内装デザイン 2025.07.11

ベンチャー企業のオフィス作りやレイアウトの種類について解説

ベンチャー企業のオフィス作りやレイアウトの種類について解説

急成長を目指すベンチャー企業にとって、オフィスは単なる作業場ではありません。

それは社員のモチベーションを引き出し、企業文化を体現し、外部に自社の魅力を伝えるための「もう一つの名刺」とも言える存在です。

しかし、いざオフィスをつくろうとすると、「何を基準に設計すればよいのか」「ベンチャーらしさとは何か」といった迷いが生まれがちです。

機能性とおしゃれさ、コストと遊び心、組織の今と未来。そのバランスをどう取るかが、悩みどころになってきます。

この記事ではベンチャー企業のオフィスに求められる基本的な特徴から、レイアウト形式やデザインの方向性、成長フェーズごとの設計ポイントまでを整理しながら、はじめてのオフィスづくりでも安心して進められるヒントをお届けします。

ベンチャー企業とは

ベンチャー企業とは新しい技術やビジネスモデルを活用し、成長や市場拡大を目指す企業を指します。

特に創業間もない中小規模の会社に使われることが多く、既存の大企業とは異なるスピード感や挑戦姿勢が特徴です。

ただし、実は「ベンチャー企業」という言葉には法律上や制度上の明確な定義はありません。

学術的・実務的な場面でも使われ方が曖昧で、一般的には「新しい分野に挑戦し、成長を志向する企業」を広く指す言葉として用いられています。

ベンチャー企業のオフィスの特徴

ベンチャー企業のオフィスには、大手企業とは異なる考え方や工夫が求められます。

スピード・柔軟性・文化表現の3つが共通した特徴であり、それぞれが空間のつくり方に強く影響を与えます。

柔軟性のある空間設計

ベンチャー企業は急な組織拡大や事業内容の変化が起こりやすいため、用途を固定しすぎない“ゆるく仕切られた空間”が向いています。

たとえば、間仕切りの代わりに背の低い収納家具や可動式のパーテーションを使えば、必要に応じてワークスペースとミーティングスペースを入れ替えることも可能です。

固定化された空間よりも、使いながら育てていける余白があるほうが、ベンチャーには適しています。

筆者の経験でも立ち上げ間もないベンチャーが固定席を廃止し、毎週レイアウトを変えることで、社員のアイデア共有が活性化したという事例が印象に残っています。

社風や企業文化などのブランドを表現した空間

オフィスは、「社内外に自社の価値観を伝えるメディア」でもあります。

たとえば、色づかいや素材、家具の選び方ひとつで、「この会社は柔軟そう」「創造的なことをしていそう」というイメージが伝わることもあります。

企業理念やタグラインを壁面にレタリングする社内制度にちなんだネーミングを会議室に付けるなど、オフィスが“会社の人格”を表すような工夫が注目されています。

こうした空間表現は、社員の帰属意識や誇りにも直結する要素です。

採用広報やブランディングにも直結

近年では求職者が企業を評価する基準として「オフィスの環境」も重視されるようになりました。

とくに若手人材やIT系志望者は、「どんな空間で働けるか」をSNSやWebサイトの写真からチェックしています。

つまり、おしゃれで個性あるオフィスは“採用広報ツール”としての効果も期待できるのです。

インスタ映えするラウンジや、リラックスできるソファスペースなど、写真に残る要素は採用競争力を左右します。

オフィスが企業の顔であり、採用にもPRにも効く時代。だからこそ、“見せる空間”を戦略的に設計する意義が高まっているのです。

おしゃれなベンチャーオフィスとは

「おしゃれなオフィス」という言葉は抽象的ですが、ベンチャー企業で評価されやすい“おしゃれさ”には明確な共通点があります。

単に装飾だけではなく、空間全体の構成や室内動線、照明や家具の選び方などが戦略的に設計されている点がポイントです。

開放感・抜け感を生み出す空間構成

おしゃれなベンチャーオフィスに共通して見られるのが、視線の抜けを意識した開放的な空間づくりです。

たとえば天井をスケルトン(むき出し)にすることで高さを確保したり、透明ガラスのパーティションを使って奥行き感を演出したりと空間を広く見せる工夫が凝らされています。

この“抜け感”は、実際の面積以上に開放感を感じさせ、自由な発想や心理的余裕を誘発する効果もあります。

社員のクリエイティビティを刺激し、来訪者に対しても「風通しのよい企業」という印象を与えやすくなるのです。

また、壁や天井の色味を明るくするだけでも、空間全体の印象はかなり変わります。低コストで始める場合はまず照明や壁面からが取り入れやすいです。

遊び心や非日常感のあるデザイン演出

ベンチャー企業のオフィスでは、“少しだけ違和感がある空間”がポジティブに評価される傾向があります。

たとえば、芝生のような床材を敷いた会議室、ブランコやハンモックが設置された休憩エリアなどがその代表例です。

こうした「遊び心」は、社員のリラックスや発想の転換を促すだけでなく、企業文化の“らしさ”を視覚的に伝えるツールとしても機能します。

ただし、あまりに奇をてらいすぎると逆効果にもなるため、全体のトーン&マナーの中にうまく組み込むセンスが問われます。

まずは1ヶ所だけでも“ちょっとした驚き”を与える要素を設けることから始めるとよいでしょう。

照明・家具・色使いによる印象操作

前述した開放感や遊び心を支えているのが、照明・家具・配色設計のセンスです。

とくに照明は、空間全体の印象を決定づける要素であり、業務効率とも直結します。

デスクエリアは昼白色で集中力を高める一方、リラックスエリアや打ち合わせブースは電球色にして温かみを持たせると自然に空間の“モード”が切り替わります。

家具選びでは統一感とアクセントのバランスが重要です。全体をモノトーンにまとめつつ、ビビッドな色の椅子やアートを一点だけ配置するなど、「落ち着き×遊び」の構成が空間に奥行きを生み出します。

色彩心理の観点からもブルーは冷静さ、オレンジは活気、グリーンは安心感といった効果があるため意図的に“企業らしさ”を伝える色を選ぶことも可能です。

ベンチャー企業のオフィスレイアウトの種類と特徴

ベンチャー企業にとって、オフィスのレイアウトは単なる席の配置ではなく、働き方そのものを象徴する構造です。

フリーアドレスや固定席、ハイブリッド型など目的や社風によって最適解は変わります。

ここでは代表的な3パターンと、それぞれの特徴や向いているフェーズについて解説します。

フリーアドレス型:変化に強く多用途に使える

フリーアドレスとは社員が決まった席を持たず、空いているデスクをその都度選んで業務を行う方式です。

スタートアップ期や成長中のベンチャーによく採用されるスタイルで席数の最適化や柔軟な増員対応が可能というメリットがあります。

フリーアドレス型:変化に強く多用途に使える

とくに出社頻度にばらつきがある企業や、リモートワークと併用する体制では席の固定に意味がないどころか、空間のムダを生む要因にもなりかねません。

一方で「誰がどこにいるのか分かりづらい」「雑談が減る」などの課題もあるため、座席予約アプリやフロアマップの整備、雑談がしやすい共用エリアの設計も必要になるかもしれません。

固定席型:集中業務に向き、管理がしやすい

固定席レイアウトは、文字通り社員一人ひとりに専用の席が割り当てられる形式でルーティン業務や集中作業が多い業種・チームに向いています。

たとえばエンジニアや経理など、作業環境を整えることが生産性に直結する職種では、固定席のほうが適している場合が多いです。

固定席型:集中業務に向き、管理がしやすい

また、上司やチームメンバーと常に近くにいることで、意思疎通や指示系統がスムーズになるという利点もあります。

一方で、席が固定されることでフロアに余白が生まれにくくなり、組織拡大のたびにレイアウト変更が必要になることもあります。

そのため、変化が少ないチームや安定フェーズの企業に向いたスタイルと言えるでしょう。

ハイブリッド型:ゾーニングで多様性を演出できる

フリーアドレスと固定席を組み合わせたハイブリッド型は多様な働き方や業務内容を持つベンチャーにとって、最も現実的でバランスの取れた選択肢です。

たとえば、マネージャーや管理部門には固定席、営業や企画など移動が多い職種にはフリーアドレスを設定することでスペース効率と生産性を両立できます。

ハイブリッド型:ゾーニングで多様性を演出できる

また、チーム単位でのゾーニングや「集中ブース」「カジュアルエリア」などのモード切替空間を設けることで、フロアにリズム感と使い分けの明快さが生まれます。

ハイブリッド型では、「どうゾーンを切るか」「どう視覚的に区切るか」が設計のカギです。

オフィスイメージの系統と作り方

「自社らしいオフィス」を作るには、どのようなイメージで空間を統一するかという“デザインの方向性”を明確にすることが大切です。

ここでは、ベンチャー企業に多く見られる3つの代表的なデザイン系統と、それぞれに適した素材・色使い・演出方法を紹介します。

ミニマル・クリーン系:スタートアップに多い清潔感重視

無駄な装飾を削ぎ落とし、白やグレー、ナチュラルウッドといった明るくニュートラルな色合いで統一されたデザインは、ミニマル・クリーン系の代表格です。

この系統は、スタートアップの初期段階でよく採用されます。理由は明快で、コストが抑えやすく、テナントの原状に近い状態からでも始めやすいためです。

ミニマル・クリーン系:スタートアップに多い清潔感重視

また、清潔感と誠実さが伝わるため、投資家や顧客の信頼感を得やすいという副次的効果もあります。

たとえば、壁を白、床をナチュラルウッド系で統一し家具はIKEAなどのシンプルで直線的なものを選ぶと低予算でも印象的な空間になります。

インダストリアル系:無骨さと実用性で成長性を演出

コンクリート打ちっぱなし、金属フレームの家具、黒・ダークグレーといったカラーリングで構成されるのがインダストリアル(工業的)系の特徴です。

「仕事感」「スピード感」「タフネス」を感じさせる演出が得意で、テック系や制作系ベンチャーに人気があります。

インダストリアル系:無骨さと実用性で成長性を演出

スケルトン天井にダクトがむき出しになっているような空間は、この系統の代表的な例。

予算を抑えつつも「こだわり」を演出できるので、完成度の高い空間づくりがしやすいという利点があります。

ただし、無骨な印象が強すぎると来客や新入社員にとっては少し冷たく感じられることもあるため、観葉植物や木製家具などで“温度感”を加える工夫もおすすめです。

ポップ・遊び心系:若手中心の柔軟な社風を表現

明るい原色や曲線の多い家具、個性的なアートやネーミングが光る空間はポップ・遊び心系の典型です。

若手が多く在籍する企業や、BtoCのクリエイティブ領域に関わるベンチャーなどでは、自社の“柔らかさ”や“自由さ”を伝える目的でこの系統が好まれます。

ポップ・遊び心系:若手中心の柔軟な社風を表現

たとえば、会議室に「アイデアルーム」「カオスゾーン」などと名前をつけたり、滑り台のあるラウンジを設けたりと、空間自体がコミュニケーションを生むような仕掛けを盛り込む企業もあります。

一方で、社外に向けた信頼性を重視する企業にはやや合わない場合もあるため、オフィス全体の一部に“遊び心ゾーン”を設けるスタイルも人気です。

ReAirのベンチャー企業の施工実績

VISIONS

ベンチャー オフィス 設計

グリーンや木目を基調としたあたたかいアテリアルで構成されたオフィス。エアコンを移設させ、オフィス全体が快適な空間に。

ベンチャー オフィス 設計

柱をなくし、仕切りをガラスにすることで社内を”見せる(魅せる)化”したオフィス。

家族向けのサービスが多いビジョンズは、ヒトとヒトとの繋がりを大切にしているため、その繋がりを意識し、グリーンや木目を基調としたあたたかいマテリアルで構成いたしました。

ベンチャー オフィス 設計

また、ミーティングルーム内の空気が循環できていないという問題があったため、どのエリアでも快適にお過ごしいただけるようエアコンを移設。

そして、室内の換気量が不足していたため、適正な給排気が行えるように設計・施工いたしました。

GoQSystem Yamaguchi

ベンチャー オフィス デザイン

インテリアのセレクトショップのような雰囲気づくりをというオーダーを基に構成した山口県のオフィス空間です。

木のマテリアルと温かみのある照明を多く用い、リラックス空間を演出しながらも、 多様多種な家具を配置することで、オン・オフを選択出来る空間をデザインいたしました。

ベンチャー オフィス デザイン

スタッフのスキルアップ・息抜きのために定期的に書籍が入れ替わるオリジナルデザインの本棚も見所です。

KnowledgeSuite(株式会社ブルーテック)

ベンチャー企業 内装デザイン

ナレッジスイート(株式会社ブルーテック)様の事業拡大によるオフィス増床に伴う、本社移転工事の設計を担当しました。

ベンチャー企業 オフィスデザイン ベンチャー企業 オフィスデザイン ベンチャー企業 オフィスデザイン

テレワークを推進、従業員の増加を見据え、また採用活動の強化、ならびにフリーアドレス、リモートワーク等のワークスタイル変化への柔軟な対応を図るレイアウトとしています。

いいオフィス 南越谷

いいオフィス南越谷 - オフィスデザイン内装設計
800㎡以上の広さを誇る、埼玉県内最大規模のコワーキングスペース、いいオフィス南越谷店を設計いたしました。

地域との親和性を考えつつ、設計・内装など細部にまでこだわり「いいオフィス」のアフターコロナを見据えた、集大成とも言える旗艦店となりました。
いいオフィス南越谷 - オフィスデザイン内装設計5 いいオフィス南越谷 - オフィスデザイン内装設計4 いいオフィス南越谷 - オフィスデザイン内装設計3 いいオフィス南越谷 - オフィスデザイン内装設計2

利用者同士のコミュニケーションが自然と生まれるようレイアウトを工夫したり、 オフィスの中心部にシンボルツリーと光と水を表現した彩色豊かなアートを配置し、リフレッシュをしつつも快適に仕事ができる空間を目指しました。

いいオフィス 沖縄

オフィスデザイン

占有面積 約460㎡・約90席という沖縄県内のコワーキングスペースで最大規模の広さと都心の旗艦店を設計しました。

オフィスデザイン オフィスデザイン オフィスデザイン

オープンキッチンやイベントスペースとしても活用できるレイアウトなど、オフラインによるコミュニケーションに最適な環境を整えました。

遊びと仕事の両面で充実したワーケーションの場として、開放感のある間取りなどの沖縄らしい空間デザインで、仕事中でもバケーションを感じられる仕掛けを随所に取り入れています。

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フェーズ別・社員数別のオフィス設計ポイント

ベンチャー企業のオフィス設計では、事業フェーズや社員数に応じた空間の考え方が極めて重要です。

なぜなら、組織の規模や事業のスピードによって、求められる柔軟性や機能性のバランスが大きく変わるからです。

ここでは「スタートアップ初期」「成長フェーズ」「20名以上」の3段階に分けて、設計時に意識したいポイントを整理します。

スタートアップ初期:小規模でも機能を詰め込む工夫

立ち上げ直後の企業は、限られたスペースと予算でどれだけ機能性を担保できるかが非常に重要になります。

1室で打ち合わせ、作業、電話対応までこなす必要があるため、空間を分けるのではなく、「時間」「家具」「配置」でゾーニングする発想が有効です。

たとえば、折りたたみ式のテーブルや可動式ホワイトボードを活用すれば、会議と作業スペースを兼用できます。

また、床材の色分けや照明の明るさ調整で同じ空間でも雰囲気を切り替える仕掛けが可能です。

成長フェーズ:変化対応力と拡張性を意識

資金調達や新規事業の立ち上げを経て、5〜15名程度に拡大したフェーズでは、次の変化を見据えた空間設計が求められます。

ポイントは現時点の使いやすさだけでなく、数ヶ月後の使い方も想像しながら設計することです。

たとえば、席数にはある程度の「遊び」を持たせ、10席ではなく12席分を用意しておく。

間仕切りは取り外し可能なパネル式にしておく。照明やコンセントも増員時に対応できるよう、あらかじめ配線を分散させておく。

これらの工夫は将来の手戻りコストを減らす投資でもあります。

また、採用が加速する段階では、「来客スペース」「面談室」などの外向き要素の整備も意識すべきです。オフィスが“選ばれる企業”の象徴になる時期ともいえます。

20名以上:社内コミュニケーション設計が鍵になる

20人を超えると、もはや「全員が自然と顔を合わせる」空間ではなくなります。

そこで重要になるのが、意図的にコミュニケーションを生み出す“仕掛け”のある空間設計です。

たとえば、コーヒースタンドやフリーアドレスエリアを動線の交差点に配置することで、部署を超えた会話のきっかけが生まれやすくなります。

また、「雑談を促す仕掛け」だけでなく、「集中しやすいスペース」「1on1のしやすい場所」など、多様な“過ごし方”を許容する空間構成も欠かせません。

この段階では、レイアウトだけでなく音環境・空調・光の入り方などの“快適性”も重視されるようになります。

社員数の増加とともに、設備面の質的向上も視野に入れていく必要があるのです。

施工前に押さえておくべき準備と進め方

おしゃれで機能的なオフィスをつくるには、「デザイン」以前の準備と段取りが成功を大きく左右します。

特にベンチャー企業ではリソースも限られているため、迷いのない進行のためにあらかじめ整理しておくべきポイントを押さえておくことが重要です。

目的と課題を明確化し、軸を決める

まず最初にすべきは、「なぜオフィスをつくるのか」「どんな課題を解決したいのか」を明確に言語化することです。

これは、後々のデザインやレイアウトの選定をブレさせない「判断軸」となります。

たとえば…

  • ・採用強化のために印象的な受付をつくりたい
  • ・増員に備えてフレキシブルな席配置にしたい
  • ・社員間のコミュニケーションを活性化させたい

このように目的が明確になれば、優先順位が自ずと定まり、「見た目のおしゃれさに引っ張られて本質を見失う」という失敗を防げます。

内装業者への依頼前に必要な情報整理

設計や施工を業者に依頼する前に、できるだけ社内で以下の情報を整理しておきましょう。

  • ・現在の課題や不満点
  • ・必要な席数や部屋数(会議室、集中ブース等)
  • ・イメージに近い参考事例(他社事例・Pinterest・Instagramなど)
  • ・希望予算・工期・入居時期の目安

このように要件をまとめた「簡易ブリーフ」を用意しておくと、業者との打ち合わせがスムーズに進み、提案内容の精度も上がります。

また、複数社に相談する際にも比較がしやすくなります。

実際に筆者が携わった案件でも、要件を整理していない状態で業者に依頼した結果、工数が二重になり、スケジュールが1ヶ月以上遅延したケースがありました。

最初のひと手間が後の省力化につながるというのは、オフィスづくりでも例外ではありません。

施工・移転スケジュールとコスト感の把握

オフィスづくりには「設計・見積 → 着工 → 引き渡し → 引越し」という一連のプロセスがあるため、余裕を持ったスケジューリングが不可欠です。

一般的には以下のようなタイムラインを想定すると安心です。

フェーズ 期間の目安 補足
要件整理・設計 1〜2ヶ月 業者選定・打ち合わせ含む
施工工事 1〜2ヶ月 工事内容・面積により異なる
引越し・運用準備 1〜2週間 回線工事・什器搬入など

特にベンチャー企業では資金調達・新規採用などと時期が重なることも多いため、社内プロジェクトとして余裕を持った進行体制をつくることが重要です。

また、費用面では「坪単価×面積」でのざっくり見積もりが一般的ですが、機能性・設備グレード・スケルトンかといった要因によって変動が大きくなります。

信頼できる内装業者に早期に概算見積もりを依頼し、予算感の把握からスタートするのがおすすめです。

オフィス移転のタイミングと注意点

ベンチャー企業が成長していく中で、オフィス移転は避けて通れない節目の一つです。

しかし、タイミングや準備を誤ると、移転が業務に支障をきたすこともあります。

適切な移転タイミングの判断基準と、移転時に注意すべきポイントを詳しく解説します。

人数・事業フェーズの変化に応じた判断

オフィスの移転を検討すべきタイミングは、主に次のようなケースです。

オフィスの移転を検討すべきタイミング
  • 新規事業やチーム増設によりレイアウトが合わなくなってきたとき
  • クライアント対応や面接などの来客対応を強化したいとき

たとえば、社員数が20名を超えた段階で会議室や応接スペースの不足により、業務効率や社外対応の質が低下するケースがあります。

このような場合は移転によって課題を解決できる可能性が高くなります。

また、シリーズA・Bなど資金調達後のタイミングで移転する企業も多く、資金的な余裕と成長戦略が連動していることが背景にあります。

コストやスケジュール、法令対応の確認

移転の際には、単に物件選びだけでなく、総合的な計画立案が欠かせません。

まず原状回復費・内装工事費・引越しなど、まとまった費用がかかるため事前に予算をしっかり見積もる必要があります。

さらに、引越し前後の業務への影響を最小限に抑えるため、業務スケジュールとの調整も重要です。

また、レイアウト変更や内装工事を行う場合は、消防法・建築基準法などの法令に適合しているかを必ず確認しなければなりません。

場合によっては管轄の行政との事前協議が必要となることもあります。

コーポレートカラーと空間デザイン

コーポレートカラーは単なる「会社の色」ではなく、企業のブランド価値や印象形成において大きな役割を担います。

オフィス空間にもそのカラーを的確に取り入れることで、視覚的な一貫性とともに、社員や来訪者に強い印象を残す効果が生まれます。

色彩がもたらす心理的影響やデザインへの活用方法について解説します。

色が与える印象と心理的効果

色にはそれぞれ心理的なメッセージがあります。

たとえば、青は信頼感や集中力を高めるとされ、銀行やIT企業のブランドカラーとして多用されています。

赤はエネルギーや情熱を連想させ、黄色は創造性や親しみやすさを感じさせます。

これらの効果を活かして、エントランスや会議室、執務エリアなど用途に応じて色を使い分けることで、空間の機能性と快適性を高めることができます。

ブランドイメージと一貫性を保つ設計

自社のコーポレートカラーやロゴ、スローガンをオフィスに反映させることで、ブランドの一貫性がより強固になります。

たとえば、壁面にビジョンやバリューを記載したグラフィックを設けたり、カーペットやパーテーションの色に自社カラーを取り入れることで、「会社らしさ」を空間全体で表現できます。

こうした設計は、来客や採用候補者に対しても、企業としての姿勢や価値観を直感的に伝える手段となり得ます。

オフィスコンセプトの作り方

ベンチャー企業におけるオフィスデザインは、単なる「間取り設計」にとどまらず、企業理念やビジネスモデルを空間で可視化する重要な取り組みです。

ここでは、オフィスコンセプトをどのように作り、デザインへと反映させるかについて解説します。

事業内容やミッションとの整合性

まず最初に考えるべきは、自社の事業内容とミッションです。

たとえば、クリエイティブ業務が中心のスタートアップであれば、アイデアが生まれやすい開放的な空間やホワイトボードの多用が有効です。

一方、開発・研究部門が多い企業では集中できる静かなブースや実験室を設ける必要があるでしょう。

このように、業務フローと空間機能の整合性を取りながら、「働き方」と「会社の目指す姿」が調和するレイアウトが求められます。

将来の成長や変化も見越した設計

ベンチャー企業は、従業員数や事業内容の変化が短期間で起こるケースが多いため、オフィスデザインにも柔軟性が不可欠です。

将来的に拡張しやすい区画割りや、用途を変更できるフレキシブルな家具・仕切りの導入が推奨されます。

たとえば、最初は会議室として使っていたスペースを後に作業ルームへと変えられるよう、配線や照明の位置を工夫しておくことで、工事なしでも用途変更が可能になります。

よくある質問

フリーアドレスと固定席はどちらがいいか

社員の働き方と組織の成熟度によって最適解は異なります。

フリーアドレスはスペース効率がよく、柔軟性が高い反面、チーム間の一体感が薄れたり、居場所が分かりにくいという課題もあります。

リモートワークや出社日がバラバラな企業には有効ですが、毎日全員が出社する環境では固定席のほうがストレスが少ないケースもあります。

一方、固定席は「落ち着き」「集中力」「チーム連携」を重視したいフェーズに向いています。

ベンチャーでは「部署別に選択制で導入」や「フリーアドレス+個人ロッカー」のようなハイブリッド型が現実的な選択肢**となることが多いです。

おしゃれにしたいが費用を抑える方法はあるか

素材・照明・家具選びで十分な演出が可能です。

たとえば、壁紙や床材をコンクリート調・木目調に変えるだけでも、空間の印象は大きく変わります。

既製品の安価な什器でも、色や高さ、素材感を揃えるだけで統一感が出て「おしゃれな空間」に見えます。

また、観葉植物やアートポスターなど“動かせる装飾”は後からでも追加できるため、初期費用を抑えるには有効です。

照明についても、蛍光灯をダウンライトやスポットライトに変えるだけで“店舗感”が生まれるため、演出効果が高いポイントです。

社員が働きやすいオフィスづくりのポイントは?

集中とコミュニケーションのバランスが取れた空間構成がカギです。

どこでも仕事ができる時代だからこそ、オフィスには「出社する意味」を感じられる設計が必要です。

たとえば、“黙々と作業できる静かな席”と“自然と雑談が生まれるカフェ風エリア”を併設することで、目的に応じた使い分けがしやすくなります。

遊び心を取り入れる際の注意点は?

“機能性を損なわない範囲で”が鉄則です。

たとえば、打ち合わせ室にユニークな名前をつける、壁に社員の写真やメッセージを飾るなどは、費用をかけずに企業らしさを演出できる手法です。

ただし、働く側が「ネタ」として消化しきれない演出は逆効果になる可能性もあるため、社員との相性を見極めることが大切です。

居抜き物件とスケルトン、どちらを選ぶべきか?

初期費用を抑えたいなら居抜き物件、自由な設計をしたいならスケルトン。

居抜き物件は内装や設備が残っているため、費用も工期も圧倒的に少なく済むのがメリットです。

物件の仕様が自社のニーズに合っているなら、スタートアップ期には非常に合理的な選択です。

一方、スケルトン物件はゼロから空間を作れるため、ブランディングやレイアウトの自由度が高く、“企業らしさ”を打ち出したい場合に向いています。

コストと自由度のバランスを見ながら、物件探しの段階で比較検討しておくと安心です。

まとめ

ベンチャー企業のオフィスづくりは単なる「作業場所の確保」ではなく、企業文化の発信・採用ブランディング・働きやすさの向上といった多くの要素が重なり合った“経営的投資”です。

本記事で紹介してきたように、オフィス設計においては次のような視点が不可欠です。

オフィス設計で重要なポイント
  • ・フェーズに合った空間の柔軟性(変化への適応力)
  • ・企業らしさを空間で表現する工夫(ブランドの可視化)
  • ・機能性とデザイン性のバランス(社員の定着と生産性)

費用やスケジュールの現実的なマネジメント

最初から完璧なオフィスを目指す必要はありません。

“今の自社にちょうどいい選択”を見つけることが何よりも大切です。

まずは、「自社の課題は何か」「どのフェーズにいて、何を優先したいか」を社内で共有することから始めてみてください。

方向性が定まれば、具体的なレイアウトや内装の選定はずっとラクになります。

ReAirではオフィス設計と施工工事について専門スタッフが、目的整理から実行支援までワンストップでお手伝いいたします。

豊富な施工実績を活かし、初めてのご相談からプランニング、施工まで一貫してサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。


参考文献

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