内装デザイン 2026.01.23

ブックカフェの内装を作る方法は?設計内容や施工、コンセプトについて解説

ブックカフェの内装を作る方法は?設計内容や施工、コンセプトについて解説
この記事のまとめ
  • 汚れにくい家具選定と、集中を妨げない適切な距離感の座席配置が不可欠。
  • ターゲットに合わせた本の選定と、それに連動したインテリアデザインが集客の鍵。
  • 重量物である本棚の固定や、飲食店としての衛生基準・防火基準の遵守が必須。
  • 本の閲覧動線とスタッフの配膳動線を分離し、サービス品質を維持する設計が必要。

 

お気に入りの一冊を片手に美味しいコーヒーを楽しむブックカフェは、多くの起業家や本好きにとって憧れの業態です。しかし、いざ内装を作るとなると「何冊くらい本を置けるのか」「長時間座っても疲れない椅子は?」といった具体的な疑問が次々と湧いてきます。

ブックカフェの内装は、単に本棚を並べるだけでは成立しません。読書に没頭できる「静」の環境と、カフェとしての「動」の機能が高いレベルで融合している必要があります。この記事では、理想のブックカフェを開業するための設計・施工のポイントを、実務に即して体系的に解説します。

ブックカフェ内装の基本

ブックカフェ内装の基本

ブックカフェの内装における最優先事項は、読書という個人的な体験を、公共の場であるカフェでいかに快適に提供するかという点にあります。

読書と飲食を両立する空間設計

ブックカフェでは、テーブルのサイズ選びが非常に重要です。一人あたり横幅70cm、奥行き45cm以上の有効面積を確保することが推奨されます。これは、本を広げた状態でコーヒーカップや軽食のプレートを置くために必要な広さです。

また、本が飲み物で汚れるリスクを抑えるため、撥水加工を施した天板の採用や、食事の香りが本に映りにくいよう厨房の排気計画を強化し、空気の流れを制御する設計が望ましいと言えます。

読書体験を優先した内装構成

色彩計画は、読書の邪魔をしない落ち着いた色調が基本です。壁面には防音性能のある素材を使用したり、書棚自体をパーテーション(間仕切り)として活用することで、隣席からの視線や音を遮るプライベート感を生み出します。

本棚の配置では、手に取りやすい高さである床上60cm〜150cm(ゴールデンゾーン)によく読まれる本を配置し、視覚的なリズムを作ることで、空間に奥行きを与えます。

長時間滞在を前提とした設計視点

椅子の選定には細心の注意が必要です。適度なクッション性があり、背もたれがしっかりと背中を支える角度のものを選びましょう。また、長時間滞在による回転率低下を考慮し、内装設計の段階で「収益モデル」との整合性を取る必要があります。滞在条件に合わせた最適解を見つけるため、初期段階で専門家へ相談することも有効な手段です。

ブックカフェのコンセプト設計

ブックカフェのコンセプト設計

内装デザインを具体化する前に、「どのような本を揃え、どのような客層に、どのような体験を提供するか」というコンセプトを言語化する必要があります。ブックカフェにおけるコンセプト設計は、単なる店舗の雰囲気作りではなく、選書と空間の整合性を取るための最重要の指針となります。

コンセプト構築の基本手順

ブックカフェのコンセプトを構築する際は、まず「核となる本のジャンル(コア)」を定め、そこから逆算してターゲットと内装を紐付けていく手順がスムーズです。以下の3つのステップで整理します。

  • Step1 蔵書の軸を決める: 万人受けを狙うのではなく、自身の強みや地域特性に合わせた専門分野を1〜2つ選定します。
  • Step2 読書シーンを想像する: その本を手に取るお客様が「短時間で情報を得たい」のか、「数時間没頭したい」のか、具体的な利用シーンを定義します。
  • Step3 空間のトーンを決める: シーンに合わせて、明るい開放的な空間か、包み込まれるような静謐な空間かを決定します。

本のテーマを軸にした方向性

特定のテーマに特化したブックカフェの方が、内装の方向性が定まりやすくなります。テーマに基づいた選書と内装が一致することで、特定の趣味を持つコミュニティにとっての「サードプレイス(第3の居場所)」としての価値が高まります。この際、本棚だけでなく、壁紙の質感や什器の素材感までテーマを反映させることで、世界観に厚みが生まれます。

ひとり客を想定した空間設計

ブックカフェのメイン顧客は、多くの場合「ひとり客」です。グループ向けの大きなテーブルよりも、窓際に面したカウンター席や、壁に向かって集中できる1人掛けソファ席を多めに配置するのが定石です。隣席との間に小さなサイドテーブルや本棚を挟むことで、物理的な遮断ではなく「心理的な距離感」を保つ設計が、満足度を大きく左右します。

本屋らしさを演出する世界観

「本が置いてあるカフェ」ではなく「本屋の中でコーヒーが飲める」状態を目指すなら、床から天井まで届く壁面本棚や、新刊を平積みできるディスプレイ台など、書店特有の什器を取り入れるのが効果的です。古本を扱う場合は、アンティーク調の照明や落ち着いたヴィンテージ家具を組み合わせ、時の流れを感じさせる知的な空間を演出しましょう。コンセプトに合わせた什器の特注はコストが分岐するポイントとなるため、早期に専門家へ相談することをお勧めします。

本棚と本の配置計画

本棚と本の配置計画

本棚はブックカフェにおける最大の什器であり、空間の印象を左右する「内装の顔」です。配置を考える際は、デザイン性だけでなく、蔵書重量への対策、検索性、そして維持管理のしやすさを体系的に計画する必要があります。

配置計画の基本ステップ

やみくもに本棚を置くのではなく、以下の手順で計画を進めることで、機能的で美しい空間が完成します。

書籍配置の手順
  • 1. 必要蔵書数の算出: 坪数やコンセプトから目標冊数を決めます。一般的に、1メートルあたり40〜50冊(単行本)を目安に、必要な棚の総延長を計算します。
  • 2. ゾーニングの決定: 「見せるためのディスプレイ棚」「じっくり探すためのストック棚」「座席から手の届く閲覧棚」など、役割に応じて配置場所を分けます。
  • 3. カテゴリの流動性設計: 本のジャンル(文芸、実用、アート等)をどう並べるか、お客様の歩く方向(動線)に合わせて配置を決めます。

本を積むインテリアの注意点

インテリアとして本を積み上げる手法(ブックスタック)は視覚的にユニークですが、実際に手に取ることを想定する場合は注意が必要です。下の方の本が取りにくくなるだけでなく、崩落の危険性もあります。

また、大量の本は湿気を吸いやすく、カビやダニの原因にもなります。本棚の背板に隙間を作ったり、壁面から少し離して設置したりして、「空気の通り道」を確保する設計が、貴重な蔵書を長持ちさせるための鉄則です。

壁面本棚と島型本棚の使い分け

壁面本棚は空間を広く見せつつ大量の収納を確保できます。一方、フロア中央の「島型本棚」は、両側から本を手に取ることができ、空間の動線をコントロールする役割も果たします。

ただし、島型本棚は視線を遮るため、「腰高程度(高さ120cm以下)」に抑えて店内の見通しと防犯性を確保するのが一般的です。棚の上をディスプレイコーナーや照明設置スペースとして活用することで、開放感と機能性を両立できます。

本量が多い空間の圧迫感対策

大量の本棚に囲まれると、閉塞感を感じる場合があります。これを解消するためには、本棚の素材を壁の色と同系色にする、あるいは白などの膨張色を採用することで、家具の存在感を抑える手法が有効です。また、棚の一部を「ヌケ」として空け、小物を飾る余白を作ることで視覚的な圧迫感を軽減できます。

なお、蔵書数が多い場合は、床の積載荷重制限(1平米あたりの耐荷重)を必ず確認してください。建物の構造によっては床の補強工事が必要になるため、早期の建築診断が推奨されます。条件に合わせた安全な配置については、専門家への相談を欠かさないようにしましょう。

ブックカフェのレイアウトと動線

ブックカフェのレイアウトと動線

ブックカフェのレイアウトは、読書の「静」とオペレーションの「動」を分離することが成功の鍵です。

エリア 役割 設計のポイント
エントランス 受付・案内 カフェ利用か閲覧のみかの判別を容易にする
ライブラリゾーン 本の検索・閲覧 通路幅を90cm以上確保し、すれ違いやすくする
座席ゾーン 読書・飲食 視線が合わない配置、適切な照明の確保
サービス動線 配膳・下膳 読書エリアを通らずに厨房と客席を繋ぐ

読書に集中できる座席配置

座席は、他人の視線が視界に入らないオフセット配置(互い違い)が好まれます。対面席には中央にパーティションや小さな書棚を設けます。窓際席では、本の退色を防ぐためUVカットガラスや遮光ロールスクリーンの併用を検討しましょう。

回遊性を確保する通路計画

本棚の前の通路は1人が本を選んでいる後ろを別の人が通り抜けられるよう、120cm程度の幅を確保するのが理想的です。主要な動線は直線的に作り、迷わせない工夫が必要です。

配膳と閲覧を分離する動線設計

コーヒーミルの音やスタッフの掛け声が読書エリアに響かないよう、厨房を奥に配置するか、吸音材を用いた天井設計を検討してください。初期段階で専門家へ相談することで、運用の効率化と顧客満足度の両立が可能になります。

読書しやすい内装デザイン要素

「読みやすさ」を左右するのは、物理的な快適さと感覚的な心地よさのバランスです。

手元を照らす照明計画

空間全体の照度は抑えつつ、各テーブルの手元をスポットライトで明るく照らす「一室多灯」が適しています。手元の照度は300〜500ルクス程度を確保し、光の色は温かみのある電球色〜温白色を選ぶとリラックス効果が高まります。

静けさを保つ音環境設計

適度なマスキング効果のあるBGMが流れている方が、他人の会話が気にならなくなります。内装材には、音を吸収する木材、布、カーペットを組み合わせることで、不快な響きを抑えることができます。

長時間利用に適した家具選定

読書やPC作業を想定する場合、椅子の座面とテーブルの高さの差(差尺)が25cm〜30cmになるよう調整すると、身体への負担が軽減されます。カバン置き場やコート掛けの設置も重要なポイントです。

ブックカフェ内装の施工ポイント

ブックカフェ内装の施工ポイント

ブックカフェの施工は、一般的な飲食店よりも「荷重(重さ)」と「設備密度」が非常に高くなる傾向があります。単に見栄えを整えるだけでなく、建物の構造的負担を軽減し、かつ現代の読書スタイルに合わせたインフラをどう組み込むかが、施工の成否を分けるポイントです。

施工計画の基本ステップ

後戻りのできない工事段階でミスを防ぐため、以下の順序で施工計画を精査します。

施工計画の基本ステップ
  • 1. 構造・荷重調査: 本棚を設置する場所の床下地が、想定される本の総重量に耐えられるか、梁の補強が必要かを事前に診断します。
  • 2. 設備配管・配線の先行打合せ: 造作本棚の中に照明用配線や電源コンセントを通す場合、棚を作る前に配線を仕込む必要があります。
  • 3. モックアップ(原寸大)確認: 特に造作家具については、実際の棚板の厚みや奥行きが本の出し入れを妨げないか、一部を試作して確認することが推奨されます。

造作本棚の施工注意点

既製品ではなく、壁のサイズに合わせた「造作本棚」を製作する場合、棚板の強度計算が必須です。本は1メートルあたり20kg〜40kgに達することもあり、棚板が自重と荷重でたわまないよう、適切な厚み(通常25mm〜30mm以上)や補強桟を検討します。

また、地震時の転倒防止のため、壁のLGS(軽量鉄骨下地)や木下地に確実にボルトで固定する工事が不可欠です。天井までの大容量本棚を設置する場合は建物の揺れを考慮した「逃げ」を設けるなど、高度な施工技術が求められます。

読書向け電源と配線計画

最近のブックカフェ利用者はタブレットで読書をしたり、PCで作業をしたりすることも多いため、座席ごとにコンセントやUSBポートを設置することが標準的になっています。

配線が露出するとデザイン性を損なうだけでなく、清掃の邪魔にもなるため、テーブルの脚の中に配線を通したり、床にフロアコンセントを埋設したりする事前計画が必要です。また、Wi-Fiのアクセスポイントが本棚の影で遮断されないよう、設置位置を微調整するなどのネットワーク配慮も施工段階で行います。

内装工事費用の考え方

ブックカフェの内装費は、一般的なカフェに比べて「什器製作費」と「床の補強工事費」が上乗せされるため、坪単価が高くなる傾向があります。コストを賢く管理するには、全ての棚をオーダーメイドにするのではなく、目立つ場所だけを造作にし、見えにくいストック部分は既製品のユニットシェルフを活用するなどの「メリハリ」が重要です。

また、特殊な照明計画や重量対策が必要な案件では、設計段階での判断ミスが追加工事のコストを増大させます。初期に専門家へ相談することで、予算内で最適な強度とデザインを両立する計画を立てることが、結果的にコスト抑制に繋がります。

ブックカフェ内装と法規制

ブックカフェの開業には、「飲食店としての衛生管理」と「不特定多数が利用する施設としての防火・安全管理」という2つの側面からのアプローチが必要です。これらの法規制は内装デザインの制約になることも多いため、図面作成の初期段階から行政機関との事前相談を積み重ねる「法規整理」のプロセスが不可欠です。

オープン直前の指摘による手戻りを防ぐため、以下の順序で行政協議を進めます。

法規制対応の基本
  • 1. 管轄窓口の特定: 物件所在地の保健所(食品衛生)、消防署(防火)、土木事務所等(建築確認・バリアフリー)を特定します。
  • 2. 基本プランの事前相談: 什器の配置が固まる前の「ラフ図面」の段階で、避難経路や厨房設備の間取りを各窓口へ持ち込み、見解を確認します。
  • 3. 各種申請と現場検査: 工事着手前に必要な届出を行い、完工時には図面通りに施工されているかの「落とし込み」検査を受けます。

飲食店に必要な内装基準

ブックカフェは「飲食店営業」の許可が必要です。食品衛生法に基づく施設基準では、厨房に「二槽以上のシンク」「蓋付きのゴミ箱」「流水式の手洗い設備」などの設置が必須です。また、内装材についても、床は耐水性があり清掃しやすい素材、壁や天井は汚れが落ちやすく平滑な仕上げが求められます。

特に本棚を厨房付近に設置する場合は、ホコリが調理場に侵入しないよう、物理的な区画(壁やカウンター)をどう設けるかが保健所の判断基準となります。

参考サイト: 食品衛生法施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十三号)|e-Gov 法令検索

防火と避難を考慮した設計

大量の紙(本)を保持するブックカフェは、消防法において「火災の拡大リスク」が高い施設とみなされる場合があります。そのため、内装の不燃化(内装制限)や、カーテン・カーペット等の防炎物品の使用が厳格に求められます。

特に重要なのが避難経路の確保です。消防法上、主要な通路は有効幅員1.2メートル以上(規模により異なる)の確保が必要であり、天井まで届く本棚が誘導灯やスプリンクラーの散水を遮らないよう配置しなければなりません。これらの配置は、消防署との「事前協議」によって最適解が決まるため、独断での設置は避けるべきです。

本棚設置時の安全対策

2019年の建築基準法改正および関連告示により、大型家具の固定など「建築物と一体となる什器」の安全性がより重視されています。地震発生時に数千冊の本が崩落したり、巨大な棚が転倒したりすると、避難を妨げるだけでなく人命に関わるためです。

また、本棚が集中するエリアでは、床の耐荷重(建築基準法上の積載荷重基準)を超過しないかの検討が必要です。特に古いビルを改装する場合、補強なしでは本棚の重量に耐えられないケースがあるため、初期に構造設計の専門家へ診断を依頼することで、大規模な手戻りや安全上のリスクを回避できます。

よくある質問

ブックカフェに適した店舗規模

15坪から25坪程度が管理しやすく人気です。この規模であれば、15〜20席程度の座席と、数千冊の蔵書をバランスよく配置できます。

本棚は造作と既製品の選択

空間の象徴となる部分は造作、見えにくい収納は既製品と分けるのが効率的です。造作は地震対策も一括で行えるメリットがあります。

ひとり利用が多い場合の内装

パーソナルスペース確保のため、1人掛けソファや仕切りを兼ねた本棚を設けるのが効果的です。また、Wi-Fi環境の整備も重要になります。

本を汚さないための工夫

ドリンクを倒れにくい底広のものにする工夫や、本棚と飲食エリアを物理的に分けるレイアウトにより、蔵書のダメージを軽減できます。

まとめ

ブックカフェの内装作りは、単なる飲食店の設計を超え、「文化的な体験」をデザインする作業です。読書に最適な環境、大量の本を支える安全な構造、法規制のクリアなど、考慮すべき点は多岐にわたります。

理想の空間を実現するためには、まずコンセプトを固め、「本と人の動線」を緻密に練ることが成功への近道です。物件の条件に合わせて最適解は変わるため、不明な点があれば専門家へ相談することで、円滑なオープンが可能になります。安全で魅力的なブックカフェを作り上げてください。

参考文献

related ブログ