基づいているかを常に確認することが大切です。

内装デザインが生産性とエンゲージメントに与える影響

オフィス内装のデザインは、単なる「会社の顔」ではありません。それは、従業員の働き方や心理状態、ひいては企業の生産性やエンゲージメント(会社への愛着)に直接影響を与える戦略的なツールだと捉えることもできます。

たとえば、リラックスできるリフレッシュエリアを設けたり、自然光を取り入れたりするウェルビーイング(心身の健康)に配慮したデザインは、社員のストレスを軽減し、創造性を高める効果があることが知られています。

また、ABW(Activity Based Working:活動ベースの働き方)の考え方に基づき、仕事の内容に合わせて場所を選べる多様なスペースを設けることは、社員一人ひとりの自律性を高め、最も効率の良い場所で仕事ができる環境を提供します。

内装デザインを検討する際は「このデザインは、私たちが設定した移転目的(生産性向上など)をどのように後押しするのか」という視点を持って、業者と打ち合わせを進めていくことが成功の秘訣です。

参考記事:ウェルビーイングなオフィスとは?社員の幸福感や働くモチベーションを高める方法を解説

業務効率を高めるゾーニング設計

新オフィスの設計において、最も重要な要素の一つがゾーニングです。ゾーニングとは、オフィスを「集中作業エリア」「協働・会議エリア」「リフレッシュエリア」など、機能ごとに分けて配置することを指します。

このゾーニングを業務効率向上という観点から突き詰めることが、移転の成功に直結します。たとえば、電話や雑談が多い営業部門と、静寂が必要な開発部門を隣接させてしまうと、お互いの生産性を下げてしまいます。

ゾーニング設計を成功させるためには、従業員が普段どのように働いているかという現状の行動データを収集し、新オフィスで「どのような行動」を増やしたいのかという移転コンセプトを基に設計することが重要です。

単に「フリーアドレスにしよう」と決めるのではなく、フリーアドレスを導入する目的に応じて、適切なコラボレーションスペースを設計することが、業務効率を高める真のゾーニング設計だと言えるでしょう。

参考記事: オフィス内装の作りを紹介!デザインと空間設計について解説

適切な広報と抜け漏れのない手続きの段取

適切な広報と抜け漏れのない手続きの段取

移転に伴うお知らせ(広報)は、顧客・取引先・従業員の3つのステークホルダーに対する配慮が重要です。適切なタイミングで正確な情報を伝達し、混乱させないことが企業信頼度の維持に直結します。

顧客・取引先への「お知らせ」方法と告知

オフィス移転は、顧客や取引先にとって重要な情報であり、適切な方法とタイミングで伝える必要があります。伝えるべき情報は「新しい所在地」「移転日」「業務開始日」「連絡先の変更の有無」の4点に絞り、正確に伝えることが大切です。

告知のタイミングとしては、移転日の2~3ヶ月前を目安にまず書面(挨拶状)やメールで正式な案内を送るのが一般的です。

特に重要な取引先には、担当者から直接電話で連絡を入れたり、あらためて訪問してご挨拶したりするなどの丁寧な対応が信頼関係を維持するために不可欠です。

また、会社のウェブサイトや名刺、各種資料に記載されている住所、地図情報などのデジタル情報の切り替え時期も明確に広報計画に盛り込むことで、顧客からの問い合わせによる混乱を未然に防ぐことができます。

従業員エンゲージメントを高める社内広報戦略

社内広報は、単に「いつ、どこに移転するか」を伝えるだけでなく、移転に対する従業員の期待感を高め、不安を解消するための戦略的なコミュニケーションとして位置づけるべきです。従業員が抱える不安に寄り添い、新オフィスで実現する「より良い働き方」「会社が目指す未来」を具体的に伝えることがエンゲージメントの向上につながります。

例えば、社内説明会や内装デザインの進捗状況の共有などを定期的に行うことで、従業員は「自分たちの新しい職場が作られている」という当事者意識を持つことができます。

特に、移転後の新しいオフィスの利用ルールや、IT機器の使用方法などをまとめた「新オフィス利用ガイドライン」を事前に配布し、従業員がスムーズに新しい環境に馴染めるようサポートする準備も忘れないようにしたいものです。

法律・行政手続きとライフライン変更

引っ越し作業そのもの以上に、移転の抜け漏れが怖いのが法律・行政手続きです。会社法や税法に基づく手続きに加え、従業員の社会保険や雇用保険に関わる届出も必要になります。これらの手続きにはそれぞれ提出期限が厳密に定められているため、タスクとしてリスト化し、チェックリストに従って確実に実行する必要があります。

また、電気、ガス、水道、インターネット回線といったライフラインの切り替えも重要です。特にインターネット回線や専用線などは、開通までに数週間から数カ月かかる場合があるため、物件契約後、可能な限り早い段階で通信事業者との調整を始める必要があります。

行政手続きとライフラインの切り替えを確実に行うことが、移転後の業務をスムーズに再開するための「裏側の準備」だと言えるでしょう。

移転に伴う行政手続きの届出先と期限一覧

移転に伴い必要となる主な行政手続きの届出先と、それぞれの期限の目安を一覧にまとめました。

届出先 主な届出書類・事項 届出期限の目安
税務署 異動届出書(納税地、名称、所在地変更) 変更後速やかに
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 移転後1ヶ月以内
都道府県税事務所 事業開始(廃止)等申告書 移転後速やかに(自治体による)
市区町村役場 法人事業開始等申告書 移転後速やかに(自治体による)
労働基準監督署 労働保険の所在地変更届 移転後10日以内
就業規則の変更届(住所変更に伴う場合) 変更後速やかに
ハローワーク 雇用保険事業主事業所各種変更届 移転後10日以内
年金事務所 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地変更届 移転後5日以内
銀行・金融機関 住所変更届 各金融機関の規定に従う
消防署 防火管理者選任届、消防計画変更届 移転後速やかに
警察署 道路使用許可申請(引越し作業時) 事前に申請(所轄警察署に要確認)
旧オフィス賃貸 解約通知 契約書に基づき6ヶ月前など(最重要)

よくある質問

オフィス移転の初期段階で失敗しやすいポイントは何ですか

オフィス移転の初期段階で担当者が最も失敗しやすいポイントは移転の「目的」と「予算」が途中でブレてしまうことです。特に、物件探しが難航し始めたり、内装見積もりが予算をオーバーしたりすると、当初の目的を曖昧にして妥協しがちになります。

「コスト削減のためだったのに、結局、新オフィスの方が賃料が高くなった」といった事態はよく聞く話です。

この失敗を避けるためには、初期段階で定めた移転の目的と予算を、プロジェクトチーム全体で常に意識し、物件選定や設計の都度、「この選択は目的に合致しているか」を立ち止まって確認する習慣をつけることが重要です。

また、予算オーバーに備えて予備費を確保しておくことが、結果的に妥協のない意思決定を支える土台となるでしょう。

スケジュールがタイトな場合、優先すべきタスクは何ですか

スケジュールが逼迫している状況で、担当者がまず優先すべきタスクは二つあります。一つは旧オフィスの解約通知であり、もう一つは内装業者の選定と設計の開始です。前述したように、旧オフィスの解約通知は、多くの場合6ヶ月前という厳しい期限があり、これを逃すと金銭的な大損害につながるため最優先です。

後者の内装設計は内装工事自体に時間がかかること、そして、物件契約後すぐに設計・見積もりに取り掛かれる体制を整えておかなければ、全体の遅延が避けられないためです。

これらのタスクは外部業者や賃貸人との連携が必須であり、自社の努力だけでは時間が短縮できない部分が多いことを理解し、可能な限り早急にアクションを起こすことが賢明な判断です。

オフィス移転の費用対効果(ROI)をどう測れば良いですか

オフィス移転の費用対効果(ROI)は、単に「移転にかかった費用」と「新しいオフィスの家賃が安くなった分」を比べるだけでは測れません。本当のROIは移転前に設定した「移転目的」がどれだけ達成できたかで評価されるべきです。

たとえば、目的が「人材採用力の向上」であれば、移転後「採用応募者数の増加率」や「入社後の定着率」がKPI(重要業績評価指標)となります。

また、「生産性向上」が目的なら、移転後の「従業員一人あたりの売上」や「残業時間の変化」を測定し、移転前と比較する必要があります。移転後6ヶ月から1年後に、従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイを実施し、定性的なメリット(働きやすさなど)も評価に加えることで、移転が経営にどれだけ貢献したかを多角的に証明できるでしょう。

まとめ

オフィス移転は複雑で長期にわたるプロジェクトですが、その段取りと流れを体系的に理解し、計画的に進めることさえできれば、決して難しいものではありません。この記事で解説したように、12ヶ月をかけた計画的な段取りと移転目的を核としたブレない初期設定こそが、失敗を回避し、プロジェクトを成功へと導くための最重要ポイントです。

実務での次のアクションとして、まずは本記事の「部門別タスクチェックリスト」を参照し、関係部門を巻き込んだ「移転プロジェクトチーム」を発足させましょう。そして、そのチームで「なぜ移転するのか」という問いに対する明確な答えを定義することから始めましょう。

計画的に準備を進めれば、必ず御社の未来を築く新しいオフィスへの確かな一歩を踏み出すことができますよ。

参考文献

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